高いお金と引き換えに家族から売られた私ですが、どうやら最終的には過去一の幸せが待っているようです。

加集 奈都

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第1章

頑張るアイヴィ。

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 「アイヴィ様、ノートのとり方が非常に雑です。そのようなとり方では、一生覚えられませんよ。それに、公爵家のご令嬢とは思えない、字の汚さですね。字は己を表します。今の貴方は、この汚い字と同然…ということになりますが、宜しいですか?」


誰もいないことをいいことに、思い切り私を見下すバーサ先生。


ヒューゴには、これでもかというぐらいごまをすっていたにもかかわらず、私にはさっきから一貫してこんな態度だ。


私のことが気に食わないということは分かったけれど、子供相手にここまで態度を変えるだなんて、随分と大人気ない人間だと思う。


 「ヒューゴ様の字はとても美しいですよ。貴方とはまるで、天と地の差です。他のご令嬢でも、もっと綺麗に書けます。貴方の字はまるで、蛇のようで気持ちが悪いですね。」


私は、まじまじとノートに書かれた自分の字を見る。


確かに、バーサ先生の言う通り、へにょへにょとしていて蛇のような字だ。お世辞にも、綺麗だとは言えない。けれど、こればかりは仕方のないことだと思う。私は、あまり字を書いてこなかったから。


読み書き自体は、割と早い段階で出来ていたと思う。お母様が平民の子だからと馬鹿にされないように早くに勉強をしておこうと、教えてくれたから。


結局、平民がどうのというよりかは、字の汚さで馬鹿にされているけれど。


なんだか、お母様の愛情を無碍にしてしまった気がしてならない。…頑張って練習しよう。字。


 バーサ先生から、字やノートのとり方を馬鹿にされながらも、なんとか終えた1回目の授業。


字を書くなんて慣れないことをしたからか、少し疲れた。


 その日の夕食、公爵様からバーサ先生との勉強はどうだったかと聞かれた。


なんて答えるのが正解なのだろうかと3秒程悩み、『楽しかったです』とありきたりな答えを返した。公爵様は、『そうか、それは良かった』なんて笑っていたけれど、実のところ、全く楽しいだなんて感情は持っていなかった。


散々馬鹿にされたことに加え、授業のスピードは早いし、言っている内容はさっぱりだし。ヒューゴは、バーサ先生の授業は分かりやすいと言っていたけれど、いったいあれのどこが分かりやすいというのか。


 夕食を終え、部屋に戻った私は、ばたりとベッドの上に倒れ込んだ。はぁ~…と、大きな息を吐いた私に、スザンナが心配そうな表情を浮かべる。


このまま眠ってしまいたいけれど、まだ湯浴みが残っているし、字を書く練習もしなければならない。ああ、あと今日の授業の復習もしなければ。


次の授業の初めに、きちんと理解が出来ているかの確認テストをやるらしい。それで低い点を取ろうものなら、やれヒューゴはああだとか、やれ他の令嬢ならこうだとか、散々他と比べるようなことをまた言われるのだろう。


そんなことで一々傷つく私ではないけれど、言われて面倒なことには変わりない。


全問正解とまではいかなくとも、せめてそれなりの点数を取らなければ。







 
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