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2週間後の定期テスト
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清川 小町。
血液型はA型。
誕生日は7月6日。
好きなものはシュークリーム。
交流会で会話をしたのは彼女のみだった。
俺は教室で誰ともしゃべらず一人で勉強している。
なぜ一人かって?愚問だな。
一人がラクだからだ。
「と呟いているところ申し訳ないけれど、貴方、全くラクそうには見えないわ」
「割り込んでくるな、イメージが変わってしまう」
「悪いわねそういう性分なの」
「タチわりぃ・・・・」
というのは嘘で、かっこよくセリフを言ってみたかっただけなのだが、見ての通り俺は清川といる。正直邪魔なのだが、省く訳にもいかなかった。
何せ清川とは仲睦まじい関係を築き上げ、アンナコトやソンナコトをしてもらったのも嘘である。
彼女との関係はまだ知り合いレベルである。
しかし、清川の美少女っぷりには俺でも惚れそうになる。
それは認める・・・・が、
「それにしても大久川君って影が薄すぎるから、もうクラス内では空気扱いになりそうよ」
とまぁ毒舌を吐く残念美少女である訳で。
この顔なのにこの性格である。
本当に残念な奴。
こんなのと付き合ってしまったら、他の奴らの精神がズタボロにされるだろう。
犠牲が必要な社会だここは文句を言わずに我慢しなければならない。
「そう、俺は楽しみにしているのだ。清川サマに罵倒される快感。
あぁ、なんて心地いいんだ!」
「んなこと思ってねぇよ!」
「え?」
「え?じゃねぇぇぇぇ!!!
おい、やめろ。その惚けた顔やめろ!!!
全然可愛くねぇから!!!」
というどうでもいい会話をして、教室で騒いでいる俺。
自習時間返せよ。
俺は清川に押し付けたりせず、彼女との雑談を「まぁどうせ帰ってはくれないだろう」と思いながら終えようとする。
「用がないならさっさと帰れ」
「分かったわ」
すると、清川は俺の話を以外にも素直に聞いて、さっさと帰っていた。
案外素直に話を聞く奴らしい。
これでやっと自習ができると思い、俺は勉強に取り掛かろうとする。
《キーンコーン、カーンコーン━━━》
と次の瞬間チャイムが鳴る。
「・・・・・」
俺は沈黙する。
清川を見ると腹を抱えながらプルプルと震えている。
・・・・自習時間返せよ。
「アハハハハハハハハ!!!」
自習時間返せぇぇぇぇぇ!!!
俺は心の中で悲痛な声を叫ぶ。
放課後、授業が終わり皆が帰宅していく。
友達と一緒に帰っているようでとても楽しそうだ。
羨ましいと一片も思っていない。
俺は教室で一人勉強だ。
勉強=俺である。
しかし実は、教室での勉強は昼休みぐらいだったので、初めての放課後勉強なのだ。
受験期には自習室でよく勉強していたのだが、この高校には自習室はなかった。
なので仕方がなく、俺は教室で勉強している。
教室に一人ぽつんといる俺は黙々と勉強している。
教室は声一つもなく静寂で、授業中も賑やかだったあの騒ぎが嘘のように思ってしまう。
騒がしいのは嫌いなのでこのままでいい。
だが、静かな時間が長く続くと少しだけ寂しくなるのは否定できない。
「そういえば、今まで友達と話すなんて一度もなかったよな」
小中と苛めを受け続けた俺はまともな会話の一つもしたことがない。
冗談、慰め、愚痴、何も話すことが出来なかった。
それはどの学年でも同じだ。
気が弱い俺はひたすら苛めを受けることしか出来なかった。
そして、高校に入学して苛めはなくなったが、結局友達と会話なんて出来なかった。
と思ったが清川小町は声を掛けてくれた。
それにどんな意味があって、どんな理由があったのかは知らない。
それに生意気で、毒舌で、残念な美少女でもう話しかけなくていいと思ってしまうぐらいウザかった。
しかし唯一話しかけてくれた。
正直・・・
「楽しかったの?」
「え?」
後ろを振り向くと俺を見てニヤニヤと笑っている清川が椅子に座っていた。
「イヤァァァァァァ!!でっ、出たぁぁぁぁぁ!!!!」
突然登場した張本人を見た俺は、一目散に逃げるように退避する。
「ちょっとそんなに驚かないでよ」
「なっなんでいるんだよ!!」
「先生に分からないところ質問してたのよ」
彼女は淡々と答えた。
「清川が先生に質問するんだな・・・」
「何で驚いているのよ・・・」
清川って、誰にも質問しない秀才タイプと思ってた・・・。
「いや、ゴメンお前がいるとは思わなかった」
「大久川くんらしいわね」
と彼女は答える。
まだ初日なのに俺のことをよく知っているような言い草だ。
本当に清川は俺のこと分かっているのだろうか?
「そういえば、今度テストがあるわよね?
大久川君って成績が良い方なのかしら?」
「いや・・・そんな良い方じゃない」
「やっぱり大久川君ね」
「ハァ!?どういう事だよ!?」
「『大きな川を永久に渡れない努力家』と書いて大久川君でしょ?」
「俺の名前ってそんな意味が込められてんの!?愛情を全く感じない!!あとそれだと大久川じゃなくて大川久になるから!!」
「確かに、でも本当にそうじゃない。
それと名前の方に関してはノーコメントで」
「それは言うな!!
あと名前の方も何か言えよ!!」
清川はボケて、俺は勢いよくツッコミをする。
将来は二人でNー1GPにでも出ようかな。
「嫌よ、貴方と同じ道なんか行きたくないし、一緒にしないでくれない?」
「うっ、少し傷ついたかも」
さすが毒舌残念美少女。
毒舌残念があるのに美少女という単語だけでこの破壊力。トンデモないな。
「そう、よかったわね」
「そしてスルー!?」
もうひどい扱いだな俺。
普通美少女と話すときは「キャキャ、ウフフ」とかある筈なんだが。
清川 小町こいつがそれを壊しやがった。
「で、大久川君は何でいるのよ?」
「俺は勉強だよ。家だと親が煩いからな。」
「ふーん、そうなの」
清川は質問したのにまるで興味もなさそうな顔をした。
「というか、勉強しても成績が良くないって、大久川君ってあれよね」
「やっ、やめろそれ以上は」
「もうバカを越えてるかもしれないわね?
すごいわおめでとう。そして哀れね」
と言ってニコっと微笑む清川。
「これでも悩んでるんだ、そんなこと言うなよ。」
「へぇ~、でも何も解決してないわよね?」
「・・・・」
悪口しか言えないのかコイツ。
俺は清川の毒舌を聞いて、最早返答する気も失せる。
清川と関わると、精神が危険になってきたので、ひとまず勉強に励むことにした。
「・・・・」
「大久川君、黙ってないで何か話なさいよ?」
「・・・・」
「大久川君、暇なのだけど?」
だが、思った通り清川は話しかけてきた。
というか、さっさと帰って欲しい。
俺は取り敢えず理由を聞くことにした。
「何で暇なの?」
「暇だからよ」
答えにはなっていない。
こいつさ馬鹿なの?
返答の仕方としては10点中0点。
残念不合格だ。
「大久川君?」
どこまで鬱陶しいんだよコイツ。
「もうネタは尽きたから暗くなる前に帰れ」
「嫌よ、つまらない」
「いい加減にしろよ・・・」
俺は勉強してた筈なのになぁー。
「さっさと帰れ!」
「そんなこと言って、引き下がるとでも思ってるのかしら?少しは頭を使いなさいよ?」
「それ勉強の邪魔をする奴の台詞なのか!?」
「ええ、私を楽しませないなんて言語道断よ」
「お前がやってること自体言語道断だよ!!」
全く本当に疲れる奴だ。
こんなペラペラ喋られると今までの方がマシだと思ってしまう。
これはさっきの台詞前言撤回か。
《正直・・・・「楽しかった?」》
あ、これ俺が言った訳じゃないのか。
「大久川君、勉強するよりも私と話をした方が数倍楽しいわよ?私可愛いから」
「はーい、そうですねー」
「溺死したい?それとも首吊り?」
「どっちも嫌だね」
それを聞いた清川は笑顔でこう答えた
「じゃあ両方ってことで?」
「えっ、ちょっイヤぁぁぁぁぁ!!!」
さて今どこにいるか分かるか?
天国?違う俺はまだ死んでいない。
答えは清川と歩道を歩いている。
ほんとしつこい奴だよなアレ。
俺のこと好きなのか?
でもアレが惚れるなんてあり得ないか。
『変な勘違いしないでよ、キモい』
とか絶対言いそう。
「お前何処まで付くつもりなの?」
「貴方となら何処までも付き合うわよ」
「・・・男なら言われて嬉しい筈なのに、お前が言うと暴言を吐く為に付いていくストーカーだ」
「ストーカーされて嬉しいだなんて、貴方変わってるわ」
「ゴメン、もう疲れてツッコメナイ」
このやり取りさぁ誰か変わってよ。
一年間もコイツがまとわりついていたら体が持たない。
「大久川君、ファイトォォ!!オー!!」
「全然嬉しくありませーん」
「大久川君、死ねぇぇ!!そして消えろぉぉ!!」
「清川、お前がなぁぁぁ!!!」
これが一年も続くのかー。
アタマがあぁぁぁぁ。
「それで大久川君、一つ質問してもいいかしら?」
その時突然清川が真剣な表情でこんな質問を投げ掛ける。
「貴方にとって勉強ってどんなものなの?」
「・・・どんなもの?」
「勉強をすると多くの利益を得る」とかだろ。
でも多くの利益ってなんだ?
ありすぎてまとめられない。
「・・・教養を身に付けるためのもの」
俺はひとまず適当に答えることにする。
「へぇ、じゃあ教養を身に付けるのが好きで勉強しているのね」
「ああ」
「それで勉強が嫌いになったりしないのかしら?」
「?」
何を言っているんだコイツ。
「清川は勉強が嫌いなのか?」
「そんなことは聞いてないわ、答えて」
確かに勉強が嫌いな人もいるが少なくとも俺は一度も嫌いになったことがない。
好きで面白くて楽しい。それが俺の勉強だ。
「・・・・」
「じゃあ質問を変えるわ、貴方は本当にやりたいと思っているの?」
「え?」
清川小町、一体何が言いたいんだ。
俺は驚いた表情をする。
「つまりね、貴方は今までずっと勉強と向き合ってきたのに、成績は下降して今じゃ中の下じゃない。大久川君は努力してるのに本当に可哀想な人よね」
「・・・・」
「なのに大久川君って誰にも相談せずに自分で抱え込んでる、それってまるで勉強を我慢してやってるように見えるのよ」
・・・そういうことか。
確かに俺は今まで友達、先生や両親も相談が出来るような仲でもなかった。だから清川の言い方はあれだが、まぁ大方そんな感じだ。
でも・・
「清川、お前に一つ質問をしたいんだが」
「何かしら?」
「どうしてお前がそれを知っている?」
まだ初日でテストがあったわけでもない。
それなのに、清川の顔はまるで全てを知っているような予言者。
「お前何者なんだ?」
俺は疑いの目を差して言った。
「・・・・さぁね、私も知らないわ」
しかし、清川は何も知らないと惚けた。
「まぁ、そんなことはどうでもいいのよ。
ここからが本題なのだけど、最初の定期テストが二週間後にあるじゃない?」
「あぁ」
東国立高等学校では授業の進行がとても速いので、学期ごとの定期テストは2週間後に行われる。それは俺も知っていることだ。
「あぁ」
「だから大久川君宣告しておくわ、
貴方は今やってるのは時間を無駄にしている塵みたいな勉強。
2週間後のテストはおそらく学年内で最下位よ?」
「!?」
清川はいつも通りの冷静で小馬鹿にしたような口調で言った。
「だからね、大久川君最下位にならないような勉強を知りたいと思わないかしら?」
とそんなことを言い始めた清川。
しかしその言葉は俺の耳には聞こえなかった。
「お前何言ってんのかさっぱり解らねえけど、これだけははっきりしてる。俺の今までの十五年間の勉強を清川、お前が侮辱してんのか?」
「そうよ、それ以外何があるって言うの?」
清川は表情を変えず答える。
「そうかそうか、俺の勉強を侮辱してんのか。
へえー、何も知らないお前が知ったかぶって、人にそこまで言うんだな」
コイツは生意気な糞野郎だとは分かってたたけど、まさかここまでとは。
本当に・・・・
瞬間俺は歩道を立ち止まって、怒り押さえられずに切れた。
「マジでムカつくなぁーオマエ!!!」
その声は教室中に響く。
俺の周りは険悪なムードか漂う。
清川の表情は何も変わらない。
「あら、お怒りになってしまったようね?」
清川はヘラヘラしながら言った。
「うるせぇよ!!テメェ人を能無しバカみたいに言いやがって!!!
お前に何が分かるって言うんだよ!!!
少し可愛いからって調子乗るな!!!」
「あら、かわいいなんていい誉め言葉を言うじゃない」
「・・・・その態度がムカつくんだよ。
テメぇのそのヘラヘラした感じ。
いい加減止めろよ。」
「やめないわ、だって最高に心地がいいんですもの」
清川は清々しい表情で言った。
さっきから楽しんでるように見える。
まさか、こいつワザとやってんのか。
「ほら、黙ってないで何か言いなさい?」
コイツ絶対そうだ、まだヘラヘラしてやがる。
クソ、俺としたことが。
俺は意図に気づき冷静になると、
「ぶっ飛ばされないと分からないようだな」
と言った。
「じゃあどうするのよ?私の綺麗な顔を殴る?」
「そんな猿みたいな真似しねぇよ」
清川は殴ると期待していたようでその答えを聞いて、つまらなさそうな表情をする。
「ならどうするのよ?」
清川、それは愚問だ。
ここは名門校だ、決着をつける方法は一つ。
「決まってるだろ、その2週間後のテストで白黒ハッキリつけようぜ」
清川は一旦考えると、
「分かった、そんなことでいいなら受けて立つわ」
と清川はコクんと頷いて言った。
「よし、じゃあ二週間後楽しみにしてるぜ。
精々がんばれよ?」
俺は挑発して言った後、颯爽と走り、歩道を駆け退ける。
二週間後のテスト、二人の誇りを賭けた勝負。
それがどんな結果であれ、受け止めなければならない。
赤点回避では絶対ダメだ。
清川に勝つために学年トップを狙う。
俺はそう誓って走り続けた。
「ホントこっちのみになって欲しいわ、あんな恥ずかしい台詞よく言えるわね」
清川は大久川の台詞を思い出し、顔を赤らめる。
「それに最後のシーンなんて全然カッコ良くなかったし、大久川君あれで格好つけたつもりなのかしら?」
清川は呆れた表情になり、疲れきっていた。
大久川がいない今も言いたい放題に言っている。
「でも、あれは少し言い過ぎたかしら・・・」
ただ、一つだけ悔いを残して。
血液型はA型。
誕生日は7月6日。
好きなものはシュークリーム。
交流会で会話をしたのは彼女のみだった。
俺は教室で誰ともしゃべらず一人で勉強している。
なぜ一人かって?愚問だな。
一人がラクだからだ。
「と呟いているところ申し訳ないけれど、貴方、全くラクそうには見えないわ」
「割り込んでくるな、イメージが変わってしまう」
「悪いわねそういう性分なの」
「タチわりぃ・・・・」
というのは嘘で、かっこよくセリフを言ってみたかっただけなのだが、見ての通り俺は清川といる。正直邪魔なのだが、省く訳にもいかなかった。
何せ清川とは仲睦まじい関係を築き上げ、アンナコトやソンナコトをしてもらったのも嘘である。
彼女との関係はまだ知り合いレベルである。
しかし、清川の美少女っぷりには俺でも惚れそうになる。
それは認める・・・・が、
「それにしても大久川君って影が薄すぎるから、もうクラス内では空気扱いになりそうよ」
とまぁ毒舌を吐く残念美少女である訳で。
この顔なのにこの性格である。
本当に残念な奴。
こんなのと付き合ってしまったら、他の奴らの精神がズタボロにされるだろう。
犠牲が必要な社会だここは文句を言わずに我慢しなければならない。
「そう、俺は楽しみにしているのだ。清川サマに罵倒される快感。
あぁ、なんて心地いいんだ!」
「んなこと思ってねぇよ!」
「え?」
「え?じゃねぇぇぇぇ!!!
おい、やめろ。その惚けた顔やめろ!!!
全然可愛くねぇから!!!」
というどうでもいい会話をして、教室で騒いでいる俺。
自習時間返せよ。
俺は清川に押し付けたりせず、彼女との雑談を「まぁどうせ帰ってはくれないだろう」と思いながら終えようとする。
「用がないならさっさと帰れ」
「分かったわ」
すると、清川は俺の話を以外にも素直に聞いて、さっさと帰っていた。
案外素直に話を聞く奴らしい。
これでやっと自習ができると思い、俺は勉強に取り掛かろうとする。
《キーンコーン、カーンコーン━━━》
と次の瞬間チャイムが鳴る。
「・・・・・」
俺は沈黙する。
清川を見ると腹を抱えながらプルプルと震えている。
・・・・自習時間返せよ。
「アハハハハハハハハ!!!」
自習時間返せぇぇぇぇぇ!!!
俺は心の中で悲痛な声を叫ぶ。
放課後、授業が終わり皆が帰宅していく。
友達と一緒に帰っているようでとても楽しそうだ。
羨ましいと一片も思っていない。
俺は教室で一人勉強だ。
勉強=俺である。
しかし実は、教室での勉強は昼休みぐらいだったので、初めての放課後勉強なのだ。
受験期には自習室でよく勉強していたのだが、この高校には自習室はなかった。
なので仕方がなく、俺は教室で勉強している。
教室に一人ぽつんといる俺は黙々と勉強している。
教室は声一つもなく静寂で、授業中も賑やかだったあの騒ぎが嘘のように思ってしまう。
騒がしいのは嫌いなのでこのままでいい。
だが、静かな時間が長く続くと少しだけ寂しくなるのは否定できない。
「そういえば、今まで友達と話すなんて一度もなかったよな」
小中と苛めを受け続けた俺はまともな会話の一つもしたことがない。
冗談、慰め、愚痴、何も話すことが出来なかった。
それはどの学年でも同じだ。
気が弱い俺はひたすら苛めを受けることしか出来なかった。
そして、高校に入学して苛めはなくなったが、結局友達と会話なんて出来なかった。
と思ったが清川小町は声を掛けてくれた。
それにどんな意味があって、どんな理由があったのかは知らない。
それに生意気で、毒舌で、残念な美少女でもう話しかけなくていいと思ってしまうぐらいウザかった。
しかし唯一話しかけてくれた。
正直・・・
「楽しかったの?」
「え?」
後ろを振り向くと俺を見てニヤニヤと笑っている清川が椅子に座っていた。
「イヤァァァァァァ!!でっ、出たぁぁぁぁぁ!!!!」
突然登場した張本人を見た俺は、一目散に逃げるように退避する。
「ちょっとそんなに驚かないでよ」
「なっなんでいるんだよ!!」
「先生に分からないところ質問してたのよ」
彼女は淡々と答えた。
「清川が先生に質問するんだな・・・」
「何で驚いているのよ・・・」
清川って、誰にも質問しない秀才タイプと思ってた・・・。
「いや、ゴメンお前がいるとは思わなかった」
「大久川くんらしいわね」
と彼女は答える。
まだ初日なのに俺のことをよく知っているような言い草だ。
本当に清川は俺のこと分かっているのだろうか?
「そういえば、今度テストがあるわよね?
大久川君って成績が良い方なのかしら?」
「いや・・・そんな良い方じゃない」
「やっぱり大久川君ね」
「ハァ!?どういう事だよ!?」
「『大きな川を永久に渡れない努力家』と書いて大久川君でしょ?」
「俺の名前ってそんな意味が込められてんの!?愛情を全く感じない!!あとそれだと大久川じゃなくて大川久になるから!!」
「確かに、でも本当にそうじゃない。
それと名前の方に関してはノーコメントで」
「それは言うな!!
あと名前の方も何か言えよ!!」
清川はボケて、俺は勢いよくツッコミをする。
将来は二人でNー1GPにでも出ようかな。
「嫌よ、貴方と同じ道なんか行きたくないし、一緒にしないでくれない?」
「うっ、少し傷ついたかも」
さすが毒舌残念美少女。
毒舌残念があるのに美少女という単語だけでこの破壊力。トンデモないな。
「そう、よかったわね」
「そしてスルー!?」
もうひどい扱いだな俺。
普通美少女と話すときは「キャキャ、ウフフ」とかある筈なんだが。
清川 小町こいつがそれを壊しやがった。
「で、大久川君は何でいるのよ?」
「俺は勉強だよ。家だと親が煩いからな。」
「ふーん、そうなの」
清川は質問したのにまるで興味もなさそうな顔をした。
「というか、勉強しても成績が良くないって、大久川君ってあれよね」
「やっ、やめろそれ以上は」
「もうバカを越えてるかもしれないわね?
すごいわおめでとう。そして哀れね」
と言ってニコっと微笑む清川。
「これでも悩んでるんだ、そんなこと言うなよ。」
「へぇ~、でも何も解決してないわよね?」
「・・・・」
悪口しか言えないのかコイツ。
俺は清川の毒舌を聞いて、最早返答する気も失せる。
清川と関わると、精神が危険になってきたので、ひとまず勉強に励むことにした。
「・・・・」
「大久川君、黙ってないで何か話なさいよ?」
「・・・・」
「大久川君、暇なのだけど?」
だが、思った通り清川は話しかけてきた。
というか、さっさと帰って欲しい。
俺は取り敢えず理由を聞くことにした。
「何で暇なの?」
「暇だからよ」
答えにはなっていない。
こいつさ馬鹿なの?
返答の仕方としては10点中0点。
残念不合格だ。
「大久川君?」
どこまで鬱陶しいんだよコイツ。
「もうネタは尽きたから暗くなる前に帰れ」
「嫌よ、つまらない」
「いい加減にしろよ・・・」
俺は勉強してた筈なのになぁー。
「さっさと帰れ!」
「そんなこと言って、引き下がるとでも思ってるのかしら?少しは頭を使いなさいよ?」
「それ勉強の邪魔をする奴の台詞なのか!?」
「ええ、私を楽しませないなんて言語道断よ」
「お前がやってること自体言語道断だよ!!」
全く本当に疲れる奴だ。
こんなペラペラ喋られると今までの方がマシだと思ってしまう。
これはさっきの台詞前言撤回か。
《正直・・・・「楽しかった?」》
あ、これ俺が言った訳じゃないのか。
「大久川君、勉強するよりも私と話をした方が数倍楽しいわよ?私可愛いから」
「はーい、そうですねー」
「溺死したい?それとも首吊り?」
「どっちも嫌だね」
それを聞いた清川は笑顔でこう答えた
「じゃあ両方ってことで?」
「えっ、ちょっイヤぁぁぁぁぁ!!!」
さて今どこにいるか分かるか?
天国?違う俺はまだ死んでいない。
答えは清川と歩道を歩いている。
ほんとしつこい奴だよなアレ。
俺のこと好きなのか?
でもアレが惚れるなんてあり得ないか。
『変な勘違いしないでよ、キモい』
とか絶対言いそう。
「お前何処まで付くつもりなの?」
「貴方となら何処までも付き合うわよ」
「・・・男なら言われて嬉しい筈なのに、お前が言うと暴言を吐く為に付いていくストーカーだ」
「ストーカーされて嬉しいだなんて、貴方変わってるわ」
「ゴメン、もう疲れてツッコメナイ」
このやり取りさぁ誰か変わってよ。
一年間もコイツがまとわりついていたら体が持たない。
「大久川君、ファイトォォ!!オー!!」
「全然嬉しくありませーん」
「大久川君、死ねぇぇ!!そして消えろぉぉ!!」
「清川、お前がなぁぁぁ!!!」
これが一年も続くのかー。
アタマがあぁぁぁぁ。
「それで大久川君、一つ質問してもいいかしら?」
その時突然清川が真剣な表情でこんな質問を投げ掛ける。
「貴方にとって勉強ってどんなものなの?」
「・・・どんなもの?」
「勉強をすると多くの利益を得る」とかだろ。
でも多くの利益ってなんだ?
ありすぎてまとめられない。
「・・・教養を身に付けるためのもの」
俺はひとまず適当に答えることにする。
「へぇ、じゃあ教養を身に付けるのが好きで勉強しているのね」
「ああ」
「それで勉強が嫌いになったりしないのかしら?」
「?」
何を言っているんだコイツ。
「清川は勉強が嫌いなのか?」
「そんなことは聞いてないわ、答えて」
確かに勉強が嫌いな人もいるが少なくとも俺は一度も嫌いになったことがない。
好きで面白くて楽しい。それが俺の勉強だ。
「・・・・」
「じゃあ質問を変えるわ、貴方は本当にやりたいと思っているの?」
「え?」
清川小町、一体何が言いたいんだ。
俺は驚いた表情をする。
「つまりね、貴方は今までずっと勉強と向き合ってきたのに、成績は下降して今じゃ中の下じゃない。大久川君は努力してるのに本当に可哀想な人よね」
「・・・・」
「なのに大久川君って誰にも相談せずに自分で抱え込んでる、それってまるで勉強を我慢してやってるように見えるのよ」
・・・そういうことか。
確かに俺は今まで友達、先生や両親も相談が出来るような仲でもなかった。だから清川の言い方はあれだが、まぁ大方そんな感じだ。
でも・・
「清川、お前に一つ質問をしたいんだが」
「何かしら?」
「どうしてお前がそれを知っている?」
まだ初日でテストがあったわけでもない。
それなのに、清川の顔はまるで全てを知っているような予言者。
「お前何者なんだ?」
俺は疑いの目を差して言った。
「・・・・さぁね、私も知らないわ」
しかし、清川は何も知らないと惚けた。
「まぁ、そんなことはどうでもいいのよ。
ここからが本題なのだけど、最初の定期テストが二週間後にあるじゃない?」
「あぁ」
東国立高等学校では授業の進行がとても速いので、学期ごとの定期テストは2週間後に行われる。それは俺も知っていることだ。
「あぁ」
「だから大久川君宣告しておくわ、
貴方は今やってるのは時間を無駄にしている塵みたいな勉強。
2週間後のテストはおそらく学年内で最下位よ?」
「!?」
清川はいつも通りの冷静で小馬鹿にしたような口調で言った。
「だからね、大久川君最下位にならないような勉強を知りたいと思わないかしら?」
とそんなことを言い始めた清川。
しかしその言葉は俺の耳には聞こえなかった。
「お前何言ってんのかさっぱり解らねえけど、これだけははっきりしてる。俺の今までの十五年間の勉強を清川、お前が侮辱してんのか?」
「そうよ、それ以外何があるって言うの?」
清川は表情を変えず答える。
「そうかそうか、俺の勉強を侮辱してんのか。
へえー、何も知らないお前が知ったかぶって、人にそこまで言うんだな」
コイツは生意気な糞野郎だとは分かってたたけど、まさかここまでとは。
本当に・・・・
瞬間俺は歩道を立ち止まって、怒り押さえられずに切れた。
「マジでムカつくなぁーオマエ!!!」
その声は教室中に響く。
俺の周りは険悪なムードか漂う。
清川の表情は何も変わらない。
「あら、お怒りになってしまったようね?」
清川はヘラヘラしながら言った。
「うるせぇよ!!テメェ人を能無しバカみたいに言いやがって!!!
お前に何が分かるって言うんだよ!!!
少し可愛いからって調子乗るな!!!」
「あら、かわいいなんていい誉め言葉を言うじゃない」
「・・・・その態度がムカつくんだよ。
テメぇのそのヘラヘラした感じ。
いい加減止めろよ。」
「やめないわ、だって最高に心地がいいんですもの」
清川は清々しい表情で言った。
さっきから楽しんでるように見える。
まさか、こいつワザとやってんのか。
「ほら、黙ってないで何か言いなさい?」
コイツ絶対そうだ、まだヘラヘラしてやがる。
クソ、俺としたことが。
俺は意図に気づき冷静になると、
「ぶっ飛ばされないと分からないようだな」
と言った。
「じゃあどうするのよ?私の綺麗な顔を殴る?」
「そんな猿みたいな真似しねぇよ」
清川は殴ると期待していたようでその答えを聞いて、つまらなさそうな表情をする。
「ならどうするのよ?」
清川、それは愚問だ。
ここは名門校だ、決着をつける方法は一つ。
「決まってるだろ、その2週間後のテストで白黒ハッキリつけようぜ」
清川は一旦考えると、
「分かった、そんなことでいいなら受けて立つわ」
と清川はコクんと頷いて言った。
「よし、じゃあ二週間後楽しみにしてるぜ。
精々がんばれよ?」
俺は挑発して言った後、颯爽と走り、歩道を駆け退ける。
二週間後のテスト、二人の誇りを賭けた勝負。
それがどんな結果であれ、受け止めなければならない。
赤点回避では絶対ダメだ。
清川に勝つために学年トップを狙う。
俺はそう誓って走り続けた。
「ホントこっちのみになって欲しいわ、あんな恥ずかしい台詞よく言えるわね」
清川は大久川の台詞を思い出し、顔を赤らめる。
「それに最後のシーンなんて全然カッコ良くなかったし、大久川君あれで格好つけたつもりなのかしら?」
清川は呆れた表情になり、疲れきっていた。
大久川がいない今も言いたい放題に言っている。
「でも、あれは少し言い過ぎたかしら・・・」
ただ、一つだけ悔いを残して。
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