大阪人の俺と異世界人の美少女が組んだら最強。-レクイエム-

ただの女子高生

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勇者の国 編

帰るまでが仕事です!!

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前回のおさらい☆
六罪シンズ』のを名乗る、盗賊騒ぎの犯人と闘い、なんとか勝利しレオとリアン。
王城に戻ろうと羅針盤を見ると、闘いが原因でバッキバキになって使い物にならない!
一体どうなっちゃうの~!?


❁


2人はあたふたと動き回る。

「ほんまごめん!どうしよ!!」
「テキトーに進むしかない!!!」
「嘘やろ!?」

リアンは「こっちだーーー!!」と進み始める。
嫌な予感はしたものの、はぐれる方が恐ろしいので、レオは慌てて後を追った。

彼はまだ、迷いの森の恐ろしさを知らなかった…。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


レオの予感は的中した。
いくら進んでも森から出られる気配はなく、さらに日も暮れ始めた。
周囲は薄気味悪く、変な汗が額を流れる。
進めば進むほど、何故か自分がどこにいるか把握できなくなる。

リアンが急に立ち止まり、レオはそれにぶつかった。

「いて。リアンちゃんどうしたん?」

リアンの目線を追う。
そこには大きな洞窟があった。
中は暗くて見えず、不気味な雰囲気だった。

「レオ、あれ────

リアンは振り返る。彼女は満面の笑みを浮かべている。
再び嫌な予感がする。

────すっごく面白そう!行こう!!」
「絶対イヤやああああ!!!!!」

レオは引っ張ってリアンを止めようとするが、彼女の力の方が強い。
ズルズルと洞窟の方へ進んでいく。
洞窟の入口に着いたが、中は相変わらずどうなっているのか見えない。

「ほ、ほほほほら、暗くて進まれへんし、入らんとこうや」

その言葉を言い切る前に、リアンは右手を出し、

「『鎮魂歌レクイエム』」

と、黒い炎を出現させて当たりを照らす。
レオはあんぐりと大口を開ける。

「よし!行くよ!」

そう言うリアンの瞳はこれまでにないほど輝いていた。

❁

「ひっ」

コウモリの声にレオは驚く。情けない声が出てしまう。

「はぐれないでね~!」
「帰りたい……」

その時、リアンの足が何かを踏む。

「む?」

下を照らすと、そこには薄黄色の毛のナニカがいた。
恐る恐る奥を照らす。
するとそこには、物凄まじい表情でこちらを睨む、巨大なオオカミがいた。

「「ぎゃああああああ!!!」」

それは、この前街で暴れていたオオカミより遥かに大きい。
立ち上がると、レオたちの3倍程の高さがあり、薄黄色の毛並みは優美になびいている。
ほのかに、周囲に黄色い光を纏う。

『お主ら……何をしに来た……』
「オオカミが喋ったあぁ!?」

オオカミはさらに目付きを鋭くする。

『不敬な。我はヴァナルガンド。狼なぞと同じにするな』

ヴァナルガンドの眼光にレオは身震いする。
一方リアンはいつも通り笑顔だ。

『もう一度聞く、何をしに来た?』
「洞窟があったから入ってみたんだ!私たち羅針盤壊しちゃって、もし帰り道分かるなら教えて欲しいな!」

ヴァナルガンドは威嚇するように喉を鳴らした。

『嘘だな。どうせお主らも“神器”を奪いに来たのだろう?』
「何それ?」
『させはしないぞ』

大きく雄叫びを上げる。
洞窟内で響き、リアンとレオの体も振動する。
ヴァナルガンドの足元をよく見ると、足首に鎖が巻かれており、それが千切られている。
どこかに囚われていたかのような痕だった。
レオはさらに恐怖を感じる。

その瞬間、ヴァナルガンド爪がリアンに迫る。
リアンは瞬時に反応し、避ける。
爪は地面を刺し、そこにはヒビが入った。

「おっとぉ!危ない危ない」
「や、やばいやつやん…!」

リアンは手を横に伸ばす。

「話し合いできそうにないね!『鎮魂歌レクイエム』────

彼女の周囲に黒炎が舞う。
大鎌を形成し、手に握られる。
その姿を見て、ヴァナルガンドの耳がぴくりと動いた。

────とりあえず落ち着いてもらうよ」

リアンの目はギラりと光る。

「リアンちゃんって意外と好戦的やな!?」

リアンは跳び上がった。
そこにヴァナルガンドは爪を振る。
だが、届くような距離では無い。
見ているレオはその行動を不思議に思う。
刹那、爪で引っ掻いた空間から明るい光のような、霧のような刃が飛んでいく️。

「リアンちゃん危ない!!!」

彼女は胸を反らせる。
そして大鎌を握りしめ、刃を捉える。
しかし彼女の想像より威力が強く、刃に押し切られて洞窟の壁に打ち付けられ……
そうになったが、片足で壁を蹴り、鎌で刃を壁の方に流す。

リアンは無傷で着地する。
刃は壁に当たり、そこを大きく削った。

『ふむ……中々やる様だな』
「うん、私強いもん」

言いながらリアンは鎌を振り下ろす。
黒炎は激しく燃え、ヴァナルガンドを斬る。
ダメージは受けているものの、

『グオオオ……。実体を操作出来るのか。厄介だ』

ヴァナルガンドは顔をしかめる。
しかし次の瞬間、反撃に出る。

リアンに飛びかかり噛みちぎろうとする。
彼女は逃げない。真正面で大鎌を構える。

『死ね』
「〈永遠の安息アニュス・デイ〉!!」

大鎌は黒い炎で円を描く。
1人と1匹の攻撃は激しくぶつかり、周囲に砂埃が立ち込め突風が吹き荒れる。
見ていたレオは吹っ飛ばされ、2回転して壁にぶつかる。

────見てるだけじゃあかん、リアンちゃんに加勢しな!

「さっきみたいに来い!!」

レオは手の甲の紋章に言い放つ。
しかし何も起こらない。
手を振ったり念じてみたりするが、静かなままだ。

「なんでや!?」

そうしてる間にも、リアンとヴァナルガンドは一進一退の攻防を続けていた。
どちらも引かない。
ヴァナルガンドが再び爪を振ったその時だった。

『グ、グオオオオ!?!?』

呻き声を上げながらその場に倒れてしまった。
リアンは、何も攻撃していない。
2人は驚いて駆け寄る。

「え!?どうしたの!?」
「何があったんや!?」

見ると、ヴァナルガンドの足枷が光っていた。
どうやらこれが彼を苦しめているらしい。

『グウウ…』
「ど、どうしたらいい!?」
『“魔力”の籠ったものをくれ……』
「魔力?何それ、分かんないよ!ええい、もう一か八か!!」

リアンは大鎌を消す。
そして両手を足枷に置き、目を瞑る。

「『鎮魂歌レクイエム』…!!」

黒炎がふわりと広がる。
そしてそれはヴァナルガンドの足首に吸収されていく。
リアンは顔を歪めながら、それでも懸命に力を注ぎ続ける。
レオはいてもたってもいられず、もう1つの足枷に手を添える。

────俺も力になりたい!!!!

すると、彼の周囲を白炎が舞い始めた。
それは足枷に吸収されてゆく。
彼の手の甲の紋章が、光っている。

そして、同時に足枷がパキンと音を立てて割れた。
足枷も繋がっていた鎖も、消えてしまった。

ヴァナルガンドは立ち上がる。
その毛並みは先程より美しく光を纏っているようにみえる。
彼は2人を見下ろす。

『……お主らは一体──。…いや、助かった。恩に着るぞ』
「よく分かんないけど元気になったの?よかったぁ」
「ほんまによかった。よく分からんかったけど」

2人は安堵し、優しく笑う。
ヴァナリガンドはそれを見て、暫く黙っていた。
そして洞窟の奥から何かを取ってきた。
淡い黄金の石のついたペンダントを、2人に差し出す。

『これは貴重な神器が一つ。お主らに授けよう。これを持つに値する器だ』

石は美しく輝きを放っている。
リアンはそれを受け取ると、レオの首にかけた。

「レオが持っておいて!」
「え、俺が!?」
『確かにお主の方が弱いから持っているべきだろう。この神器は持ち主に力を授ける』
「う、嬉しくない」

ヴァナルガンドはそのやり取りのあと、『ではな。楽しかったぞ』と言って洞窟の奥へ帰って行った。

「また戦おーね!!」
「大事なモノやのにありがとうなぁ!!」

2人は彼に伝わるように大声で暗い洞窟に向かって叫んだ。
薄黄色の毛並みは振り返らずに奥へ消えていった。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



ミラは本を閉じて時計を見る。
閉館時間はとうに過ぎており、利用者は誰もいない。
さらに他の司書も既に勤務を終えて帰っている。
時計を見ると、もう日が暮れる時間だ。
彼は仕事仲間のフクロウを呼び、片付けを始める。
寮に帰るのが遅いとリアンが迎えに来てしまうので、それを避けたいのだ。
うるさいから。

ミラは図書館の鍵を閉め、フクロウと共に寮へ戻る。

しかし、扉を開けても静かだ。

「……?」

リビングを覗いても、誰もいない。

「まだ帰ってないのか?」

今日は迷いの森に行っている、とケイトから聞いていた。
迷いの森は日が暮れると完全に自分のいる方角が分からなくなるため、日が昇っているうちに帰ってこなければならない。
……しかし、もう日が暮れるというのに戻っていない。

────まさかあの馬鹿共……

ミラはランプと羅針盤を取り出した。
そしてフクロウに「留守を頼む」と言うと、寮を出ていった。

街へ降り、広場を超えて森の入口まで来る。
日は既に暮れていた。
月明かりで微かに木々が見えるくらいだ。

その時。

ガサガサガサ

大きな音がした。何かが近づいてきている。
ミラは少し構える。

ガサガサガサガサ!!!

音が段々と近づいてきた。
ミラは持っていたランプをそちらへ向ける。
すると、木と草の間から、何かが飛び出してきた。

「やったーーー!出れたーーー!!」
「よっしゃあ!生還したでーー!!」

リアンとレオだった。2人はガッツポーズしている。
服が擦れた跡や、ボサボサの髪、そして所々に刺さった葉っぱ。
苦労して戻ってきた様子が伺える。

ミラは2人と目が合う。
その瞬間、2人が飛びついてきた。

「「ミラーーー!!!」」
「げっ!?」

さすがに予想外だったが、彼は反射で避ける。
2人は地面にダイブした。
死んだか?、と思い2人の顔を覗くと、レオもリアンも疲れて眠っている。

「どんな神経してんだ!…どうすんだよコレ」

ミラは溜息をつく。
そんなことも露知らず、2人は幸せそうに眠るのだった。



月灯りの下、街で2人を引きずって帰るミラの姿が目撃されたとか。
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