大阪人の俺と異世界人の美少女が組んだら最強。-レクイエム-

ただの女子高生

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勇者の国 編

神獣の恩返し…?

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「なるほどな…とりあえず帰って来れて良かったよ」

ケイトは、レオの言葉を聞いてペンを走らせる。
盗賊事件について報告書をまとめる必要があったのだ。
リアンに話させたところ、

「女の子がどーん!て2人になってバーンってやっつけたの!でも逃げられちゃった」

などと意味不明なことを話すので、レオに話させることにした。
(それも目的でレオを共に行かせたのだが)
しかし、

「鏡からぐあーって出てきて、なんか強かったんですよ」

と、全く期待はずれの説明能力である。
だがリアンよりはマシだったため、何とか具体的に聞き出せた。
まとめ終わる頃にはケイトは疲弊していた。

「うーん、聞く限りそいつは楽曲ギフト持ちみたいだな」

────だが『色欲アスモデウス』なんて変な名称だな…。の1つ、か。

ケイトはまとめた報告書を確認しながら、嫌な予感を拭えないでいる。
その時、部屋のドアを誰かが叩いた。

「開いてるから入ってくれ」
「失礼します。リアン団長はいらっしゃいますか」
「いらっしゃいますよ~!!」
「あ!リアン団長!団長会議がもう始まってます!!」
「・・・・は!忘れてた!!」

リアンは慌てて部屋を出ていこうとする。
その際、ケイトは「この報告書を提出してくれ」と書類を渡す。
それを受け取ると、猛スピードで部屋を出て廊下を駆けて行った。
足音が遠ざかる。
ケイトは深く息を吐く。

「本当にウチの団長は…。ところでレオ。ずっと聞きたかったんだが────

彼はレオの隣に視線を送る。
そこには愛らしいふわふわの生き物がいた。

────こいつは何だ?」

あまりに自然に連れてきて、ずっと傍にいるので聞くべきか否か迷っていたのだ。
だが流石に無視出来なかった。
ふわふわで丸い小さな生き物がそこにいる。

「この子ですか?」『わんわん!』

レオはひょいと抱き上げる。
その生き物は可愛らしい目でケイトを見上げる。

「今日から寮の一員なんですよ」
「……詳しく頼む」
「ええと、まず────

❁


朝。
寮に木漏れ日が差し込む。
レオは自然と目が覚める。
すると、目の前に今にも彼をつつこうとしていたフクロウが目に入る。

「うおわ!あぶな!!」
『ホウ、ホホウ』
「お、起こしに来てくれたんか、おおきに…。
でも優しく起こしてくれへんかなぁ…?」
『・・・・・』
「無言の拒否!!!!」

レオはゆっくり起き上がりながら、昨夜のことを思い出す。
ミラが2人を連れて帰ったのだが、流石に汚れまみれの2人をそのまま寝かせる訳にもいかず、起こして順番に風呂へ入らせた。
そう、この寮、風呂もついている。しかもかなり広い。

など、色々思い出しながら軍服に着替える。
紋章を確認し、部屋を出る。
そして1階(共有スペース)に降りようと階段を降りていた時だった。

踊り場に突っ伏しているリアンを発見した。

「ギャーーーー!?!?」

仰向けなので様子が分からない。
レオは恐る恐る近づく。
端正な顔立ちなので、余計に怖い。

「お腹すいたあああ!!」
「ギャーーーー!?!?!?」

リアンが急に起き上がり叫んだ。
レオはあまりの驚きに心臓がヒュっとなる。

「ん?あれ、レオおはよう」
「そんな普通に!?」

まだ心臓がバクバクいっている。
そこに顔を顰めたミラが1階から顔を覗かせる。

「おい、お前ら朝からうるせえぞ。さっさと降りてこい」
「ごめんミラ。でもリアンちゃんが殺人事件みたいな格好で寝てたからビックリしてん」
「ああ、あれはいつものことだ気にするな」
「気になるわ!!!」

そこでレオは違和感に気づく。
────あれ、ミラが降りる時もこの状態やったんやんな?……じゃあミラはコレを放置してたってことなんか!?

薄々気づいていたが、ミラのリアンに対する扱いが雑で驚くレオだった。

❁

「わざわざ起きた時から説明しなくても…」
「え、いらんかったですか?」
「その犬?が関係するところから話してくれ…」

❁

その時。

コンコン

寮の扉を叩く音がした。
「誰だろ?」とリアンは扉を開ける。

「はーい、って、え!?!?」
「どうしたん?って、ええ!?」

そこには小さなフワフワの生き物がいた。
ポメラニアンが近い例だろう。
薄い黄色の毛の中から、真ん丸な橙色の瞳が覗いている。

「「か、可愛い~♡♡」」

レオとリアンはその生き物を撫でまくる。

「ミラ!この子うちで飼おうよ!」
「ダメだ」
「え~ケチ~」
「殺すぞ」
「物騒やな!?」

やはりリアンへの当たりが強いことが再確認された。
断られたものの、リアンは粘り強く交渉を続ける。
その間、レオはもう一度その生き物を撫でてみた。

「やっぱ可愛ええなぁ。犬飼ってみたかってんな~」

すると、その生き物がレオの手を払った。

「え?」
『気安く触れるな無礼者』

衝撃的すぎて、空いた口が塞がらない。
可愛らしい生き物が冷たい目を向けてきたのだ。

『さっさと我を中に入れろ。腹が減ったのだ』
「も、もしかしてその話し方…」
『うむ。我はヴァナルガンド。昨日助けてくれたお礼をしに来たのだ。だからさっさと飯を寄越せ』
「全然お礼しに来た態度ちゃうんやけど」

一方リアンとミラの攻防は続いていた。

「もうミラなんて知らない!わからず屋!」
「はあ!?」

レオはミラが怖くて間に入れない。
彼はヴァナルガンドに耳打ちする。

「なあ、あんたが説明したら早いんちゃうん?」
『無理だな。姿では普通の人間には我の言葉はわからん。お主が何故分かるのか不思議なくらいだ』
「へえ…そうなんや」

────なんでやろ?異世界から来たからなんかな?それとも…

レオは手の甲を見る。
昨日手袋が破れてしまったので、リアンからまた新しい手袋を貰い、勇者の紋章は隠してある。

「ほんなら元の姿に戻ってや」
『それも無理だ。昨日、鎖を解くのに魔力を使い果たしてしまった』

ヴァナルガンドは首を振る。
その動作も、もふもふの姿なのでただただ愛らしい。
神獣の面影が一切無い。

『お主がどうにかしろ。ただしあの少女に我の正体がバレないようにしてくれ』
「注文多いな!恩返しはどうしたんや…」

レオはヴァナルガンドを抱き上げる。
そして言い合う2人の間に割って入り、

「なあ!…とりあえずお試しってのはどうや?」

と、恐る恐る尋ねる。
ヴァナルガンドも可愛らしい目をキラキラさせ、上目遣いで2人を見る。
ミラは目を細める。

「……はぁ。ならお前らだけで世話できる事を証明して見せろ。オレは手を貸さねーからな」
「「ミラ……!!」」

リアンは全身で喜びを表現する。
レオはほっとして額を拭う。

「お前もだ」

ミラはヴァナルガンドに冷たい視線を向ける。

「問題を起こした瞬間、寮から叩き出す」

ヴァナルガンドは身震いする。

『彼奴……怖いな。なかなかに冷酷だ』
「(神獣サマでもミラは怖いんか…)」

❁

────ということで、今日から一緒に暮らすことになったんですよ」
「は!?待て待て、そいつが団長が森で戦ったヴァナルガンドだって言うのか!?」

ケイトは丸い生き物を指さす。
すると、その生き物の姿が急に揺らめき、巨大なオオカミの姿となった。
そしてケイトの手を払う。

『無礼者が』
「……!!!」

そしてすぐにポンっと元の姿に戻った。
疲れたのか、舌を出して息を荒くしている。
ケイトは慌てて椅子を立つ。

「な…まさかこんなことが…!!」
「そんなにすごいんですか?」

ふわふわの生き物はレオの足を噛む。

「痛ってぇ!」
『わんわわん(凄いに決まっておる)』

ケイトは真剣な顔でレオを見る。

「すごい所の話じゃない。神獣は1夜で1国を破壊する程の力を持つと言われているんだ。それに、ここ何十年誰も姿を見てさえいない」
「なんやて…!」

レオはヴァナルガンドを見る。
まさかこのフワフワが、と疑いを隠せない。
しかし本当の姿───森で出会った時の姿は、確かに恐ろしいものだった。

「と、とりあえずこの事も報告書にまとめないと────」
『わん!!!(やめろ!!!)』
「やめろって言ってます」

ヴァナルガンドが大声で叫ぶので、ケイトはびくりと体を震わせる。
彼にも伝わるように、レオは通訳をする。

「どうしてだ?」
『わうわう、わん!(あの少女に正体を隠したいのだ)』
「リアンちゃんにバレたくないらしいです」
「なぜ…」
『・・・・・』
「秘密らしいですね」

ケイトは眉を顰める。
よく分からなかったが、この神獣もリアンの魅力に惹き付けられたのであろうことは分かった。
ケイトは彼女がこの団に入った頃を思い出す。
彼女のであり、忌み嫌われているにも関わらず、彼女はすぐに周りを味方につけてしまう。
不思議な少女だ。
それは、今目の前にいるレオにも感じていた。
何故か親しみやすく、リアンに似ている。

ケイトは微笑む。

「分かった。それなら俺は何も聞かない」
『わん(感謝する)』

そしてケイトは、レオへ向き直る。

「それで、レオに伝えたいことがあるんだが…」
「なんでしょう!」
「レオ、強くなれ」
「…へ?」

ケイトは真っ直ぐ見つめてくる。

「初日から、こんなに大事が起こるとは思っていなかった。それに関しては、すまない。
だが、これからもこういうことは多いだろう。だからレオには剣術を身につけてもらおうと思う。勇者の剣を、扱えるようになってもらう」

「な……」

レオは口を開いたまま何も言うことが出来なかった。
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