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8歳
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僕の目の前には推しのテオ様。
小さくて可愛い。とは言っても、僕より少し小さいだけなんだけど。これが将来は僕より大きくなるのか。感慨深いな。
テオ様はケバいテオ様の目に似た真っ赤な髪の母親の足元で小さくなってる。
テオ様ってめちゃくちゃ傲慢不遜で努力家で兄が好きで嫌いなちょっと歪んだ人。
いつも堂々としてるテオ様が親の足元で小さくなってる…。これを可愛いと言わずしてなんというんだろう。
「お帰りなさいませ。父様。」
テオ様に見限られないよう貴族らしく完璧な一礼をする。我ながら100点満点。
「今帰った。彼らが話していた者だ。仲良くしろ。」
「はっ。」
僕の隣をチラリとも見ないで通り過ぎてく公爵様。その後ろをキモイ声を上げて着いてくテオ様の母親。
「公爵様、どのお部屋を使いますか?入れたいものが沢山ありますわ!」
そんで残された僕とテオ様♡
可愛い。まじでかわいい。フニフニしてるほっぺもそうだし、燃えるように赤い目もゲームで見てた鋭さがない。それどころか不安そうに揺れている。キリッとつり上がった眉は変わらないけどそれすらかわいく見える。
義母はこんな可愛い子を置いてよくおっさんを追いかけられるものだ。
かわいいかわいいテオ様を堪能するために少しだけ近寄って微笑む。僕は危害を加えないよ。いい子だよ。だからちょっとでいいから堪能させて~って。
「僕はシルヴェスター家嫡男、クラウス・フォン・シルヴェスター。よろしくね。」
テオは少しふわふわの頬を染めて綺麗なお辞儀をする。かっわいい!どこのお人形だよ。可愛すぎる!
「テオ・カル「坊っちゃま。」あ。」
あー。名前間違えちゃったね。義母の旧姓を使おうとした。
それも可愛いけど。オロオロして目がうるうるしてる。
可愛い。いじめたい。かわいい。
「これからは僕の弟だからシルヴェスターになるね。テオの部屋は僕が案内しようか。着いておいで。」
僕が歩き始めたらテオ様はトコトコ着いてくる。かっわ。
傲慢不遜のテオ様が黙って着いてきた。可愛い。
ゲームのテオ様は口を開けば嫌味か怒鳴るかしかしない。
なぜなら、テオ様自身が男爵の母親から産まれたから。
それがコンプレックスで平民にめっちゃ厳しい。
あと、クラウスが完璧超人すぎてテオ様が努力を怠らない。
そのこともあって努力をしない人に当たりがめちゃくちゃ強い。
僕からしたらテオ様くらい努力したら何人かはストレスで病んじゃいそう。
だから大抵の人がテオ様の目に留まらない。
僕めっちゃゲームでは努力家だったからテオ様の好感度最高に上げられたんだ。だって時間だけは有り余ってたからね。体力は限りがあったけど。体力ないと寝るのもしんどいんだよ?知ってる?
テオ様はそのせいで人にめちゃくちゃ厳しくて嫌味なやつになった。
でもかっこいいんだよね。その嫌味もテオ様の努力の結果そうとしか思えないわけだし。めちゃくちゃ頭硬いけど自分が間違ってるって一瞬でも思ったら考え直してくれるし。
まぁそれでも謝らないんだけど。
主人公は平民だから平民に下げる頭はないんだって。
はは。お厳しい。
テオ様は案内した部屋を見て目を輝かせる。うん。嬉しいね。ここまで喜んだ顔ゲームでもあまりみない。テオ様が幸せなら僕も幸せ。嬉しいなぁ。
今度お茶会に招待しよ。
僕の周りは死んだ母親のお眼鏡に叶った身分が高くて媚びてくる人しかいないからね。
テオ様みたいにはっきり言ってくれる人がいたら安心だし。嬉しい。
「僕はここでお暇するけど何かあったらいつでも声をかけてね。」
それだけ言って部屋を出た。緊張してるだろうし初めての家だもんね。ゆっくりしてほしい。
▽
▽
▽
さて、始まってしまった。
BLゲームの物語は僕らが高等学校に通い始めてから始まる。だけど《君の心臓にたどりつけたら》というゲーム。どのキャラも不幸な裏話が絶対にあるんだ。
それでクラウスとテオという兄弟の不幸話は家が火の車になるほど金がなかったこと。
その上で個々に不幸話はあるんだけど割愛するね。
シルヴェスター公爵家の不幸話は僕の義母。テオ様の母親が公爵夫人になったことから始まる。
元々この公爵家、内情はボロボロなんだわ。
だから僕の母様は力のある家の子供を僕にあてがった。向こうは力のある公爵家と仲良くなりたい。
知らないっていいことも悪いこともあるよね。
でね、ボロボロの理由は今まで経営してた父様の金遣いの荒さ。それと経営手腕のなさ。
公爵様、領地に興味なくて実情も何も知らないまま増税を繰り返した。それで領地の土はカスカス。人もガリガリ。
それじゃあなにも生み出せない。何かを生み出すのは人なんだ。その人がいなくなったりしたら、金を生み出せない。
そんな見掛け倒しの家に嫁いで来た母。来て驚いたに違いないよね。皇国一の力を持つ公爵家。それがこんなのだとは思わないよ。
それで母様は立て直そうと奮闘した。公爵の金遣いの荒さを叱りつけながらも、女遊びは許してた。家にいない方が金が溜まるらしい。
それが祟ってつい最近死んじゃった。
自分の死を悟ってたのかなぁ。
最後はまだ8歳の僕に金の儲け方と領地経営、法の掻い潜りかた、社交界の渡り方、自分が持つ全てを教えてくれた。
死ぬ前日に初めて褒めてくれたんだよね。《さすが私の息子。合格ですわ。》って。
朝にはベットで冷たくなってた。
僕にじゃなくてクラウスに言いたかっただろうな。
置いていった前世の親はこんな気持ちだったのかもしれない。そんなしんみりな空気感を壊すように父様は新しい母を連れて帰ってきたけど。
話を戻すね。
ゲームではここからシルヴェスター公爵家の地獄が始まる。また領地経営の実権が父様に渡るとみるみるうちにシルヴェスター公爵家は落ちぶれていく。今度は立て直す母もいない。
一時は使用人も母についてきた執事とメイドだけになる。
そこでクラウスは奮起するんだ。
悪い方向にだけど。
母様の日記やらその時の記録、全部ひっくり返して独学で学び始める。そして公爵家を持ち直させるんだけどその時の貧困がテオ様もクラウスもトラウマになったらしい。
テオ様は家を持ち直させたクラウスを神のように崇めるようになる。それと同時にクラウスに対して大きな劣等感を感じるようになった。
クラウスはそれから家のためならなんでもするような人になった。ルートによっては弟であるテオ様を自分の身代わりとして処刑したこともある。
僕はそんなことをテオ様にさせたくないし、そんなに貧困でギリギリになった公爵家を持ち直させる自信はない。
だから先に手を打つことにした。
僕には前世の記憶があるからね。
まず給料が払えなくなっても僕の世話をしてくれた執事とメイドを呼びだして今後のことを話す。そして味方になってもらう。
この2人は母様についてきた侯爵家の使用人。文字もかけるし、算学も問題なくできる。
そして僕は母様から生き残るすべを教えてもらった。
この2人もきっと気づいてる。母様がここに来た時の公爵家を知ってるから。父様が実権を握ればこの家は保てなくなる。
だからそうなる前に手を打つことにした。
僕はまだ8歳だけど母様の知恵を貰ってる。今まで手伝ってきた書類も僕の頭の中に入ってる。
大丈夫。
僕はクラウスの才能はあるんだ。それを使いこなすのは僕だから。
本人より使いこなせる自信はないけどやってみせる。
僕はテオ様を幸せにしたいから。
「父様からシルヴェスター公爵家の実権を奪う。着いてきて。」
「「はい!クラウス様。」」
心配が顔に現れてた2人も、僕がそう言えば目を拭いて前を向いた。
大丈夫。僕ならどうにかなる。父様の秘密は僕も握ってるし。
さすが母様。離婚する時の手立ても隠し持ってるなんて流石だ。
女の地位が低い世の中なのに塗り替えようとなさってた。
死んだのが惜しいくらいに才能に溢れた人だと思う。
まぁ恨むなら女好きで金遣いの荒い父様とロクデナシに嫁がせた実家を恨んで欲しい。
小さくて可愛い。とは言っても、僕より少し小さいだけなんだけど。これが将来は僕より大きくなるのか。感慨深いな。
テオ様はケバいテオ様の目に似た真っ赤な髪の母親の足元で小さくなってる。
テオ様ってめちゃくちゃ傲慢不遜で努力家で兄が好きで嫌いなちょっと歪んだ人。
いつも堂々としてるテオ様が親の足元で小さくなってる…。これを可愛いと言わずしてなんというんだろう。
「お帰りなさいませ。父様。」
テオ様に見限られないよう貴族らしく完璧な一礼をする。我ながら100点満点。
「今帰った。彼らが話していた者だ。仲良くしろ。」
「はっ。」
僕の隣をチラリとも見ないで通り過ぎてく公爵様。その後ろをキモイ声を上げて着いてくテオ様の母親。
「公爵様、どのお部屋を使いますか?入れたいものが沢山ありますわ!」
そんで残された僕とテオ様♡
可愛い。まじでかわいい。フニフニしてるほっぺもそうだし、燃えるように赤い目もゲームで見てた鋭さがない。それどころか不安そうに揺れている。キリッとつり上がった眉は変わらないけどそれすらかわいく見える。
義母はこんな可愛い子を置いてよくおっさんを追いかけられるものだ。
かわいいかわいいテオ様を堪能するために少しだけ近寄って微笑む。僕は危害を加えないよ。いい子だよ。だからちょっとでいいから堪能させて~って。
「僕はシルヴェスター家嫡男、クラウス・フォン・シルヴェスター。よろしくね。」
テオは少しふわふわの頬を染めて綺麗なお辞儀をする。かっわいい!どこのお人形だよ。可愛すぎる!
「テオ・カル「坊っちゃま。」あ。」
あー。名前間違えちゃったね。義母の旧姓を使おうとした。
それも可愛いけど。オロオロして目がうるうるしてる。
可愛い。いじめたい。かわいい。
「これからは僕の弟だからシルヴェスターになるね。テオの部屋は僕が案内しようか。着いておいで。」
僕が歩き始めたらテオ様はトコトコ着いてくる。かっわ。
傲慢不遜のテオ様が黙って着いてきた。可愛い。
ゲームのテオ様は口を開けば嫌味か怒鳴るかしかしない。
なぜなら、テオ様自身が男爵の母親から産まれたから。
それがコンプレックスで平民にめっちゃ厳しい。
あと、クラウスが完璧超人すぎてテオ様が努力を怠らない。
そのこともあって努力をしない人に当たりがめちゃくちゃ強い。
僕からしたらテオ様くらい努力したら何人かはストレスで病んじゃいそう。
だから大抵の人がテオ様の目に留まらない。
僕めっちゃゲームでは努力家だったからテオ様の好感度最高に上げられたんだ。だって時間だけは有り余ってたからね。体力は限りがあったけど。体力ないと寝るのもしんどいんだよ?知ってる?
テオ様はそのせいで人にめちゃくちゃ厳しくて嫌味なやつになった。
でもかっこいいんだよね。その嫌味もテオ様の努力の結果そうとしか思えないわけだし。めちゃくちゃ頭硬いけど自分が間違ってるって一瞬でも思ったら考え直してくれるし。
まぁそれでも謝らないんだけど。
主人公は平民だから平民に下げる頭はないんだって。
はは。お厳しい。
テオ様は案内した部屋を見て目を輝かせる。うん。嬉しいね。ここまで喜んだ顔ゲームでもあまりみない。テオ様が幸せなら僕も幸せ。嬉しいなぁ。
今度お茶会に招待しよ。
僕の周りは死んだ母親のお眼鏡に叶った身分が高くて媚びてくる人しかいないからね。
テオ様みたいにはっきり言ってくれる人がいたら安心だし。嬉しい。
「僕はここでお暇するけど何かあったらいつでも声をかけてね。」
それだけ言って部屋を出た。緊張してるだろうし初めての家だもんね。ゆっくりしてほしい。
▽
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さて、始まってしまった。
BLゲームの物語は僕らが高等学校に通い始めてから始まる。だけど《君の心臓にたどりつけたら》というゲーム。どのキャラも不幸な裏話が絶対にあるんだ。
それでクラウスとテオという兄弟の不幸話は家が火の車になるほど金がなかったこと。
その上で個々に不幸話はあるんだけど割愛するね。
シルヴェスター公爵家の不幸話は僕の義母。テオ様の母親が公爵夫人になったことから始まる。
元々この公爵家、内情はボロボロなんだわ。
だから僕の母様は力のある家の子供を僕にあてがった。向こうは力のある公爵家と仲良くなりたい。
知らないっていいことも悪いこともあるよね。
でね、ボロボロの理由は今まで経営してた父様の金遣いの荒さ。それと経営手腕のなさ。
公爵様、領地に興味なくて実情も何も知らないまま増税を繰り返した。それで領地の土はカスカス。人もガリガリ。
それじゃあなにも生み出せない。何かを生み出すのは人なんだ。その人がいなくなったりしたら、金を生み出せない。
そんな見掛け倒しの家に嫁いで来た母。来て驚いたに違いないよね。皇国一の力を持つ公爵家。それがこんなのだとは思わないよ。
それで母様は立て直そうと奮闘した。公爵の金遣いの荒さを叱りつけながらも、女遊びは許してた。家にいない方が金が溜まるらしい。
それが祟ってつい最近死んじゃった。
自分の死を悟ってたのかなぁ。
最後はまだ8歳の僕に金の儲け方と領地経営、法の掻い潜りかた、社交界の渡り方、自分が持つ全てを教えてくれた。
死ぬ前日に初めて褒めてくれたんだよね。《さすが私の息子。合格ですわ。》って。
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僕にじゃなくてクラウスに言いたかっただろうな。
置いていった前世の親はこんな気持ちだったのかもしれない。そんなしんみりな空気感を壊すように父様は新しい母を連れて帰ってきたけど。
話を戻すね。
ゲームではここからシルヴェスター公爵家の地獄が始まる。また領地経営の実権が父様に渡るとみるみるうちにシルヴェスター公爵家は落ちぶれていく。今度は立て直す母もいない。
一時は使用人も母についてきた執事とメイドだけになる。
そこでクラウスは奮起するんだ。
悪い方向にだけど。
母様の日記やらその時の記録、全部ひっくり返して独学で学び始める。そして公爵家を持ち直させるんだけどその時の貧困がテオ様もクラウスもトラウマになったらしい。
テオ様は家を持ち直させたクラウスを神のように崇めるようになる。それと同時にクラウスに対して大きな劣等感を感じるようになった。
クラウスはそれから家のためならなんでもするような人になった。ルートによっては弟であるテオ様を自分の身代わりとして処刑したこともある。
僕はそんなことをテオ様にさせたくないし、そんなに貧困でギリギリになった公爵家を持ち直させる自信はない。
だから先に手を打つことにした。
僕には前世の記憶があるからね。
まず給料が払えなくなっても僕の世話をしてくれた執事とメイドを呼びだして今後のことを話す。そして味方になってもらう。
この2人は母様についてきた侯爵家の使用人。文字もかけるし、算学も問題なくできる。
そして僕は母様から生き残るすべを教えてもらった。
この2人もきっと気づいてる。母様がここに来た時の公爵家を知ってるから。父様が実権を握ればこの家は保てなくなる。
だからそうなる前に手を打つことにした。
僕はまだ8歳だけど母様の知恵を貰ってる。今まで手伝ってきた書類も僕の頭の中に入ってる。
大丈夫。
僕はクラウスの才能はあるんだ。それを使いこなすのは僕だから。
本人より使いこなせる自信はないけどやってみせる。
僕はテオ様を幸せにしたいから。
「父様からシルヴェスター公爵家の実権を奪う。着いてきて。」
「「はい!クラウス様。」」
心配が顔に現れてた2人も、僕がそう言えば目を拭いて前を向いた。
大丈夫。僕ならどうにかなる。父様の秘密は僕も握ってるし。
さすが母様。離婚する時の手立ても隠し持ってるなんて流石だ。
女の地位が低い世の中なのに塗り替えようとなさってた。
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