推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

文字の大きさ
4 / 232
8歳

2

しおりを挟む
テオ様がこの屋敷に来てからテオ様とはよく食事を一緒にする。おやつは時間が空いた時に誘ってるけど、偶にって感じ。

テオ様のマナーってさ人前に出せるレベルなんだよね。もちろん皇帝陛下とかそう言った公の場に出すには怖いところもあるけどお茶会くらいなら出せる。
まだ8歳。よくできた子だ。誰に教わったんだか。

それに義母様も綺麗な食べ方をする。そこらの上位貴族と並んでも遜色ないくらい。ただ見た目がねぇ。成り上がりの娼婦みたいな格好してるから高級娼婦にしか見えない。
もうちょいマシな服装勧めたら義母様からは「センスがない。」と鼻で笑われ、父様からは「趣味じゃない。」と一蹴された。
そんなにセンスがないだろうか?その格好より幾分もマシだと思うけど。というか、綺麗な赤い髪なんだから際立たせるために対色使えばいいじゃん。なんで全部真っ赤なの?血に染ってるようにしか見えない。せめて父様の目と髪色のグレーでも取り入れればいいのに。黒は地味で嫌いなんだと。
真っ黒な髪を持つ僕とテオ様の前で言うことかなぁ。それ。


案の定、母様が仲を取り持ってくれた媚びてくる友人達は距離を置きはじめてる。どうにかしないといけないな。アレでも親に力はあるし。

ため息が出る。良いことといえば母様がやっていた仕事を全部僕が引き継げたこと。父様には一切手出しさせてない。もちろんお金もお小遣い制。母様から貰った弱みをチラつかせたら黙った。

弱みがなにかって?
女関係のだらしなさ。それと横領の証拠。あとね、皇帝陛下の周りの洗脳計画書。この計画書もお粗末なものだったけど。洗脳って重罰だよ?
シルヴェスター家が皇家の血筋であることと過去の国への貢献から見逃してもらってるの。何を堂々と反逆しようとしてるの?馬鹿なの?どうせするなら新しく国を建てることから考えなよ。父様には無理だろうけどね。

ほんと可哀想な脳味噌してる。


「兄上、悩み事ですか?」

あ…テオ様が目の前にいるのに思考が飛んでた。オタクとして有るまじき行為だね。気をつけなきゃ。

「大事ではないから心配しなくていいよ。」

「人に話せば心も楽になると聞いたことがあります。俺では力になれませんか?」

なんていい子なんだろう。可愛い。
そういう心優しいところが漬け込む隙ができるんだよ。まぁテオ様に悪意を持って近ずく輩は僕が成敗してやるから問題ないけど。

「ふふ。ありがとうね。じゃあ話してみようか。」

かといって内情をペラペラ話す訳にも、ね。なにを喋ろうか。話してもいい心配事なんてあったっけ?

あぁ。一つあった。僕じゃどうにもできないやつ。


「もうすぐテオの誕生日でしょ?」

「知っていたんですか?」

「メイド長から最近聞いたの。だから大規模なものは開けないけど個人的に祝うのはどうかなって。欲しいものはある?」

お祝いする口実だよね。いらないって言われても準備してあげる。家にお金ないから豪勢なものはできないかもだけど。来年にはちゃんと外見だけはそれなりの貴族になれるように貯蓄するから待って欲しい。

「…いえ…。特には。」

「そう?ケーキは準備するつもりだよ。好きなケーキはある?」

「なんでも大丈夫です。」

「…そう。じゃあ僕の方で色々決めるね。来年も聞くから考えといてね。」


ないのかなぁ。テオ様のことならなんでも知りたいんだよ。でも公式設定でもテオ様の好きなもの『努力』だからなぁ。
もうちょっとさ。なんか…好きな食べ物とかも教えて欲しいよね。テオ様が努力好きだなんてゲームしてたら分かるし。

さて、どうしようか。クラウスならどうしようか。冷めてしまった紅茶に口をつけて考える。このポーズ、クラウスにそっくりになるように練習したからね。自信ありだよ。


「テオ。」

「はい。」

「君はもうテオ・フォン・シルヴェスターだよ。皇帝ですら易く折ることはできないシルヴェスター公爵の息子だ。」

「…は、い。」

わかってるのかな?金がないとはいえ僕がいる。絶対にテオ様だけは幸せにしてみせる。皇帝ですらあんなポンコツ父様を御せきれない。そのくらいには力も伝統もある家系だ。

「したいこと、やりたいこと、わがまま。全部許されるんだ。テオの謙虚さは美徳だけどあまり不快にさせないでね。」

「申し訳ありません…。」

怒ってるわけじゃないんだけど。もう1回覚めた紅茶に口をつけて唇を濡らす。なんと言えば通じるんだろう。

「悪いと思ってるならいつか好きなもの教えてね。」

「考えておきます…。」

「そうして。このケーキはどう?前のより美味しい?」

「どちらも美味しいです。」

「そう。」

どうしようかなぁ。小さいケーキ沢山用意させようか。でもそれならお金がなぁ。困ったな。どうしようか。

そういえば皇宮から持って帰ってきたチーズケーキ喜んでたし今回はそれにしようか。
…最近カカオっぽい実が輸入されたんだよ。この際、チョコレート作ってみる?

なんにしても甘めのやつがいいよね。貿易任せてるやつに聞いてみようか。



しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...