推しの完璧超人お兄様になっちゃった

8歳

39

｢いやぁ、坊ちゃんは物覚えがいいですね。教えることないですよ。あとは命の危機を回避する術を身につけるだけですね。｣

思ってもないくせに。
師匠と魔獣の耳を切り取りながら話をする。この人話するのは好きらしい。よく1人でペラペラ喋ってる。僕が大人になったら酒場で奢ってもらうんだってもう言ってるし。
大人になっても会ってるかどうかわかんないのにね。

｢どうすればいいの？｣

｢死にかければ身につきますよ。実践ッスね。｣


無茶言わないでよ。こんな状態の公爵家をテオ様に渡せない。もっと稼いで稼ぎ方教えて好きなことができるように育てなきゃゴーストになっちゃう。

｢まだ死ねない。｣

｢その気持ちがあるなら大丈夫ですよ。生きたいって気持ちで大体生きられますから。｣


そんな気持ちだけで生きられたら誰も苦労しないつーの。前世じゃどんなに駆け回って普通に生きたかったか。
……分かんないだろうなぁ。


※


｢兄上！おかえりなさいませ。｣

あ～。染み渡る。
テオ様はほんとに僕の癒し…。

｢ただいま。テオ。早いね。もう皇宮から帰ってきたの？｣

｢はい。今日は少しだけ剣を握れました！｣

そうなの？早いな…。
僕はもう少し走り込みとか鬼ごっことかさせられた。やっぱりテオ様は才能があるんだよ。もっと堂々と生きて欲しいね。

｢ずっとしたかったことでしょ？良かったね。｣

｢型に沿った教え方がいいかもとのことで殿下と一緒に学ぶことになりました。｣

上着を静かに近寄ってきたアルに渡しながらテオ様の言葉に耳を傾ける。馬車に乗る前にクリーンという魔法で体を綺麗にしてるからこのまま書斎に向かおうかな。
最近は夏と言うことで少し落ち着いてるから今のうちに色々と終わらせたい。越冬対策とか結果はどうだったかとか。

あー。そろそろ呼びつけた北の領地の領主代理の返事が来るはずだ。カイロもどきどうだろ。使えるならいいけど。落ち着いたら領地を見て回りたい。今はその金がないからできない。

あ、あとアレだ。7年後、ゲームでシルヴェスターの領地に魔獣の大群が現れるからそれに向けて兵士を雇わないと。まだ早いかなぁ。本格的に雇うのは3年前でそこから鍛えても遅くない？
数年後にはテオ様が戦えるからテオ様に鍛えさせるのもいいかも。

｢そっか。じゃあルディに負けないようにしないとね。｣

｢精進します。今日もボロボロにされましたから。｣

そうなんだ。勝ち誇ったルディの顔が浮かぶね。あの顔、無駄にいいからイラつくんだよ。

｢ルディも元気そうで良かったよ。もうすぐ皇宮主催の魔法大会があるでしょ？ルディも見に来るんだって。｣

テオ様の真っ赤な目が綺麗に輝いた。なにか興味のあることでも見つけたかな。

｢俺も近くで兄上の魔法をみたいです。｣

ほんと？ならめっちゃ頑張らなきゃ。絶対に優勝してみせる。
そういえばルディが用意したって言ってたな。
貰ったけどあげる人いないから仕舞いこんでた。へぇ。で済ませたけどお礼言っとかないと。
そうと決まれば手紙出さないと。最近は授業がバラバラなせいで会えないからね。

｢ルディがテオに特等席準備してくれたからチケットまた渡すね。｣

｢嬉しいです。お礼を言わないといけませんね。｣

｢そうだねぇ。テオ、少し仕事を手伝ってくれる？｣

｢はい！｣