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12歳《中等部》
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しおりを挟む「貴様はどうする。」
父様が静かに聞いてきた。香辛料まみれのチキンは気に入ったらしく静かに口に運んでる。テオ様と同じで出させたのに辛くないのかな。
「万が一があっても僕の変わりはいますから。領主代理がいて、僕の秘書もいます。あとは血筋が確かで闇魔法を扱うテオがいればシルヴェスターは回ります。それに僕も死ぬ気はないですよ。」
万が一、ね。
ありえないはありえないだっけ。好きな漫画で言ってたヤツ。
「兄上が行かなくても…。」
「僕が1番強いからね。刻魔法で生き返させられるし。なにより現場で指示出せる人材は大事だよ。何かあったらあの村は捨てる可能性もあるからね。」
元々テオ様は連れてかないで僕と私兵だけで終わらせる気だったのに。
「それは「父様のご察しの通り、毒持ちもしくは魔力の多い魔獣の可能性があります。」」
父様が要らないこと言う前にさえぎる。
あんまり義母様に心配をかけたくない。少なからず心配するのは分かってる。それにテオ様にはあとから伝えるつもりだった。間違った情報まで伝わったら困る。
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中でゾンビかゴーストになってたりしてね。そうなったら連れて帰っては来れないけど。
「中途半端なものを送ったのではあるまいな。」
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もちろん名前も変えて光魔法で姿も変えてるけど。
それに死ぬだろうなとは思ったから前金として交通費と諸々の費用残りは出来高払いしか受け付けなかったけど。案の定帰ってこなかったし無駄な出費はなかったから良かった良かった。
「陛下に兵を出してもらうぞ。」
「問題ありません。数年前から準備しています。それに死んでも逃げられないようにしておりますからご安心を。」
「…洗脳か?それなら私はお前を捕えなければならんのだが。」
「父様。洗脳なんか魔法に頼らずともできるのですよ。数年前から西の領民を選んで私兵にしております。」
まだ分からないのかな。魔法に頼りすぎでしょ。
そもそも大体の人間が恐れることって大切な人を失うことだもん。利用しないわけがない。
「僕があの子たちを選んだのは西の領地にいる魔獣狩りのためだと伝えてあります。自分たちが死を恐れて逃げたなら次は自分の故郷がなくなるぞと教え、剣術、魔法を学ばせました。あの子たちは故郷を守るために死にものぐるいで働いてくれますよ。」
「死にに行くようなものだぞ。よく人が集まったな。」
「大抵の人間が失うことを怖がるのも知ってますか?」
誰もなにも答えない。分かりきったことだろうに。父様や母様に命を捧げてるようなメラニーやアルフレートは分かんないかもしれないけどさ。
「まず命です。その次か、人によってはそれより上に家族や大切な人というものが入るんです。」
わっかんないかなぁ。
僕がテオ様を大切にするように。前世の僕の父母が湯水のように死にかけの僕を生かしてくれたように。
人にはなににも譲れない大切なものがあるの。
「つまりですね、僕らで魔獣を抑えきれなければ次は西の領土が被害に会います。今回、選んだ兵にはあの村の近郊出身の平民を多く入れました。死んでも僕が刻魔法で生き返らせます。僕が死ぬか、魔獣が死ぬかの持久戦に持ち込むつもりです。死ぬのが怖いなんて泣き言を言う兵士は含まれておりません。」
僕も含めてね。
誰一人死ぬ気はない。けど死ぬ気で故郷を家族を守りたい人達ばかり。多分今回の大会のテオ様くらいはみんな覚悟が決まってるよ。
「あなた一人で行きなさいよ。」
義母様がただ1人キッパリとそう言い切った。
やっぱりこの人強いわぁ。
このメンタリティ見習いたい。
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