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4話
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私とエテルは再び宿屋の跡地に赴き、座り込んで話していた。
私が村から出たことがないというと、外について話してくれた。魔の洞窟を進んだら大きな蛇の怪物がいたとか、西の王国は華やかで見ごたえがあるとか。
それが最近の出来事か、遠い思い出かはわからなかったが、楽しげに話してくれた。
日が暮れるより前に解散し、エテルは村長に断りを入れに邸宅へ向かった。
私はバスケットを片手に教会の裏手に回る。裏手には様々な色の花が咲いていた。
過去の私は村や森の付近で花を見繕っていたが、今回は自分で育てたのだ。
昔に宿屋で飾った色も加え、見栄えが綺麗になるよう丁寧に選んでいった。
日が暮れかかっている。
教会へ入ると司祭が既に祈りを捧げており、私も横にならった。
しばらくして祈りが終わり、私は司祭に聞く。
「今夜は旅人がこちらに泊るそうですが」
「うむ」
頷いた司祭の手は私の部屋から右隣の扉を示す。そこから特に会話をつなげる事もなく、司祭は自室に帰ろうときびすを返した。
私は司祭に声をかけてみた。
「司祭様、司祭様はなぜ神に祈るのですか」
厳しい顔がぐるんとこちらを向いたので、しまったと思った。
しかし、いつもの静かな声がふってきた。
「私たちが生きる許しを得るためだ」
「そうですか……」
「迷いがあるなら、自分の心に尋ねなさい」
私が深くおじぎをする間に、司祭は今度こそ自室に戻って行った。
私はエテルのいる扉をノックした。
旅人の泊る部屋は、簡素なベットが均等に3つ並ぶだけの部屋だ。
エテルはこの、宿屋よりも味気ない部屋で右角のベットに腰をおろしていた。
私と目が会う前に、彼の視線がバスケットの花々へ吸い寄せられていた。私は花をバスケットに入れたまま壁の小窓のへりに飾る。
そしてエテルの向かいのベットに腰をかけて、花を中心に正対した。
「私はマリーです」
「……司祭から聞いた名前と違うな」
「最初はマリーでした。250年前に名乗ったの、覚えていませんか?」
私は一度だけ微笑んだ。エテルは黙っている。
「私は昔、あなたを不老不死にしました」
「仲間がほしかったのか?」
「なかま? 私は不老不死ではありません」
エテルの目がきつく細まる。
「では何故」
「……あなたを気に入っていたから」
額に手を当て、彼は絶句した。
「そんな理由で? ……君は神を信じないと言っていたな。
君は神ではないとすれば何者だ。呪術師なのか」
呪術師。不老不死になるボタンを押した事が、この世界では呪術の類。
私はずっと、村人ではなく呪い屋だったのか。悲しいが胸にすとんと落ちた。
「そうですね。呪術師なのかもしれません」
「解く事はできるのか」
私は首をふり、エテルは大きくため息を吐いた。
完全に失望されている。しかし、これで道は決まった気がした。
「エテル、さん。憎い呪術師を……その……殺す、殺そうと思うなら、
今日か明日の朝までに。今は覚悟していても、明日には私、村を出ますので」
声が震えてしまった。エテルの眼光がここ一番に鋭く、言っている途中でもう刺されるのかと思った。
「逃げるのを宣言してどうする」
「逃げではなく、解く方法を探しに行くんです。今更ですけど」
「本当に今更だな」
私は手を握り締め、エテルの判断を待つ。初めて老いの来ないエテルを見た時並みに心臓が嫌な音を立てている。
エテルは私から視線をそらし、口を手で覆って小さく嘆息した。
「明日にしてくれ。疲れた」
「あの、明日の朝までに」
「ああ、おやすみ」
手のひらで帰れのサインを出される。
私はよたよたと立ち上がり、おじぎをして、よたよたと部屋を出て行った。
ああ、バスケットを置いたままだ。取りに行けようも無い。
バスケットを倒し花をぐちゃぐちゃに踏みしめるエテルを何度も想像しながら、私は夜更けを待った。
私が村から出たことがないというと、外について話してくれた。魔の洞窟を進んだら大きな蛇の怪物がいたとか、西の王国は華やかで見ごたえがあるとか。
それが最近の出来事か、遠い思い出かはわからなかったが、楽しげに話してくれた。
日が暮れるより前に解散し、エテルは村長に断りを入れに邸宅へ向かった。
私はバスケットを片手に教会の裏手に回る。裏手には様々な色の花が咲いていた。
過去の私は村や森の付近で花を見繕っていたが、今回は自分で育てたのだ。
昔に宿屋で飾った色も加え、見栄えが綺麗になるよう丁寧に選んでいった。
日が暮れかかっている。
教会へ入ると司祭が既に祈りを捧げており、私も横にならった。
しばらくして祈りが終わり、私は司祭に聞く。
「今夜は旅人がこちらに泊るそうですが」
「うむ」
頷いた司祭の手は私の部屋から右隣の扉を示す。そこから特に会話をつなげる事もなく、司祭は自室に帰ろうときびすを返した。
私は司祭に声をかけてみた。
「司祭様、司祭様はなぜ神に祈るのですか」
厳しい顔がぐるんとこちらを向いたので、しまったと思った。
しかし、いつもの静かな声がふってきた。
「私たちが生きる許しを得るためだ」
「そうですか……」
「迷いがあるなら、自分の心に尋ねなさい」
私が深くおじぎをする間に、司祭は今度こそ自室に戻って行った。
私はエテルのいる扉をノックした。
旅人の泊る部屋は、簡素なベットが均等に3つ並ぶだけの部屋だ。
エテルはこの、宿屋よりも味気ない部屋で右角のベットに腰をおろしていた。
私と目が会う前に、彼の視線がバスケットの花々へ吸い寄せられていた。私は花をバスケットに入れたまま壁の小窓のへりに飾る。
そしてエテルの向かいのベットに腰をかけて、花を中心に正対した。
「私はマリーです」
「……司祭から聞いた名前と違うな」
「最初はマリーでした。250年前に名乗ったの、覚えていませんか?」
私は一度だけ微笑んだ。エテルは黙っている。
「私は昔、あなたを不老不死にしました」
「仲間がほしかったのか?」
「なかま? 私は不老不死ではありません」
エテルの目がきつく細まる。
「では何故」
「……あなたを気に入っていたから」
額に手を当て、彼は絶句した。
「そんな理由で? ……君は神を信じないと言っていたな。
君は神ではないとすれば何者だ。呪術師なのか」
呪術師。不老不死になるボタンを押した事が、この世界では呪術の類。
私はずっと、村人ではなく呪い屋だったのか。悲しいが胸にすとんと落ちた。
「そうですね。呪術師なのかもしれません」
「解く事はできるのか」
私は首をふり、エテルは大きくため息を吐いた。
完全に失望されている。しかし、これで道は決まった気がした。
「エテル、さん。憎い呪術師を……その……殺す、殺そうと思うなら、
今日か明日の朝までに。今は覚悟していても、明日には私、村を出ますので」
声が震えてしまった。エテルの眼光がここ一番に鋭く、言っている途中でもう刺されるのかと思った。
「逃げるのを宣言してどうする」
「逃げではなく、解く方法を探しに行くんです。今更ですけど」
「本当に今更だな」
私は手を握り締め、エテルの判断を待つ。初めて老いの来ないエテルを見た時並みに心臓が嫌な音を立てている。
エテルは私から視線をそらし、口を手で覆って小さく嘆息した。
「明日にしてくれ。疲れた」
「あの、明日の朝までに」
「ああ、おやすみ」
手のひらで帰れのサインを出される。
私はよたよたと立ち上がり、おじぎをして、よたよたと部屋を出て行った。
ああ、バスケットを置いたままだ。取りに行けようも無い。
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