甘い世界

白川ゆい

文字の大きさ
上 下
43 / 68
恋と愛

君の好きなところ

しおりを挟む
 すずちゃんは俺の匂いが好きらしい。自分では全く分からないし、すずちゃんのほうがいい匂いだと思うけど。だけどそれを俺に知られるのは恥ずかしいらしく、俺が寝ている時にスンスンと匂いを嗅いでくる。加齢臭でもしていたらどうしよう。

「翔さん、すき……」

 でもこうやって抱き付いてきてくれるということは、嫌な匂いではないのかな。ふっと笑いそうになるのを何とか堪え、しばらくすずちゃんの好きなようにさせてあげる。
 うつ伏せで目を瞑っている俺の耳の後ろ、首筋、背中。どんどん降りて行くすずちゃんの顔。こんな風に馬乗りになって全身にキスされているような感覚、もしかして誘われているのかなと思ってしまうのは仕方ないよね。

「ん……」

 わざと身じろぎしてみれば、すずちゃんはハッとしたように体を離し俺の腕に潜り込んできた。可愛いな、本当に。俺はゆっくりと腕をすずちゃんの背中に回し、逃げられないように固定した。

「おはよう、すずちゃん」
「っ、おはようございます」
「ねぇ、そんなに俺の匂い好き?」

 頬に指を這わせながら言えば、すずちゃんは目を瞬かせた後顔を真っ赤にした。
 俺はすずちゃんに覆い被さる体勢になり、首筋や胸の匂いを嗅いでいった。すずちゃんは恥ずかしいのかくすぐったいのか、体を捩る。でも手をしっかり握ってベッドに縫い付けているから、逃げようにも逃げられないはずだ。

「すずちゃん、いい匂い。俺よりすずちゃんのほうがいい匂いでしょ?」
「っ、翔さんは、甘くて優しくて、翔さんみたいな匂いがするの……っ」

 俺みたいな匂い?あまりに可愛い言葉に思わず笑ってしまう。

「じゃあ、すずちゃんは甘くて可愛くて、すずちゃんみたいな匂いがする」
「そんなの、分かんな、っ」

 脚を大きく開いて、中心に顔を埋める。そこからは甘く発情したような匂いがして、俺は反射的に舌を伸ばした。くるくると円を描くように舌を動かし、溢れてくる蜜を舐め取る。すずちゃんの甘い声も、匂いも、全部。愛しくてたまらない。

「すずちゃん、気持ちいい?」

 中に舌を入れ、突起を吸う。すずちゃんの体がピクピクと跳ねてくしゃっと髪を握られる。胸に手を伸ばし乳首を弾くと、すずちゃんは一際大きな声を上げた。

「あっ、きもちい、翔さ、っ、ああ!」

 ひくひくと中が痙攣してきて、俺はそこから顔を離した。イきそうだったすずちゃんは体を細かく震わせながら俺を見上げる。縋るように、泣きそうな目で。きゅっと腕を掴まれると可愛くて今すぐすずちゃんと一つになりたいと思ってしまうけれど。

「もっと、もっと俺を求めて?俺しか見えないように」
「っ、か、けるさ、意地悪しないで……っ」
「意地悪じゃないよ。だってね、イくの我慢したほうが後でもっと気持ちよくなれるよ」

 意地悪なんかじゃない。俺はすずちゃんに意地悪なんかしない。だってこんなに可愛いのに、意地悪なんかしたくないから。

「今日はイくの我慢してみよっか。最後にはちゃんとイかせてあげるから安心して?」

 優しくキスをして、すずちゃんの全身に口付けていく。俺は心の底からすずちゃんを愛しているんだって伝えるように。指で中をほぐさなくても、すずちゃんのそこは早く俺を受け入れたくてヒクヒクしている。一本、二本、指を増やす度にすずちゃんの体は熱く震えていく。腕にしがみついて、快感を必死に耐えているすずちゃんは本当に可愛くて。俺はその唇に噛み付くようにキスをした。

「んんんっ、」

 くぐもったような声を出し、すずちゃんは更に昇り詰めていく。そして後少しで弾ける……という時に、俺はすっと指を抜いた。すずちゃんの体は熱くなったままその熱が解放されず、行方のない快感だけが体に溜まっていって。

「かけるさ、お願い、」
「ん?」
「翔さんが、欲しい……っ」

 俺の首に腕を回してキスをせがむすずちゃんの目には俺しか映っていなくて。……ほんと、可愛すぎておかしくなりそ。

「……いいよ。全部あげる」

 すずちゃんの手をしっかり握って、俺はすずちゃんと一つになった。そこからは気持ちよくて頭がおかしくなりそうで、俺自身もよく覚えていない。

「っ、んんんんっ」

 シーツを口に押し当てて、すずちゃんはもう何度目か分からない絶頂を迎える。締め付けがすごくて俺も持っていかれそうになるけれど、必死で我慢して。ハァハァと肩で息をして虚ろになったすずちゃんの目に、情けないくらい必死な顔をした俺が映っている。未だ痙攣するそこの一番奥にまた挿し込めば、すずちゃんはガクガクと体を震わせた。

「気持ちよさそうだね。すずちゃん」
「っ、おかしく、なる……っ」
「いいよ、おかしくなって。俺ももうおかしくなってるし。もっともっと俺に夢中になってよ」

 ズッ、ズッと卑猥な音を立てながら、ギリギリまで抜いて、また一番奥を突く。背を仰け反らせて感じるすずちゃんの腰をしっかり掴んで、その手をすずちゃんの小さな手が握れば。たまらなくなって指を絡ませる。

「っ、すずちゃん、もうイくからね」
「かけるさ、きて……っ」
「……ん、すずちゃん、愛してる」

 一番奥で欲望が弾けて、すずちゃんは「あ……あ……」と口をパクパクとしてイッてしまった。

「すずちゃん、いい匂い」
「っ、汗かいたから……」
「汗もいい匂い」
「それ、何か変態っぽい……っ」
「俺が寝てる間に全身の匂い嗅いでるすずちゃんも充分変態だよ」

 恥ずかしそうに俺の胸に顔を埋めるすずちゃんが可愛い。でも確かに俺って変態なのかなぁ。すずちゃんの可愛い顔が見たいからって色々しすぎかな。この前悠介が部屋に来た時、バイブを興味津々に見ていた。悠介は今まで使ったことがないらしい。最近の悠介は我慢しすぎてそろそろおかしな世界に行ってしまうんじゃないかと心配になる。

「翔さん、私確かに翔さんの匂い好きだけどね」
「うん?」
「翔さんだからだよ?だって翔さんと同じ匂いが他の男の人からしても興奮しないもん」
「……ふーん、すずちゃん、俺の匂いで興奮するんだ」
「えっ」

 ハッとした顔で口を塞ぐすずちゃんを抱き締める。……うん、でも確かにすずちゃんの言う通りかも。

「俺はすずちゃんの全部に興奮するよ」
「っ、だから変態ぽいってば……っ」

 恥ずかしそうに身を捩るすずちゃんの鼻の頭にキスをして、俺はすずちゃんの香りを胸いっぱいに吸い込んだのだった。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

for you

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:56

最愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:150

モラトリアム

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:130

シュガーレス

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:80

処理中です...