かみくら+の短編集

かみくら+

文字の大きさ
1 / 3

憧れ

しおりを挟む

 例えば今乗っている電車が、永遠に目的地に着くことなければなんて考える。
 ずっと電車に乗ったまま。
 好きな音楽を聴いていたい。


 この間、ラジオで耳にしたある曲は
今ではお気に入りプレイリストの仲間入りを果たした。
 私が目標にしているあの人は、つらいとき空を見上げるらしい。なんでも「空はどこまでも繋がっているから」だとか。
 毎日を忙しくしているあの人は、こころやからだが限界でも逃げることを許されない。それで一度ならず何度もじぶんを壊している。

 それでも逃げださず、放りださずにここまではしってきている。
見ているこっちが辛い程だ。


 あの人は今を強く生きている。自分の道を探しながら素直に生きているらしい。
 私にはその姿勢が眩しすぎて、羨望するどころか目を背けたい気持ちでいっぱいになる。
 今まで一番好きで目標としてきた人は、私が真似するなど烏滸がましいくらいのひとだ。


 私はある日を境に、その人を遠ざけるようになった。
 SNSでの検索をしなくなった。
 番組表を見なくなった。
 本屋アプリのお気に入りワードを消した。
 あの人の曲ばかりのプレイリストは一番下に追いやった。

 だけれど、あの人の活躍からは目を逸らすことができない。
 なぜなら彼のまっすぐさを喉から手が出るほど欲しいと、自分のこころの奥では思っているから。


 お気に入りのプレイリストに入れていたあの曲だけは、消すことができなかった。
 そうして帰宅時に聴くことになるあの人の声で、こんなに卑屈な考えをもつ自分に嫌気がさして自己嫌悪する。


拝啓
私の目標である、眩しい人へ。

 あなたの曲で前向きになったのですが、
 目標にするには遠すぎて
こんな私にとっては
ひどく勿体無い方としか思えません。

強くなれない私は
正しく進むダイヤとプレイリストに
逃げることしか、今のところできずにいます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...