かみくら+の短編集

かみくら+

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向かいのホーム

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 ふと顔を上げると目の前に見知った人物がいた。
 あと3分ほどで到着するはずの列車は、数個前の駅で乗客と接触してしまい遅れるとのアナウンスが今しがた流された。

 は、と呼吸が一瞬止まったようだった。黄色い点字ブロックより一歩下がった足が、片方ポンと前に出て傾いた身体を支えた。
 目の前の向かいのホームにいる知り合いは、一緒にいる人物と親しげに手を繋いで微笑みあっている。天候が悪く気温がぐっと下がる今夜は手袋が必要だったな、と思う。
 

 彼女いたの、知らなかった。そんな雰囲気すら感じなかったんだけど。
 あんな風に真っ直ぐ目を向けて、ひとと話すの初めて見たかも。
 
 いや、自分がいつもあの人の目をまっすぐ見れていないだけだったのか。


 定刻通りに動いている向かいのホームに車両が滑り込む。電光掲示板を見て自分はまだまだ来ないと分かり、重たい荷物を床に手放した。
 あの人たちが窓がわに並んで立っているのが見えた。夜のこの時間帯なこともあり、車内はさほど混んでおらず空席が目立っている。

 緩やかに発車した列車を目で追って、寒いなと巻いたマフラーに手をやる。彼女は自分には絶対に似合わない真っ赤なマフラーを巻いていた、と思い出す。

 また電光掲示板を仰ぎ見る。小雨が降りはじめ、風の向きが悪いようでホームに振り込む。床に置いていた荷物を引き寄せながら一歩さがった。



 電車の運行が再開したとのアナウンスが流れる。気づいたよりもかなり前から雨は降っていたらしい。からだの広い範囲が冷たくなっている。
 濡れた部分を拭くために、かじかんで上手く動かない手でバックからハンカチを取り出した。
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