地味な僕が女の子になれる皮を手に入れたら、大学のイケメンな先輩に本気で恋されてしまって正体がバレないか不安です

ひびきの

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第十九話 夏の終わりと、浴衣の誘い

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七月の最後の金曜日、大学の大講義室はいつもより活気づいていた。明日から夏休みということもあり、学生たちの表情には解放感が漂っている。

僕「相沢悠真」も、その中の一人として席に座っていた。今日の講義は「現代社会心理学」の最終回。教授の声が教室に響く中、僕の心は複雑な感情で揺れていた。

千紗との手芸部での時間、陽翔との未完成のメッセージ、そして明日から始まる夏休み。この数ヶ月間で、僕の人生は完全に変わってしまった。

「相沢さん、この統計データについてどう思いますか?」

突然、教授に指名された。周りの視線が一斉に僕に向けられる。いつものように、僕は慌てて資料を見返す。

「え、えっと…この相関関係は、やはり社会的承認欲求の影響が大きいと…思います」

声が小さく、自信のない答え。教授は少し困ったような表情を浮かべ、他の学生に振り直した。

講義が終わると、学生たちは一斉に教室から出て行く。夏休み前の最後の講義ということもあり、いつもより賑やかだった。

僕も荷物をまとめて教室を出ようとすると、背後から声をかけられた。

「相沢くん、お疲れ様!」

振り返ると、同級生の山田くんが手を振っている。

「山田くんもお疲れ様。夏休み、楽しみだね」

「うん、まあね。相沢くんは何か予定あるの?」

「特に…ないかな。家でプラモデルでも作ってるよ」

「へえ、プラモデルか。相沢くんらしいね」

そんな何気ない会話をしながら、僕らは廊下を歩いていた。夏休み前のキャンパスは、いつもより活気に満ちている。

「そういえば、相沢くんって恋愛とかどうなの?大学に入ってから、彼女とかできた?」

突然の質問に、僕の心臓がドキンと跳ねる。

「え、えっと…特に…」

「そうなんだ。俺もなんだかんだで彼女欲しいなあ。でも、相沢くんみたいに地味な人でも、きっと良い子が現れるよ」

地味な人。その言葉が、僕の胸に刺さる。山田くんに悪気はないのだろうが、僕の現実を突きつけられるような気分になった。

「でも、最近の女子って結構厳しいよね。特に美人だと、みんな高嶺の花みたいな感じで」

「そうだね…」

僕の頭の中に、千紗の笑顔が浮かぶ。彼女は確かに美人で、人気者だ。でも、僕は「結月」として彼女と親友になれた。そして、陽翔も「結月」に惹かれている。

この矛盾した現実を、誰にも話すことはできない。

「じゃあ、相沢くん。夏休み中も、たまには連絡するよ」

「うん、ありがとう。山田くんも良い夏休みを」

山田くんと別れた後、僕は一人で大学の構内を歩いた。夏休み前の最後の日ということもあり、多くの学生が友人と集まっている。

僕は一人で大学の正門に向かった。

帰宅途中、スマートフォンが震えた。結月用のスマホだった。画面を見ると、陽翔からのメッセージが届いている。

『結月ちゃん、お疲れ様!今日で夏休み前最後の講義だったよね?』

僕は心臓をドキドキさせながら返信した。

『はい、お疲れ様でした。陽翔くんも講義終わりましたか?』

すぐに既読がつき、返信が来た。

『うん、終わったよ!夏休み、何か予定ある?』

『特にないです。家でのんびりする予定です』

『そっか。実はさ、結月ちゃんに誘いたいことがあって』

僕の心臓が大きく跳ねる。何の誘いだろう?

『今度の土曜日、花火大会があるんだ。一緒に行かない?』

花火大会。夏の風物詩。浴衣を着て、夜空を見上げながら歩く。そんな光景が頭に浮かぶ。

『浴衣とか着て、ゆっくり散歩しながら花火を楽しもうよ』

浴衣。その言葉に、僕は複雑な気持ちになった。女の子の浴衣姿。それは、僕が「結月」として着るべきものなのだろうか。

でも、同時に強い憧れも感じる。陽翔と一緒に浴衣で花火大会。そんな経験をしてみたい。

『楽しそうですね。でも、浴衣って…私、持ってないんです』

『大丈夫だよ!俺も浴衣持ってないし、一緒に借りに行こうか。有名な浴衣レンタルショップ知ってるんだ』

陽翔の優しさに、僕の心は温かくなる。彼はいつも、僕のことを考えてくれる。

『ありがとうございます。でも、急に決めていただいて…』

『急じゃないよ。実は、前から誘いたかったんだ。結月ちゃんと一緒に夏の思い出を作りたくて』

その言葉に、僕の胸がキュンとする。陽翔は本当に、僕のことを大切に思ってくれているのだ。

『それなら…ぜひ、お願いします』

『やった!楽しみだね!じゃあ、土曜日の午後に待ち合わせしよう。浴衣レンタルしてから、夕方から花火大会だよ』

『はい、楽しみにしています』

メッセージを送った後、僕はスマートフォンを握りしめた。陽翔との花火大会。浴衣でのデート。

それは、僕にとって初めての「女の子としての夏の思い出」になる。

でも、同時に不安も感じる。浴衣を着て、陽翔と一緒に歩く。そんな光景を想像すると、心臓がドキドキする。

僕と陽翔の関係は、本当にこれでいいのだろうか?始まったばかりの女子としての自分と、彼との関係が順調に進んでいっていいものなのだろうか?

でも、もう引き返すことはできない。陽翔の優しさに触れ、千紗との友情を築いた今、僕はこの新しい人生を続けていくしかない。

自宅に戻ると、僕は自分の部屋で一人考え込んだ。明日から夏休み。そして土曜日には、陽翔との花火大会がある。

「結月」として、女の子として、陽翔と一緒に夏の思い出を作る。その期待と不安が、僕の心の中で複雑に絡み合っていた。

僕は皮を手に取り、鏡に映る「相沢悠真」の顔を見つめた。

「結月」として生きる時間は、確実に僕を変えていた。陽翔との関係、千紗との友情。それらはすべて、僕にとってかけがえのないものになっていた。

でも、この関係が本当に正しいものなのか、僕にはまだ分からない。

女子としての自分と陽翔との関係は、本当に幸せな結末を迎えるのだろうか?

でも、今は考えすぎないことにしよう。土曜日の花火大会。陽翔との浴衣デート。それを楽しむことに集中しよう。

僕は皮を手に取り、また「桜井結月」として生きる準備を始めた。

夏休み前の最後の日。そして、新しい夏の思い出への期待。この甘く危険な二重生活は、まだ終わらない。

陽翔の優しさと、千紗との友情。この二つの感情が、僕の心の中で複雑に絡み合っていた。

僕は「不思議な子」として、この嘘の人生を続けていくしかないのかもしれない。

でも、それでもいい。陽翔と一緒に浴衣で花火大会に行けるなら、千紗と手芸部で過ごせるなら、この新しい自分を続けていてもいい。

そんな気持ちで、僕は夏休み前の夜を過ごしていた。

明日から夏休み。そして土曜日には、陽翔との特別なデートが待っている。

その期待で、僕の心は温かく、そして少しだけ不安でもあった。

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