光の声~このたび異世界に渡り、人間辞めて魔物が上司のブラック企業に就職しました

黒葉 武士

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第1章 光と「クロード・ハーザキー」

30話 似たもの姉妹

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 次の日、朝起きて、歯磨きしているとルージュが起きてきた。

「クロード、おはよう」

「おはようルージュ、アマリージョの具合はどう?」

「まだ、寝てるわ、昨日の夜も言われた通りに、濡れたタオルを何度か交換したんだけど」

「ヒカリ・・どんな感じかな」

『傷口は問題ありません。毒も抜けています。おそらくは毒のせいで体力が奪われたのでしょう。魔素の流れも回復してきていますので、本日中には目覚めると思います』

「ほんとに?・・・よかった」
ルージュが安心した顔で喜んでいる。

「そういう事なら、湧き水を汲みに行って、栄養のあるものでも作ろうか」

「また、なんか食べさせてくれるの? まあクロードがそう言ってくれるなら、お言葉に甘えるのも悪くないわね・・・」

「別にいいよ。じゃちょっと水汲んでくる。今残ってる水は適当に移しておくから自由に使ってね」
そう言って、ペットボトルの湧き水をコップや鍋に移してから、湧き水を汲みに行った。

 湧き水を汲んでいる途中でヒカリから通信がきた。
『――アマリージョが目覚めました。今ルージュが状況を説明しています』

――彼女の説明で大丈夫なの?

『――私もいますので大丈夫です』

――なんか違う意味で心配・・・

 洞窟に戻るとアマリージョが毛布にくるまったままの状態で、椅子に座っているルージュと話していた。

「はじめまして。くろとです。はこざきくろと。怪我の具合はどう? まだ痛んだりする?」

「あ、えーとアマリージョです。この度は危ないところを助けて頂いてありがとうございました。あと、寝ている間に姉がご迷惑をおかけしてなければよいのですが・・・」

「アマリ!!私の何が迷惑なのよ、失礼ね」
 ルージュが腕を組み、むくれた顔をした。

「全部です。だって姉さんただのア・・・・いえ、無鉄砲なところがあるから」

「ちょっと!今アホって言おうとしたでしょ!」
 ルージュがムキになって言った。

「ふふっ・・・別に迷惑なんてかけられてないから、大丈夫だよ」

「クロードさんがそう言うなら、いいんですが・・・でも本当にありがとうございました」

「くろとです。・・・・名前」

「くろど?」

「く・ろ・と。は・こ・ざ・き・く・ろ・とです」

「ク・ロー・ド? ハ・オ・ザ・キー・ク・ロー・ド?」

――・・・何このやりとり・・デジャブ?

「は・こ・ざ・き・く・ろ・と」

「ハ・オ・ザ・キー・ク・ロー・ド」

――もしかして、ルージュと同じ系?

 髪はツインテール。
 顔が小さく、手足の長い、正統派の美少女。
 見た目もしゃべりも頭が良さそうなのに・・・さすが姉妹・・・よく似てる。

「もうクロードでいいです・・・」

「はい、クロードさん」
「だからクロードで間違ってないでしょうが!」
 デキるポンコツと、アホなポンコツ、それぞれが返事をした。

――今日からヒカリもクロードでいいよ。違う世界に来たんだし。

『――結局、似たもの姉妹でしたね』

――そうだね
 なんだか疲れた・・・。

     ♣

 アマリージョに村行きの事を話したら、とても喜んでくれた。
 すぐにでも、という話だったが、アマリージョの傷の具合と体力的な事を考えて、もう一日だけ洞窟で様子を見てから村に行くことになった。

 栄養と体力を付けるため、保存できる真空パックのご飯を使う事にした。
 ご飯は残り数が少なく、貴重品だったが、二人に食べて貰いたかった。
 おかずは、レトルトの牛丼。

 アマリージョに食欲がなければ、牛丼にせず、そのままおかゆにするつもりだ。
 ごはんのパックと牛丼のレトルトパックを湯煎する。
 温まったところで、ご飯を皿に移し具をのせる。
 出来上がったものを、ルージュの前に置きながら、アマリージョに声をかける。

「アマリージョ、同じものでも大丈夫? もう少しさっぱりしたものも作れ・・・」

「これでお願いします!」
 食い気味に返事が来た。

 そのあと、アマリージョと自分の分を作り机に並べる。

「どうぞ。水はこれ飲んで」
 汲んできたばかりの湧き水を3人分用意し机に置く。

 ふと見ると、ルージュはすでに一心不乱に食べている。
 アマリージョは、ゆっくり食べてはいるものの、ものすごく幸せそうな顔で一口一口噛みしめている。

「・・・アマリージョ、味はどう?」

「あ、美味しいです! これ本当に美味しいです!」
 どうやら喜んでもらえたようだ。

 ――今夜はカレーにしようかな・・・・って主婦か!
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