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第2章 光と「ウール村」
60話 土魔法
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「ヒカリ・・土魔法って・・・本気で言ってる?」
冷静に考えれば考えるほど、どんどん不安が広がっていく。
魔法に関する才能が自分にないことは嫌というほど自覚していた。なにせ初めて使えた魔法が顔から火が出るという、成功とも失敗とも言えない意味不明な代物だったし。
まぁ本音を言えば、魔法が使えるか否かの不安より、また失態を録画されて後日笑われるのではないかという不安のほうが強いのも確かだ。
しかし、ヒカリの見解は全く違うようで
『まだ、完璧ではありませんが問題はないと思います。先日、
ケナ婆さまのところで魔法陣に関する記述を分析しました。それから馬車に描かれている魔法陣、ルージュやアマリの魔法を分析した結果、魔法陣に描かれている意味を15%ほど、予測まで入れると約40%把握することが出来ましたから』
「へぇ、思ってたよりも分析が早いね」
『それは、やはり新しく配下にしたパソコン達と、何より電力を作り出すソーラー君の役割が大きいですね。まぁ、ともかく試しにやってみましょう』
「うん・・・で、どうしたらいいの?」
半ば諦め気味で、指示に従う。
『では、右手を前に出して、手を開いてください』
言われるがまま、右手を前に出して手を開く。
『もう少し、手のひらが真っ直ぐになるようにしてください』
「こ、こんな感じ?」
指先に少し力を入れて手のひらを真っ直ぐにする。
『はい。では、まず土が出る魔法陣を手の平に出しますので、手が少し温かくなってきたら魔力を手のひらに集めるようにしてもらえますか』
「・・・わかった」
返事をすると2~3秒で手が暖かくなってくるのを感じた。
『はい。準備が出来ましたので魔力を練って手の平に送って下さい』
ヒカリに言われ、下っ腹の辺りで魔力を練るイメージを繰り返し、練った魔力を右手の手のひらに集めた。
「ええっ!? うおぉぉぉぉっ!」
手のひらから細かい砂が湧き出て、サラサラと床にこぼれている。
『――ここまでは問題なさそうですね。もう少し魔力を込めるイメージでお願いできますか?』
「ちょっと待って・・・」
目を閉じて集中し、手のひらに全身から魔力が集まってくる感じをイメージする。
――あ、手が少し熱くなってきた。ちゃんと集中出来ているようだ
そっと目を開けて確認する。
「うわっ!!! ちょっ! なにこれ!?」
目の前に広がる砂嵐。
手のひらからとんでもない量の砂が吹き出て、壁にぶつかり部屋中が砂だらけになっていた。
慌てて魔力の供給を止める。
「ごめんヒカリ、やり過ぎちゃったみたい・・・」
『全く問題ないですよ。続けて実験していきますから、気にしないで下さい』
「え、でも、気にしないでって言われても・・・するでしょ・・・これは」
『大丈夫です、後ほど片付けさせますので・・・』
――え? 誰に? 俺じゃないよね? 知らないうちに家政婦でも雇ったのか? あ、いや人形か・・・でも、ソフビ人形じゃ何体いても、この量は無理そうなんだけど・・・
『はい。次行きますね』
ヒカリに急かされて、考えるのを止めて、手のひらを前に突き出す。
――――パシュッ!!
手を出した瞬間、手のひらから何かが飛び出し、壁にぶつかって潰れ、細かい砂になった。
「今の・・・何?」
あまりの速さに何が起きたか理解できずに唖然とする。
『砂を固めて弾丸のように撃ちました』
「えっ、凄い!! もはや銃じゃん!」
手から弾丸が出るなんて、小学生の頃に夢見たことが現実に起こり思わず声がうわずる。
『一応、ここまでで、砂を作る魔法陣、密度を高めて凝縮する魔法陣、それを打ち出す魔法陣、打ち出す際に手のひらにダメージがこないように空間を制御する魔法陣、魔法陣を重ねて発動するための魔法陣・・・合計で5枚の魔法陣を体内で展開しています』
「なんか、さらっと言ったけど凄いよね? 凄すぎない?」
『普通は、これを感覚だけで行い、魔法を発動する訳ですから・・・普通に使う方が凄いと思いますよ。寿司職人が米粒の数を感覚で同じ数にするのと、計測して同じ数にするとの違いと似ていますね』
「寿司・・・例えが全然わかんないけど、寿司職人が凄いってのはわかった」
猛烈に寿司を食べたい衝動に駆られながらうなずく。
『この後は、固めた土を弾丸状に形成するための魔法陣、打ち出す際に回転させ威力と命中率を上げるための魔法陣、そして、それら全てのパワーを上げて、一瞬で構築するための魔法陣を組み込んで、最後に弾丸に魔法陣を書き込むことで敵を自動追尾出来たら・・・と考えています』
「出来たらか・・・やっぱり、出来ないって可能性もあるってこと?」
『出来ないというより、時間がかかるということです。砂を固めて強度を上げるだけでも数十通りの魔法陣を用意していますので。実験結果によって解析が進めば時間は短縮されると思いますが、目標としては魔物にダメージを与えられる魔法にはしたいと思っています』
「そうなんだね・・・じゃ、できるだけ協力するから頑張ってみてよ。俺も魔法使ってみたいし」
『はい。では、その辺りに座って手のひらだけ真っ直ぐにしておいてもらえますか?どんどん魔法を発動していきます。威力としては、壁に穴が開くくらいが今日の目標です』
「ふーん・・・えっ! か、壁に穴? あの・・・ヒカリ、壁は穴開けるとこじゃないよ・・・」
ヒカリは家をどうする気なんだろうかと不安になりながら小さく抗議する。
『いずれ開けようと思っていましたし、ついでですから』
ヒカリは何でもないことのように、気楽な調子で言った。
「あ、そうなんだ・・・うん。開放的かもね・・・」
何を言っても無駄なことを悟り、ヒカリの言うままに受け入れる。
この後、4時間ほど魔法発動を手伝い、ついに壁に穴が開いた。
腕を上げ続ける作業は、かなり疲れたが身体が強化されているためか、時々休む程度で問題なかった。
『これで、ひとまず大丈夫そうです。後は、私の方でデータを分析して改良を加えておきますので。お疲れ様でした』
なんとか一通りの作業が終わったようだ。
後のことは自分でやるというので、ルージュに返してもらったソフビ人形を、ヒカリの横に置き部屋を出た。
冷静に考えれば考えるほど、どんどん不安が広がっていく。
魔法に関する才能が自分にないことは嫌というほど自覚していた。なにせ初めて使えた魔法が顔から火が出るという、成功とも失敗とも言えない意味不明な代物だったし。
まぁ本音を言えば、魔法が使えるか否かの不安より、また失態を録画されて後日笑われるのではないかという不安のほうが強いのも確かだ。
しかし、ヒカリの見解は全く違うようで
『まだ、完璧ではありませんが問題はないと思います。先日、
ケナ婆さまのところで魔法陣に関する記述を分析しました。それから馬車に描かれている魔法陣、ルージュやアマリの魔法を分析した結果、魔法陣に描かれている意味を15%ほど、予測まで入れると約40%把握することが出来ましたから』
「へぇ、思ってたよりも分析が早いね」
『それは、やはり新しく配下にしたパソコン達と、何より電力を作り出すソーラー君の役割が大きいですね。まぁ、ともかく試しにやってみましょう』
「うん・・・で、どうしたらいいの?」
半ば諦め気味で、指示に従う。
『では、右手を前に出して、手を開いてください』
言われるがまま、右手を前に出して手を開く。
『もう少し、手のひらが真っ直ぐになるようにしてください』
「こ、こんな感じ?」
指先に少し力を入れて手のひらを真っ直ぐにする。
『はい。では、まず土が出る魔法陣を手の平に出しますので、手が少し温かくなってきたら魔力を手のひらに集めるようにしてもらえますか』
「・・・わかった」
返事をすると2~3秒で手が暖かくなってくるのを感じた。
『はい。準備が出来ましたので魔力を練って手の平に送って下さい』
ヒカリに言われ、下っ腹の辺りで魔力を練るイメージを繰り返し、練った魔力を右手の手のひらに集めた。
「ええっ!? うおぉぉぉぉっ!」
手のひらから細かい砂が湧き出て、サラサラと床にこぼれている。
『――ここまでは問題なさそうですね。もう少し魔力を込めるイメージでお願いできますか?』
「ちょっと待って・・・」
目を閉じて集中し、手のひらに全身から魔力が集まってくる感じをイメージする。
――あ、手が少し熱くなってきた。ちゃんと集中出来ているようだ
そっと目を開けて確認する。
「うわっ!!! ちょっ! なにこれ!?」
目の前に広がる砂嵐。
手のひらからとんでもない量の砂が吹き出て、壁にぶつかり部屋中が砂だらけになっていた。
慌てて魔力の供給を止める。
「ごめんヒカリ、やり過ぎちゃったみたい・・・」
『全く問題ないですよ。続けて実験していきますから、気にしないで下さい』
「え、でも、気にしないでって言われても・・・するでしょ・・・これは」
『大丈夫です、後ほど片付けさせますので・・・』
――え? 誰に? 俺じゃないよね? 知らないうちに家政婦でも雇ったのか? あ、いや人形か・・・でも、ソフビ人形じゃ何体いても、この量は無理そうなんだけど・・・
『はい。次行きますね』
ヒカリに急かされて、考えるのを止めて、手のひらを前に突き出す。
――――パシュッ!!
手を出した瞬間、手のひらから何かが飛び出し、壁にぶつかって潰れ、細かい砂になった。
「今の・・・何?」
あまりの速さに何が起きたか理解できずに唖然とする。
『砂を固めて弾丸のように撃ちました』
「えっ、凄い!! もはや銃じゃん!」
手から弾丸が出るなんて、小学生の頃に夢見たことが現実に起こり思わず声がうわずる。
『一応、ここまでで、砂を作る魔法陣、密度を高めて凝縮する魔法陣、それを打ち出す魔法陣、打ち出す際に手のひらにダメージがこないように空間を制御する魔法陣、魔法陣を重ねて発動するための魔法陣・・・合計で5枚の魔法陣を体内で展開しています』
「なんか、さらっと言ったけど凄いよね? 凄すぎない?」
『普通は、これを感覚だけで行い、魔法を発動する訳ですから・・・普通に使う方が凄いと思いますよ。寿司職人が米粒の数を感覚で同じ数にするのと、計測して同じ数にするとの違いと似ていますね』
「寿司・・・例えが全然わかんないけど、寿司職人が凄いってのはわかった」
猛烈に寿司を食べたい衝動に駆られながらうなずく。
『この後は、固めた土を弾丸状に形成するための魔法陣、打ち出す際に回転させ威力と命中率を上げるための魔法陣、そして、それら全てのパワーを上げて、一瞬で構築するための魔法陣を組み込んで、最後に弾丸に魔法陣を書き込むことで敵を自動追尾出来たら・・・と考えています』
「出来たらか・・・やっぱり、出来ないって可能性もあるってこと?」
『出来ないというより、時間がかかるということです。砂を固めて強度を上げるだけでも数十通りの魔法陣を用意していますので。実験結果によって解析が進めば時間は短縮されると思いますが、目標としては魔物にダメージを与えられる魔法にはしたいと思っています』
「そうなんだね・・・じゃ、できるだけ協力するから頑張ってみてよ。俺も魔法使ってみたいし」
『はい。では、その辺りに座って手のひらだけ真っ直ぐにしておいてもらえますか?どんどん魔法を発動していきます。威力としては、壁に穴が開くくらいが今日の目標です』
「ふーん・・・えっ! か、壁に穴? あの・・・ヒカリ、壁は穴開けるとこじゃないよ・・・」
ヒカリは家をどうする気なんだろうかと不安になりながら小さく抗議する。
『いずれ開けようと思っていましたし、ついでですから』
ヒカリは何でもないことのように、気楽な調子で言った。
「あ、そうなんだ・・・うん。開放的かもね・・・」
何を言っても無駄なことを悟り、ヒカリの言うままに受け入れる。
この後、4時間ほど魔法発動を手伝い、ついに壁に穴が開いた。
腕を上げ続ける作業は、かなり疲れたが身体が強化されているためか、時々休む程度で問題なかった。
『これで、ひとまず大丈夫そうです。後は、私の方でデータを分析して改良を加えておきますので。お疲れ様でした』
なんとか一通りの作業が終わったようだ。
後のことは自分でやるというので、ルージュに返してもらったソフビ人形を、ヒカリの横に置き部屋を出た。
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