黄昏一番星

更科二八

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3章 バーンデッドディザスター

489話 やることいろいろ

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(タイガ視点)

ザーグ 、俺、ベリル対面にプリシラとアンジェリカが座って朝食をとっている。
ザーグは俺の片腕から血を啜り、ベリルはぎこちない水魔法を操ってなんとか匙と食器を動かしてスープを口に運んでいる。
俺は魚の干物を骨ごと齧っている。
そんな様子をプリシラは呆れながら、アンジェリカはめちゃくちゃ面白そうに眺めていた。

「はあ、自分の能力を分け与えるとかもうやってる事が魔王なのよ・・・」
「そうなの?魔王すげーじゃん」
「軽いわねー」
「まあいいじゃない。ベリルくんをどうしてあげたらいいか正直かなり悩んでたんだけど、タイガくんがいてくれてなんとかなりそうで良かったわ。ありがとね」
「いいってことよ!」
「はー・・・」

ベリルは大きなため息をつきながら俺をめちゃくちゃ睨んでいた。
ベリル自身俺の力を与えられることは受け入れているが、俺に対しては色々負けたくないと反骨精神バチバチだ。でも別に嫌われてる訳でもなさそう。
なんか無茶苦茶なのだが、俺に挑む気概たっぷりなところとかでベリルの事はかなり気に入っている。

「私とアンジェリカは今日から北の港にしばらく行ってくるわ。治療しないといけない人たちも多いみたいだし、向こうの状況も整えないとね」
「ガリバー1人だと流石に手が回らないだろうしねー」
「む、魔王様には感謝を伝えてほしい。私のことと、その港にいたルスウェーの民を助けていただいたことを」
「ええ、言っておくわね」

ベリルがめちゃくちゃにされた例の港だが、魔王1人で制圧してしまっているらしい。流石魔王ってところだが、気になる事はベリルも相当な手練れで調子さえ悪くなければ十分一騎当千な実力を持つほどの人物だろうと俺は思ってる。
だからこそベリルを圧倒した存在というのが気になった。

「ベリルってなんでやられちゃったんだ?」
「あんたねーデリカシーっないの?」
「こいつはそんなもの持ってない」

俺の言葉を待たずにすかさずベリルが断言してきた。失礼な。俺だって空気読むし、ベリルならこの程度のことで気を落とす事はないだろ。
プリシラもなんかいちいち毒吐いてきて、俺何かしたか?

「はーっ」とため息を吐いてからベリルは港で自分の身に起きたことを話してくれた。
港では自分が認識する世界の印象が全てチグハグにされて氣が上手く扱えなくさせられたこと、でもなんとか頑張って敵が海から逃げるのを阻止するために船を破壊したが、港に貼られた結界を閉じられて逃げられなくなってしまい、さらにアンジェリカの死体を見せられたことで動揺して結果やられてしまったという話だった。そこから先のことは聞かないでおく。

「陣地作成とはなかなか魔法使いらしいことするな。多分ベリルには魔法かけるの厳しいからベリルの意識に応じて陣地内のものの情報を書き換えてたとかだろう。アンジェリカの首だと思ったやつも別のやつの首だろ。かなりゴリ押しだけどかなり氣に長けたものとの戦闘にも慣れてるっぽいな。大魔導士とか賢者級の相手だな」

熟練の魔法使いってのは自分に都合のいい環境を作って戦うというのが基本戦術としていることが多い。
俺も一応賢者級なんだが、なんか試験に受かっちゃっただけのなんちゃって賢者の自覚あるし、セオリーとかも気にしたことないな。
とにかく大魔導士級と戦う時は相手の陣地をどうにかしない限り圧倒的な不利を押し付けられてしまう。
魔法学園での仕事が厄介だったのはこうした状況に度々陥っていたからだ。

「んー・・私とガリバーが駆けつけたときにはそんな事なかったのよね・・そんな強い魔導士も見つからなかったし。私が戻った事は把握されてたし、厄介な援軍呼ばれる前に逃げたという事かしら」
「そうか・・ルスウェーに潜伏などされなければいいが」
「ルスウェーの方にも行って警戒するように伝えておくわ」
「かたじけない」

ベリルを倒した魔導士の事は俺も気になる。
この村だって港からそこまで離れてる訳ではないし、逃亡先として選ばれる可能性もあると考えれば、何かしら対策はしておきたいな。
まあ今は雪が凄すぎて近づく事はできないだろうが。

「タイガくんとザーグはまだしばらくこの村にいるのよね?」
「そのつもりだけど」
「ラグナを待たなきゃいけないしなー」
「じゃあまあ村の守りは心配ないけど、タイガくんは雪はやくなんとかしなさいよ。このままじゃあなたのせいでこの村滅ぶわよ」
「んーーー・・・考える。できる限り早急に」

これはもう本当にプリシラの指摘の通りである。
もとはといえばザーグの案で大雪を降らせたのだが、儀式魔法に頼ったせいで俺の制御が効かず、もうずーっと大雪の日が続いている。
雪かきできていない場所や周囲の森なんてもう10メートルは超えて雪が積もっている。
このままでは春になっても雪が残り生態系とか村の農業に大ダメージを与えかねない。
それどころか燃料になる薪は周りの森で適時集めればいいという感じだったこの村では森が雪に埋もれてしまった状況では冬越しが厳しい。
そして毎日の雪かきで村人たちもかなり疲弊している。本当早くどうにかせねば。

「タイガ、家建ててくれとか、炭焼き窯の使い方教えてほしいとか、陶芸の件途中で止めてるとか、機織り機増やしてとか、魚の食べ方がわからんとか色々要望きてるぞ」
「うーん・・やる。全部やってやらぁ!」

正直仕事増やしすぎてめんどくさいが、頼られてんじゃあ仕方ねえ。
かつて鬼の村で鍛えられた俺の生活力を存分に発揮してやろう。
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