黄昏一番星

更科二八

文字の大きさ
338 / 520
2章 終末を呼ぶ狼

335話 死後

しおりを挟む
真っ暗な闇の中にいた。
身動きも出来ずただじっとしているだけ。
この感覚に身に覚えがあった。
タイガと初めて会った時あたりに経験した事。
でもあの時はここまではっきりと自覚できた意識はなかったと思う。

でも確実にあの時経験した状況と同じ。
であれば俺は死んだという事なのか。
あんな森の中で、絶え間なく射精し続けて、自分の精液塗れになりながら。
凄く気が重い、めちゃくちゃ惨めな死に方だ。
今回はタイガもいない。
せっかく生き返らせてくれたのに、こんな終わり方になるなんて。
本当に申し訳ない。
タイガに会いたい。
再開も叶わないまま俺はまた死んでしまった。
あんな蛇を食べなければ。
後悔してももう遅い。
俺はこのままどうなるのだろう。
死体は魔物に食われるだろうか。
ライさんが回収してくれるだろうか。
魂はどうなるのだろうか、体がなくなればそのうち消えてしまうのだろうか。
嫌だな、せっかく楽しくなり出した人生で、俺はまだ何も出来ていない。
冒険者になりたかった。タイガの夢の銭湯を一緒に作りたかった。
タイガと一緒にいたかった。
まだ死にたくなかった。

死にたくない。

俺はひたすら死にたくないと祈り続けた。
魂から伸びるタイガとの繋がりを強く意識しながら再び会いたいと思い続けた。
ふと真っ暗と感じていた意識に光がさした。
次の瞬間目が覚めた。
全身が重い。

「タイガ・・」
「ライだ、馬鹿犬、間違えんじゃねえ!」

ぼんやりとした視界が徐々にはっきりとししだすと目の前にいたのはライさんだった。

「・・・・生き返った?」
「死んだ事は自覚してたんだな、何やってんだか、おっ勃てたまま汁だくで死にやがって。盛り散らすにしても限度ってもんがあんだろ阿呆が、タマ捥ぐぞ」
「や、やめて、それだけは・・!
わざとじゃないんだ!蛇食ったら勝手に止まらなくなって!」
「ああ、蛇?
あーそいや精力剤の原料の蛇はこの辺か。
致死量食ったのか、やっぱ阿保じゃねえかよ」
「知らなかったんだ!」
「はははははは!知らずに食ってイキ続けて死んだのか!はははははは!間抜けすぎるぜ」
「ぐぅ・・」

事実すぎて言い返せない。
逆の立場なら俺も笑う。
惨めすぎる。

「たすかった・・ありがとう」
「死ぬ想定はしてたけどよ、こんな死に方するとは思わなかったぜ」
「うぅ恥ずかしい」
「まだ体から蛇の効能が消えたわけじゃねえからよ、まだ何度かぶり返すだろうな。死なねえように耐えろよ」
「えぇ・・どうすりゃいいんだ・・」
「さあな、タマと心臓でも氣で強化しとけ」

部分的な強化できるんだ。
全身に氣を行き渡らせることしかしたことなかった。
しかし射精し続ける最中できるのかは疑問だがまた死ぬかもしれないからやるしかない。

「なあ、ライさん、死んだら俺の魂や意識とか記憶とかどうなるんだ?」
「オメェには説明しとくか、めんどくせえけどよ。魂ってのはざっくり言うと心だ、そして紛らわしいが意識とは別だ、体の中で魂と意識は魔力の流れで繋がっている。それが死ぬと魔力の流れが壊れて繋がりが壊れるわけだが、そうなる直前に魂は意識を回収して混ざる」
「それ、タイガがやってたやつ!」
「そうだな、氣の精度と質を上げまくれば死ななくても自力でやれる。下手すりゃ意識を喪失する可能性もあるけどな」
「えぇ・・やっぱ危ない事だったんだ」
「死んだ方が確実だな」
「でも死ぬじゃん!」
「混ざってるやつが生きてる事がイレギュラーだ。
俺たちのような旧文明の人間は死んだら意識と記憶はその時点で喪失してたから今の人類は恵まれてるぜ」
「今の人類ってライさん達生き残った人たちから生み出されたんだよな。その時に魂に意識とか混ざるようにしたって事?」
「そうだ、スキルシステム通して魂にその機能をつけてやったんだ。俺が作った機能だぜ」
「マジ!すげえ!」
「分かってねえだろオメェ」
「はい、ごめんなさい。でもスキルシステムを作ったってことだろ?」
「作ってねえよ、機能を追加しただけだ」
「?」
「めんどくせえから流して聞いてろ。
話戻して、死んだやつの魂は意識と記憶を宿したまま、体か魔力を失った時点で体から離れてこの星の中心にあるスキルシステムへと落ちていく。そしてスキルシステムは魂を捕まえて記憶を回収して新しいスキルを生み出したり魔力に変換したりした後で、空になった魂は記憶を元により良い転生先が選ばれてそのうち再び地上に生まれる」
「星?転生?」
「面倒、そんなもんだとわかれ」
「はい」

何気なく聞いてみた死後の事が案外ちゃんと答えが返ってきたことの方が驚きだった。
死ぬとスキルシステムに利用されるらしいという事は理解できた。

「まあごちゃごちゃ説明したが、死んだらそこで終わりだ。転生するにしても余程の事がなければ記憶を持ち越したりとかもねえ」
「そうかーやっぱりまだ死ぬのは嫌だからもう死なないようにしないと」
「簡単には死なせねえよ、逸材だからな。でも獣に殺されたら魂壊されて蘇生も出来ないからしっかり鍛えてくれよ」
「まじかーわかったぜ」

魂壊されるってやべえな。
タイガって実は相当危なかったのでは。
ライさんたちは今後も俺だけじゃなくタイガも利用しようと考えているようだし、俺もタイガを助けられるぐらいには強くならないとな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

百合系サキュバス達に一目惚れされた

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

精霊界移住相談カフェ「ケルークス」

空乃参三
ファンタジー
 精霊は契約した相手の前でのみ、自らの本性をさらけ出すことができる。  本性をさらけ出すことのできない精霊は「揺らいで」いき、「揺らぎ」が限界を超えると自身が司る何かに多大なる損害を与えてしまう。  これを問題視した精霊たちは、彼らの契約相手の候補として人間に目をつけた。  人間を精霊の契約相手にするためには、人間を彼らが住む「存在界」から精霊の住む「精霊界」へ移住させる必要がある。  移住を促進するため、精霊たちは何ヶ所もの「精霊界移住相談所」を設立した。  「ケルークス」はそのような「精霊界移住相談所」のひとつに併設されるカフェである。  存在界から精霊界への移住は無期限の片道切符。一度移住すれば戻ることはできず、永遠に精霊界で過ごすことが求められる。  あなたはこの移住にチャレンジしますか? ※本作品はフィクションです。実在の人物、団体、法規制、および事件等とは関係ありません。 ※本作品は、ノベルアップ+様でも同様の内容で掲載しております。 ※毎週火曜20:40更新予定です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...