夜に散る純花

花梨姫子

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交錯する想い

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熟女キャバクラ「月夜の華」のフロアは、いつも静かな空気とはまるで別世界のように、熱い笑い声とざわめきで溢れていた。
雑居ビルの4階にある熟女キャバクラは、普段は客も少なく、キャストも少数で回している店だった。

でも、この夜は常連の佐藤さんや田中さんが連れてきた大人数の客で席がぎっしり。
シャンパンのボトルが次々と開き、キラキラした泡が夜を彩っていた。

ポップスのBGMが響く中、美津子はいつものグリーンのワンピースドレスに身を包み、小柄な体にたっぷりとした胸を際立たせていた。
シルクの生地が彼女の深い谷間をそっと抱き、常連の田中さんの隣でグラスを傾ける姿は、まるで柔らかな光を放つようだった。
ドレスの裾が彼女の丸いヒップを優しく包み、控えめなのにじんわり滲む色気が、田中さんの視線を絡めとっていた。
美津子の肌は、客の熱っぽい視線にほんのり火照り、心の奥で新しい一歩を踏み出す小さな震えを感じていた。

フロアの向こうでは、香織が長身の体をブラックのドレスで飾り、しなやかに動いていた。
深いスリットから覗く太ももが、動くたびに柔らかな曲線を見せ、自信いっぱいの笑顔が団体客の一人を完全に虜にしていた。
美津子と同じ歳で、高校の同級生でもある香織は、キャバクラの経験を武器に、フロアでひときわ目立つ存在だった。
でも、彼女が美津子を見るたび、昔の優越感をまとった笑顔の裏に、胸の奥でくすぶる不安がちらついていた。
美津子の柔らかな輝きが、香織の心に小さく刺さり、かつて地味だった同級生との距離がわからなくなっていた。

そんな中、ボーイの山本がフロアの端で、店長の西田とこそこそ話していた。
五十代の山本は、黒いスーツに身を包み、鋭い目でフロアを見渡す。
強面なのに、どこか紳士のような雰囲気を持っていた。
一方、西田さんは小柄で、ネクタイを少し乱したスーツ姿。
焦った様子でフロアを見回し、店の忙しさに圧倒されているようだった。

この夜、『月夜の華』は予想外の賑わいでキャストが足りず、西田は忙しさで焦っていた。
山本はフロアの状況を見極め、店長の西田に冷静に提言した。
「西田店長、この賑やかさですと、2階の店からヘルプを2名ほどお願いしたほうがいいですね。グラス運びで、若いボーイも一人もお願いしていただけると大変助かるのですが。」

いつもなら山本が一人でフロアを切り盛りしていたけど、この夜の忙しさは尋常じゃなく、ヘルプの力が必要だった。
夜のざわめきに焦りが混じり、店の絆が熱気の中に溶けていた。

西田は小さく頷き、「わかりました。すぐに手配します」と答えて、どこかに電話をかけた。

数分後、エレベーターのドアが開き、若い女性二人と細身のボーイがフロアに現れた。
同じオーナーが運営する2階のキャバクラ『星屑の夜』からヘルプで呼ばれたリサとユカ、そしてグラス運びの新人ボーイ、ケンタだった。

リサは長身で、ゴールドのワンショルダードレスが片方の腕を大胆に見せ、自信たっぷりの歩みで視線を集めていた。
挑発的な曲線が、夜の空気を熱くしていた。
ユカは小柄で、シルバーのミニドレスが柔らかな胸と華奢な肩を彩り、照明の下で無垢な魅力を放っていた。
ケンタは黒いベストに白いシャツ、緊張でぎこちなく、山本の強面に怯えた視線を向けながら、騒がしさに圧倒されていた。

山本は落ち着いた声で「ケンタ、グラス運びを優先しろ。慌てるな」と言い、紳士らしい仕草で三人をフロアの端に案内した。
フロアの熱に若い力が響き、夜のざわめきに期待と絆が溶け合っていた。

山本がリサとユカを美津子と香織に紹介した。
「ミナミさん、香織さん、2階の『星屑の夜』からヘルプのリサさんとユカさんです。団体客の席をサポートしてもらいます。ケンタはグラス運びで回します」
彼の声は穏やかだったけど、忙しいフロアをしっかり見据えた指示だった。

ケンタはトレイを持つ手に汗をかき、山本の鋭い視線に小さく頷いて、フロアの端でグラスを準備し始めた。

美津子はリサとユカに微笑み、緊張した声で「よろしく……お願いします」と呟いた。
彼女の声には、若いキャストの登場にドキドキする気持ちと、フロアの慌ただしさが混じっていた。

香織は二人をチラッと見て、軽く鼻を鳴らした。
「まあ、ちゃんとついてきてよ。4階は客のレベル違うから」
その言葉には、熟女キャバクラの誇りと、リサの自信たっぷりな視線に揺れる心が滲んでいた。

ユカは小さく頷き、「はい、頑張ります!」と答え、純粋な瞳が騒がしいフロアに少し戸惑いながらもキラキラしていた。

リサは香織の言葉に眉を上げ、ゴールドのドレスを整えながら「了解です。客のノリ、すぐ掴めますよ」と挑戦的な笑みを浮かべ、香織の視線をまっすぐ受け止めた。

山本はそのやり取りを静かに見守り、「では、ミナミさん、香織さん、彼女たちを席に案内してください。私はフロアを見ます」と言い、フロアの奥に戻った。

美津子はユカを田中さんの団体客の席に案内し、香織はリサを別の常連客のグループに連れていった。
田中さんの席では、ユカの無垢な笑顔と少し舌足らずな「シャンパン、どうですか?」が客の心を掴み、シルバーのドレスが小柄な体を彩り、柔らかな胸が軽く揺れて視線を集めた。
すぐに追加オーダーが入った。
美津子はユカの自然な接客に心から感心しつつ、グリーンのワンピースドレスが自分の豊かな胸をそっと揺らすのを感じていた。

でも、香織の席では、リサが「ねえ、シャンパンもう一本空けちゃおうよ、ダメ?」と甘く強引にねだり、ゴールドのドレスが長身の曲線を際立たせ、客のグラスを持つ手が一瞬止まった。
香織は「ちょっと落ち着いてね」と制した。
リサは肩をすくめ、ドレスの裾を直しながら客にウインクを送り、香織のイライラをさらに煽った。
香織は笑顔を保ちつつ、リサの若さに自分の立場が揺れるのを感じ、心がざわついていた。

フロア全体は、熟女キャバクラの落ち着いた魅力と、ヘルプの若いエネルギーがぶつかり合い、いつもと違う活気で満ちていた。
美津子は田中さんのグラスにシャンパンを注ぎ、シルクのドレスが体の曲線をなぞるたび、客の視線を受け入れる自分を感じていた。
「ミナミさん、今日も最高だよ!」田中さんの声に、彼女は「ありがとう、田中さん!」と明るく答え、心の奥で新しい力を感じていた。

一方、香織はリサの動きを気にしながら、長身の体でデコルテを輝かせ、常連客をしっかり掴んでいた。
でも、美津子がユカと笑い合う姿に一瞬視線を奪われ、心に静かな波が広がっていた。

山本はフロアの端から全体を見渡し、ヘルプの二人がうまく動いているのを見て、そっと頷いた。
西田が彼の肩を軽く叩き、「山本さん、なんとか持ちましたね」と弱々しい笑みを浮かべた。
その声には、忙しさを乗り切った安堵と、山本への信頼が滲んでいた。

山本は穏やかに答えた。
「ええ、ミナミさんや香織さんがしっかり支えてますから。ヘルプも悪くないですよ」
彼の鋭い目は、フロアの秩序とキャストたちの頑張りを静かに見守っていた。

シフトが終わり、ユカとリサは2階の『星屑の夜』に戻る前に、『月夜の華』の控え室に寄った。
控え室の柔らかな明かりの中、美津子は二人と向き合い、フロアの熱気を胸に抱いていた。

ユカは小柄な体に純粋な笑みを浮かべ、「ミナミさん、フォローしてくれてありがとう! 4階、なんか好きかも!」と声を弾ませた。
彼女の視線が美津子の豊かな胸にふと止まり、目を丸くして言った。
「でも、ミナミさんの胸、ほんとすごい! 何カップなの!?」
その無垢な質問に、控え室の空気が軽く揺れた。

美津子は頬を赤らめ、照れ笑いで「え、うそ、Kカップだけど……そんな、目立っちゃって……」と呟き、グリーンのワンピースドレスの谷間をそっと隠した。
ユカが「え、K!? すごい、めっちゃすごいよ!」と跳ねるように驚き、「私Gカップしかないんですよ」とシルバーのドレスの胸を押さえながら言った。

美津子は慌てて手を振って、「うう、大きすぎるだけ! ユカちゃんのGカップくらいが、ほんとちょうどいいんだから!」と焦ってフォローした。
リサは長身の体を軽く伸ばし、「いやいや、Gカップがちょうどいいって!? じゃあ私のEカップ、貧乳ってこと!?」と軽く毒舌を飛ばし、挑戦的な瞳に笑みが浮かんだ。
美津子が「え、違う、違うよ! リサちゃんのEカップも全然素敵で……!」とさらに慌て、頬を真っ赤にした。
リサはくすっと笑い、「ミナミさん、ほんと面白い人だね」と優しくフォローし、控え室を温かな笑い声で包んだ。
ユカも「うん、ミナミさん、なんかほっとする!」と頷き、純粋な瞳が明かりに映えた。

でも、控え室のドアの外で、香織が足を止めていた。
フロアの熱気を引きずり、ブラックのドレスを脱ごうと控え室に向かう途中、三人の楽しそうな会話が耳に入った。
ブラックのドレス越しに、控えめな胸をそっと押さえ、香織の心に小さな波が広がった。
かつておとなしかった美津子が、ユカの純粋な笑顔やリサの軽い毒舌に溶け込み、温かな絆を紡ぐ姿に、彼女の胸は少し痛んだ。
高校時代の優越感が揺らぎ、笑い声に取り残されたような寂しさが、心の奥で静かに燃えていた。
香織は唇を軽く噛み、控え室のドアを開けずに踵を返した。
控え室の笑い声が、夜の余韻に小さな波紋を広げていた。

美津子は、ユカと一緒に田中さんの席で笑い合ったフロアの熱を思い出し、控え室の柔らかな明かりに心を溶かしていた。
2階からのヘルプとケンタの緊張が彩った『月夜の華』は、この夜を最高の余韻で締めくくった。
控え室の静けさに、フロアの笑顔と熱がそっと響き合い、美津子の心に新しい絆が刻まれていた。
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