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2-1.
しおりを挟む別邸に到着し、滞在する部屋へと通されると、
「湯浴みを。」
「着替えを。」
と世話を焼こうとする人々に丁重に断りを入れ、夕食の時まで一人にして欲しいと、遙香はお願いをした。
フォンは、困ったような顔をしながらも、
「承知いたしました。夕食の刻限に、迎えに参ります。」
と、言って、遙香を部屋に一人にしてくれた。
部屋をみると、リビング程の部屋にソファとテーブルが置かれていた。
奥に続くドアが4つあり、ひとつは寝室、ひとつは書斎、残りはバスルームとトイレとなっていた。
遙香はソファに座ると、そのまま横になった。
アパートのラグの上で泣いていたのは、僅か1時間ほど前だろうか。あまりのことに、随分前のことのようにも感じる。
しかし、遙香が身に付けているのは、葬儀からそのままの喪服で、夫が亡くなった現実を受け入れられないままに、もっと非現実的な状況になってしまった。
「これで良かったのかもしれない。」
遙香は一人呟いた。
あの部屋は、僅か5ヶ月と言えど、夫との過去と、思い描いていた未来が詰まっていた。
職場も、きっと、見えない過去を思い返してしまう。
そして、立ち止まってしまうだろう。
「なぜ」と。
**************************************
ノックの音で、意識が覚醒する。
知らず知らずのうちに、遙香は眠ってしまっていたらしい。
一瞬、今いる場所がわからなくなったものの、召喚されてからこれまでのことを思い出す。
頬に残る涙を手で拭い、身体を起こしながら返事をした。
「フォン・ヴァッハヴェルです。お食事の前に湯浴みをと思い、侍女をお連れしました。」
扉の外から声がかかる。
流石にこのままの顔での食事は失礼だろうと、遙香は侍女の入室を許可した。
「失礼致します。」
部屋へと入ってきたのは、遙香と同じか少し若い年齢と思われる二人の女性だった。
入室するとすぐに浴槽の準備や着替えの準備を始める。様子をみていると、そのうちの一人から優しく微笑まれた。
「湯浴みの準備が整いました。お手伝いさせていただいてもよろしいでしょうか?」
お手伝い!?
遙香はもちろんこれまで入浴の補助をしてもらったことはない。しかし、お湯の出し方やシャンプーなど、この世界のやり方はわからなかった。
「ごめんなさい、こちらの作法を全く知らないのです。それこそお湯の出し方すら。教えてもらえますか?」
「勿論です。本日、こちらにお越しになったばかりだと伺っております。なんでも仰ってください。」
ほっ、と遙香は安堵の息つく。しかし、安心するのはまだ早かった。
「しかしながら、本日は、私どものおもてなしをご堪能下さい。
僭越ながら、目が少し腫れているようでございます。手もお肌もカサつきが見られます。
保湿の効果のある入浴剤を入れておきました。目元には冷やしたタオルもございます。入浴に合わせてお顔や腕、足をマッサージさせていただきますね。」
「えっ」
「こちらへどうぞ。お召し物を失礼致します。」
遙香が戸惑っている間に、あれよあれよと服を脱がされ浴槽につからされた。
そこからは、流石プロの技、頭の先から爪先まで全身磨かれ、マッサージをされ、入浴が終わる頃には、泣き顔のむくみがとれ、全身がもちもちに潤っていた。
万年肩凝りも解れたように感じる。
一方で、遙香は、羞恥心から精神の疲れを感じるのであった。
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