異世界ファンタジーまとめ3【短編集】

テタの工房

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終末神座

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俺は、かつて全ての宇宙を支配した神だった。名前は、もう覚えていない。いや、覚えていたとしても、今の状況ではどうでもいいことだ。2000億年以上前、邪神「アザゼル」の残滓が俺を襲った。その衝撃で、俺は自分の管轄外の、全く見知らぬ世界へと飛ばされてしまった。

ここは、緑が生い茂る、どこか懐かしいような森だった。空は青く、鳥が鳴き、風が木々を揺らしていた。平和な風景だ。だが、俺にはそんな平和な気分にはなれなかった。だって、俺は神様だったんだ。宇宙を創り、星を散りばめ、生命を誕生させた、偉大なる存在だったんだ。それが今、こんな辺鄙な森の中を、裸でさまよっているなんて…。

服も何もない。持っているのは、かつて宇宙を支配していた時の記憶と、かすかな神力だけだ。その神力も、邪神の残滓の影響で、ほとんど弱まっている。もはや、指先からビームを出すことすらできない。

「くそっ…」

俺は、地面に倒れ込み、力なく呟いた。神様として生きてきた数え切れない年月。その全てが、この森の中で無に帰ろうとしている。

腹が減った。喉が渇いた。体も冷えてきた。神様だって、お腹が空けば辛い。神様だって、寒ければ震える。

しばらくすると、森の中で何かが動いた音が聞こえた。警戒しながら、音のする方へとゆっくりと近づいていった。

そこには、一人の少女がいた。彼女は、ボロボロの服を着て、小さなナイフを手に持っていた。年は、10歳くらいだろうか。顔は汚れ、髪は乱れていた。まるで、野良猫のような少女だった。

彼女は俺を見て、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに警戒心を解いて、近づいてきた。

「あなた…大丈夫?」

彼女の言葉は、優しい声だった。俺の惨めな姿を見て、同情してくれたのだろうか。

「…うん」

俺は、かすれた声で答えた。

彼女は、俺に食べ物をくれた。腐りかけのパンと、汚れた水だった。それでも、俺はそれを貪るように食べた。何千年、いや何億年ぶりに味わう食事だった。

少女は、俺が神様だったとは知らない。知っていたとしても、きっと信じないだろう。今の俺の姿は、神様とは程遠い。

その夜、少女は俺に自分の名前を教えてくれた。レイナという名前だった。そして、彼女は、この森で一人で生きていることを教えてくれた。両親は、何年も前に死んでしまったらしい。

レイナは、森で生き抜くために、様々なことを教えてくれた。食べられる植物の見分け方、動物との付き合い方、そして、危険な生き物からの守り方。彼女は、小さな体で、たくましく生きていた。

レイナと一緒に森で生活するうちに、俺は少しずつ変わっていった。神としての威厳は失われたものの、レイナとの生活の中で、人間らしい感情を取り戻していった。

ある日、レイナが怪我をした。森で罠にかかってしまったのだ。俺は、弱っている神力を使って、レイナの傷を癒した。その瞬間、邪神の残滓の影響が、少しだけ薄れた気がした。

レイナは、俺の力を不思議そうに見ていた。もしかしたら、俺が神様だったことに、気づいたのかもしれない。

それからしばらくして、俺たちは森を出て、小さな村にたどり着いた。村の人々は、俺たちを温かく迎えてくれた。

レイナは、村で働き始めた。そして、俺は…レイナと一緒に暮らすようになった。神様ではなく、ただの一人の人間として。

もちろん、全てが順風満帆だったわけではない。村で起こる様々な問題、そして、俺を襲う過去の記憶。それでも、レイナがいてくれたおかげで、俺は生きていけた。

2000億年以上生きてきた神様は、小さな村で、一人の少女と静かに暮らしている。かつては宇宙を支配していた俺だが、今は、ただレイナを愛し、守ることだけが、俺の生きがいになっている。そして、俺は思う。もしかしたら、これが、本当の幸せなのかもしれないと。  邪神の残滓の影響は、まだ完全に消えていない。いつか、再びその力が蘇るかもしれない。だが、今はレイナといるこの時間が、俺にとっての全てだ。  この静かな幸せが、いつまでも続くことを願って。
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