異世界ファンタジーまとめ3【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
60 / 81

田舎町錬金術工房の日常

しおりを挟む
サラサは馬車から降りると、ため息をついた。目の前には、想像をはるかに超える田舎が広がっていた。茶色い土埃が舞い上がり、牛がのんびり草を食んでいる。家は古びていて、壁はひび割れ、屋根には雑草が生えている。錬金術師の優雅な生活なんて、この町では夢のまた夢だ。

師匠のアルベールは、サラサにこの町で唯一の錬金術工房「月の雫」を譲ってくれた。アルベールはいつも気前が良かった。サラサが孤児院で育ったことを知ると、自分のもとで修行させ、卒業後は工房までプレゼントしてくれたのだ。感謝の気持ちでいっぱいだったけど、この町を見て、少し後悔していた。

工房は、小さな小屋だった。壁にはカビが生え、窓ガラスは割れていて、ところどころ蜘蛛の巣が張っている。それでも、サラサは掃除を始めた。ほうきとちりとりで、埃とゴミを掃き出し、古びた棚を磨き、窓ガラスを修理した。

「よし、これで開店準備完了!」

サラサは、工房の看板を手作りした。木製の板に、金色のペンキで「月の雫」と書いた。少し歪んでいるけど、愛嬌がある。

最初の客は、農家のオジサンだった。牛の怪我を治す薬が欲しいという。サラサは、持っていた薬草と錬金術の知識を駆使して、薬を作った。オジサンは、薬の効果に驚いていた。

「これは、魔法みたいだ!」

次の客は、若い女性だった。恋人に贈る魔法の香水を作ってほしいという。サラサは、花びらと香料を混ぜ合わせ、魔法の呪文を唱えた。女性は、出来上がった香水の香りにうっとりしていた。

「最高!彼もきっと喜んでくれるわ!」

口コミで評判が広がり、サラサの工房は少しずつ繁盛してきた。しかし、この町には危険も潜んでいた。

ある日、サラサは、森の中で奇妙な生き物に出くわした。それは、獣のような姿をした魔物だった。鋭い爪と牙で、サラサに襲いかかってきた。サラサは、必死に錬金術で作った武器で反撃した。激しい戦いの末、なんとか魔物を倒したものの、サラサ自身も傷だらけだった。

その傷は、普通の傷ではなかった。魔物の毒が体内に広がり、サラサは衰弱していった。このままでは死んでしまう。

絶体絶命の状況で、サラサは師匠から教わった秘伝の錬金術を思い出した。それは、自分の命を削って、強力な薬を作る方法だった。サラサは、自分の命を賭けて、薬を作った。

薬を飲んで、サラサは奇跡的に回復した。しかし、代償として、サラサは少しだけ老けた。それでも、サラサは後悔していなかった。この町の人々を救うためなら、命を賭けてもいいと決めていた。

それからというもの、サラサは町の平和を守るために、魔物退治や、様々な錬金術の技術を駆使して人々を助けるようになった。

ある日、王都から使者が来た。「月の雫」の噂を聞きつけたのだ。王都では、サラサの錬金術の腕前が注目を集め、サラサは王室錬金術師として招かれることになった。

サラサは、この田舎町での経験を胸に、王都へと旅立った。田舎町での生活は決して楽ではなかったが、かけがえのない経験になった。そして、サラサは、この田舎町の人々との温かい思い出を、いつまでも胸に抱き続けることだろう。

サラサは、馬車に乗り込みながら、後ろを振り返った。小さな工房「月の雫」が、夕日に照らされていた。サラサの心には、感謝と、少しの寂しさ、そして未来への希望が満ち溢れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...