異世界ファンタジーまとめ3【短編集】

テタの工房

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十年間の魔神狩り

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十年もの間、魔神との戦いを繰り広げてきたラックは、疲労困憊だった。文字通り、寝ずに戦い続けたのだ。魔神の大群を相手に、特技「ラーニング」で次々と魔神の魔法を習得し、その力を自分のものにしていく。ドレインタッチ、生命力吸収… 魔神から奪った力は、彼の戦闘能力を飛躍的に向上させた。しかし、その代償は大きかった。

最後の魔神を倒した時、ラックは既に人間としての限界を超えていた。王都に帰還した彼は、自分の名前が通貨単位になっていることに驚愕した。街には、彼を英雄としてたたえる巨大な像がそびえ立っていた。だが、その像は、あまりにも彼を美化しすぎている。現実の彼は、生命力吸収を使いすぎたせいで、驚くほど若返ってしまっていたのだ。まるで二十歳そこそこの青年のような容姿。十年間戦い続けた男とは思えない。

「目立ちすぎる…」

彼は自分の正体を隠すことを決意した。Sランク魔導士であることを隠して、Fランク戦士として生きる。冒険者ギルドに登録し、初心者向けの簡単な依頼を引き受ける。それは、彼にとって、想像を絶するほど退屈な日々だった。

かつては、無数の魔神を相手に、命がけの戦いを繰り広げていた男が、ゴブリン退治や迷子の捜索に追われる。依頼内容は、些細なものばかり。だが、ラックはそれを真面目にこなす。彼の強大な魔力と戦闘スキルは、まるで宝の持ち腐れ。それでも、彼は不満を口にすることはなかった。静かに、平和に暮らしたいだけなのだ。

ある日、彼は森の中で迷子の子供を助け、その恩返しとして、美味しいリンゴジャムをもらった。そのジャムは、十年間、戦場でしか口にしたことのない砂糖の甘さを思い出させた。彼は、かつての戦場での血なまぐさい記憶を忘れかけていた。

しかし、平和な日々も長くは続かなかった。ある日、ギルドから緊急依頼が届く。それは、近くの村を襲ったという巨大な魔物の討伐依頼だった。その魔物、名前は「グレート・スライム」。巨大なスライムは、村を破壊し、人々を襲っていた。

ラックは、その依頼を躊躇した。再び魔神と戦うような危険な任務は、彼の隠遁願望に反する。しかし、村の人々の悲痛な叫びが、彼の心に響いた。彼は、かつての自分と重なるものを感じた。魔神に苦しめられた人々を、彼は放っておけなかった。

「…行きます」

彼はギルドにそう告げ、武器を手に取った。Fランク戦士の装備では、グレート・スライムを相手に戦うのは無謀だ。だが、彼は構わなかった。彼は、既に十年間の戦いで、どんな装備でも、どんな相手でも打ち倒す自信を持っていた。

グレート・スライムとの戦いは、想像以上に困難だった。その巨大な体からは、強力な酸性の粘液が流れ出し、周囲の樹木を溶かしていく。ラックは、過去の戦いで培ってきた魔法と剣技を駆使して、グレート・スライムに立ち向かう。

ラーニングで得た魔神の魔法、そして、十年間の鍛錬で磨かれた剣技。全てを駆使して、彼はグレート・スライムと死闘を繰り広げた。それは、まるで、十年前に魔神の大群と戦っていた頃の彼の再来のようだった。

激しい戦いの末、ラックはついにグレート・スライムを倒した。村の人々は、彼の勇姿を称え、感謝の言葉を述べた。しかし、ラックは、彼らの称賛を素直に受け入れることができなかった。彼は、ただ、静かに、自分の役割を果たしただけだと感じた。

彼は再び、Fランク戦士として、平凡な日々を送ることを決意した。しかし、彼の心には、十年間の魔神狩りと、グレート・スライムとの戦いの記憶が、深く刻み込まれていた。それは、彼の人生の一部であり、決して消えることのない、彼の誇りだった。彼は、これからも、静かに、そして、必要とされる時だけ、その力を発揮していくつもりだった。
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