短くて怖い話1【短編集】

テタの工房

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サユリの呪縛

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夕暮れの街は、ネオンの光が霞んで、少し妖しい雰囲気を纏っていた。僕はいつものように、帰り道にある公園のベンチで一息ついていた。すると、若い男女が、僕のすぐ近くに座った。男はケント、女はミドリ。二人は、明らかに険悪なムードだった。

「もう、サユリに近づかないでよ!」ミドリは、声を荒げている。

ケントは、ため息をつきながら言った。「無理だよ、ミドリ。サユリは…怖いんだ」

「怖い?何が怖いわけ?ただの女でしょ!」ミドリは、ケントの腕を掴んで強く揺さぶった。

「いや、違うんだ。普通じゃないんだ…サユリは…」ケントは、言葉を詰まらせている。

「何?話してよ!サユリって一体何者なのよ!」ミドリの目は、怒りに燃えていた。

ケントは、ためらいながらも話し始めた。サユリは、ケントの大学の同級生だった。美しく、誰からも好かれる女性だった。ケントも、サユリに惹かれていた。しかし、サユリは、ケントの気持ちに気づいていなかった。

「サユリは…俺のことを見てくれなかった。いつも、他の男と仲良くしてて…。でも、俺はずっと、サユリが好きだったんだ」ケントは、苦しそうに言った。

「それで?」ミドリは、静かに言った。

「それで…ある日、サユリが、俺に近づいてきたんだ。誰にも言えない秘密を打ち明けてきて…。その時から、全てが変わったんだ」ケントは、震える声で言った。

その秘密とは、サユリが、他の男たちから金を巻き上げていたというものだった。そして、その金で、贅沢な生活をしていた。ケントは、サユリに深く関わってしまい、抜け出せなくなっていた。

「サユリは…俺を操っているんだ。俺の金も、時間もとられて…もう、自由じゃないんだ…」ケントは、絶望的な表情をしていた。

「そんな…信じられない…」ミドリは、言葉を失った。

その夜、僕は、ケントとミドリの話をずっと考えていた。最初は、ただの若いカップルの些細な喧嘩だと思っていた。しかし、ケントの言葉には、本物の恐怖が感じられた。サユリ…その名前が、僕の心に深く刻まれた。

それから数日後、僕は、ニュースで衝撃的な事実を知ることになった。ケントが、何者かに殺されたというのだ。現場には、サユリの持ち物らしきものが残されていたという。

警察は、サユリを容疑者として捜査を始めた。しかし、サユリは、行方不明になっていた。

僕は、公園のベンチに戻った。夕暮れの空は、前日と変わらず、ネオンの光が霞んでいた。しかし、その空気は、明らかに違っていた。冷たく、重く、そして、恐ろしい。

それからというもの、僕は、公園に行くのを避けるようになった。夜になると、サユリの顔が、僕の脳裏に浮かぶ。美しい顔…しかし、その瞳には、恐ろしい光が宿っていた。

ある夜、僕は、夢を見た。夢の中で、僕は、サユリに追いかけられていた。サユリは、まるで幽霊のように、僕の前に現れ、消え、また現れる。

「ケントを…返して…」サユリは、かすれた声で囁いた。

僕は、逃げた。しかし、サユリは、どこまでも追いかけてきた。逃げても逃げても、サユリは、僕のすぐ後ろにいた。

そして、僕は、目が覚めた。心臓が、激しく鼓動していた。額には、冷たい汗が流れていた。

それからというもの、僕は、常にサユリに怯えるようになった。夜になると、窓の外から、サユリの顔が覗いている気がした。そして、耳元で、サユリのささやきが聞こえる気がした。

「ケントを…返して…」

僕は、もう、公園には行かない。そして、サユリの名前を、口にすることさえ、恐れている。サユリは、今もどこかで、僕を待っているのかもしれない。歪んだ愛と嫉妬の化身として…そして、永遠にケントを呪い続ける幽霊として…。

あの日、公園で聞いた会話は、ただの噂話ではなかった。それは、サユリの呪縛の始まりだったのだ。そして、その呪縛は、いつまでも、僕の心に残り続けるだろう。
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