15 / 35
見える、ということ。
しおりを挟む
夕暮れ時、蝉の声がやけにうるさかった。アスファルトの照り返しが、僕の目をチカチカさせた。
「ねえ、D、あのさ…」
僕は、汗ばんだ手でペットボトルのキャップを回しながら、隣を歩くDに話しかけた。Dは、いわゆる「霊が見える」やつだ。正確には、霊視能力がある、と本人は言っている。
「なんだよ?」
Dは、いつもの無表情で答えた。彼は、いつも無表情で、何を考えているのかさっぱりわからない。それがまた、彼のミステリアスさを増している。
「あのさ、本当に霊が見えるの? 冗談じゃなくてさ」
正直、半信半疑だった。Dは、よく「怖い話」を語る。ネットで話題になった「本当にあった怖い話」とか、「夏のホラー2018」とか、「ネトコン13」の感想を交えながら、さも自分が体験したかのように話すのだ。最初は面白半分で聞いていたけど、彼の語る話は、妙にリアルで、ゾッとする部分もあった。
「見えるよ」
Dは、あっさり言った。そして、視線を遠くの雑木林に向けた。
「あそこに、いるよ」
僕は、Dの視線の先を見た。何もない。ただ、緑濃い雑木林が広がっているだけだ。
「……誰がいるの?」
「おばあさん。ずっとそこに立ってる。悲しい顔してる」
「おばあさん…?」
僕は、背筋が凍るような寒気を感じた。風が吹いたわけでもないのに、急に肌寒くなった。
「何でここにいるの?」
Dは、雑木林の方をじっと見つめながら、呟いた。
「…わからない。でも、ずっとここにいるみたい。誰かに話しかけたいみたいだけど、誰にも聞こえないみたい」
Dの話は、まるで映画のワンシーンみたいだった。実際、彼は霊能者とかそういうわけじゃない。普通の高校生だ。でも、彼の語る話、そして、彼の視線は、信じられないほどリアルだった。
その晩、僕はDから聞いた「おばあさんの話」をネットで調べた。しかし、その雑木林に関する情報は何も出てこなかった。「夏のホラー2018」で似たような話が話題になっていたことはあったが、具体的な場所については不明だった。
数日後、再びDと一緒に出かけた。今度は、Dが「見える」という場所、彼の家の近くの古い神社だった。
神社の境内は、静かで神聖な雰囲気に包まれていた。しかし、Dは、明らかに落ち着かない様子だった。
「…いる。たくさんいる」
Dは、震える声で言った。彼の顔色は、青ざめていた。
「誰がいるの?」
僕は、恐る恐る尋ねた。
「…子供たち。遊んでる…けど…」
Dは、言葉を詰まらせた。
「…けど、何?」
「…けど、みんな…死んでる…」
Dの言葉に、僕は恐怖を感じた。境内には、確かに、子供たちの声が聞こえた気がした。かくれんぼをしているような、楽しげな笑い声。しかし、その笑い声の裏に、何とも言えない悲しみを感じた。
「…見える、ということ…どういうことなんだろ…」
Dは、呟いた。彼の目は、空っぽだった。まるで、彼の内側には、想像を絶する恐怖が渦巻いているかのようだった。
「…もしかして、Dも、その子供たちと…?」
恐怖に慄きながら、僕はDに尋ねた。
Dは、何も答えなかった。ただ、静かに、境内を見つめていた。その視線の先には、僕には見えない何かが、確かに存在しているように感じた。
その日以来、Dは「見える」ことをそれほど気にしなくなった。まるで、何かを受け入れたかのように。彼は、相変わらず「本当にあった怖い話」や「夏のホラー2018」の話をするけど、以前のような怖さを感じなくなった。
もしかしたら、Dは、あの神社で何かを理解したのかもしれない。
「見える」ということの重さと、その責任を。そして、「見える」ものだけが、全てではないということを。
夏の終わり、蝉の声は静かになり、秋の虫の声が聞こえ始めた。僕は、Dと一緒に夕暮れの雑木林を歩いた。おばあさんは、もうそこにいなかった。
Dは、何も言わなかった。ただ、静かに、僕の隣を歩いていた。そして、僕は、Dの言葉の奥に隠された、真の恐怖を、少しだけ理解した気がした。
「ねえ、D、あのさ…」
僕は、汗ばんだ手でペットボトルのキャップを回しながら、隣を歩くDに話しかけた。Dは、いわゆる「霊が見える」やつだ。正確には、霊視能力がある、と本人は言っている。
「なんだよ?」
Dは、いつもの無表情で答えた。彼は、いつも無表情で、何を考えているのかさっぱりわからない。それがまた、彼のミステリアスさを増している。
「あのさ、本当に霊が見えるの? 冗談じゃなくてさ」
正直、半信半疑だった。Dは、よく「怖い話」を語る。ネットで話題になった「本当にあった怖い話」とか、「夏のホラー2018」とか、「ネトコン13」の感想を交えながら、さも自分が体験したかのように話すのだ。最初は面白半分で聞いていたけど、彼の語る話は、妙にリアルで、ゾッとする部分もあった。
「見えるよ」
Dは、あっさり言った。そして、視線を遠くの雑木林に向けた。
「あそこに、いるよ」
僕は、Dの視線の先を見た。何もない。ただ、緑濃い雑木林が広がっているだけだ。
「……誰がいるの?」
「おばあさん。ずっとそこに立ってる。悲しい顔してる」
「おばあさん…?」
僕は、背筋が凍るような寒気を感じた。風が吹いたわけでもないのに、急に肌寒くなった。
「何でここにいるの?」
Dは、雑木林の方をじっと見つめながら、呟いた。
「…わからない。でも、ずっとここにいるみたい。誰かに話しかけたいみたいだけど、誰にも聞こえないみたい」
Dの話は、まるで映画のワンシーンみたいだった。実際、彼は霊能者とかそういうわけじゃない。普通の高校生だ。でも、彼の語る話、そして、彼の視線は、信じられないほどリアルだった。
その晩、僕はDから聞いた「おばあさんの話」をネットで調べた。しかし、その雑木林に関する情報は何も出てこなかった。「夏のホラー2018」で似たような話が話題になっていたことはあったが、具体的な場所については不明だった。
数日後、再びDと一緒に出かけた。今度は、Dが「見える」という場所、彼の家の近くの古い神社だった。
神社の境内は、静かで神聖な雰囲気に包まれていた。しかし、Dは、明らかに落ち着かない様子だった。
「…いる。たくさんいる」
Dは、震える声で言った。彼の顔色は、青ざめていた。
「誰がいるの?」
僕は、恐る恐る尋ねた。
「…子供たち。遊んでる…けど…」
Dは、言葉を詰まらせた。
「…けど、何?」
「…けど、みんな…死んでる…」
Dの言葉に、僕は恐怖を感じた。境内には、確かに、子供たちの声が聞こえた気がした。かくれんぼをしているような、楽しげな笑い声。しかし、その笑い声の裏に、何とも言えない悲しみを感じた。
「…見える、ということ…どういうことなんだろ…」
Dは、呟いた。彼の目は、空っぽだった。まるで、彼の内側には、想像を絶する恐怖が渦巻いているかのようだった。
「…もしかして、Dも、その子供たちと…?」
恐怖に慄きながら、僕はDに尋ねた。
Dは、何も答えなかった。ただ、静かに、境内を見つめていた。その視線の先には、僕には見えない何かが、確かに存在しているように感じた。
その日以来、Dは「見える」ことをそれほど気にしなくなった。まるで、何かを受け入れたかのように。彼は、相変わらず「本当にあった怖い話」や「夏のホラー2018」の話をするけど、以前のような怖さを感じなくなった。
もしかしたら、Dは、あの神社で何かを理解したのかもしれない。
「見える」ということの重さと、その責任を。そして、「見える」ものだけが、全てではないということを。
夏の終わり、蝉の声は静かになり、秋の虫の声が聞こえ始めた。僕は、Dと一緒に夕暮れの雑木林を歩いた。おばあさんは、もうそこにいなかった。
Dは、何も言わなかった。ただ、静かに、僕の隣を歩いていた。そして、僕は、Dの言葉の奥に隠された、真の恐怖を、少しだけ理解した気がした。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる