短くて怖い話1【短編集】

テタの工房

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蝉時雨の七不思議

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蝉の声が耳をつんざくような真夏の午後だった。アスファルトは照り返しで白く輝き、空には入道雲がモクモクと湧き上がっていた。俺は、高校時代の親友、健太と、いつものように近所の廃墟になった遊園地へと向かっていた。

あの遊園地は、俺たちにとって聖地みたいな場所だった。小学校の頃から秘密基地にして、近所の噂話や都市伝説を語り合ってきた。特に夏の時期は、蝉時雨と廃墟の不気味さが相まって、妙な高揚感があった。

「おい、今年の七不思議、知ってるか?」

健太が、錆びついた観覧車の支柱に寄りかかりながら言った。

「七不思議?何それ?」

俺は、首を傾げた。

「毎年、夏になるとこの遊園地で起こる、不可解な出来事のことだよ。地元の噂話だけどな」

健太は、得意げに説明を始めた。七不思議とは、

1.ジェットコースターの謎の動き
2.メリーゴーラウンドの不気味なメロディー
3.観覧車から見える白い影
4.噴水から聞こえる子供の泣き声
5.トイレから聞こえる女性の悲鳴
6.園内のどこからか聞こえる笑い声
7.夜になると現れる影の人形

というものらしい。どれもこれも、聞いただけで背筋がゾッとするようなものばかりだ。

「へぇー、怖いな…」

俺は、内心ビクビクしながらも、好奇心の方が勝っていた。

「今年は、どれか体験できるかな?」

健太は、悪戯っぽく笑った。

その日、私たちは七不思議を探し求めて遊園地内を探索した。ジェットコースターは確かに、微かに揺れていた。メリーゴーラウンドは、静止していたにも関わらず、かすかな音楽が聞こえた気がした。観覧車からは、確かに白い影のようなものが見えた。しかし、それは遠くの雲か、鳥だったのかもしれない。

噴水からは、確かに子供の泣き声が聞こえた。しかし、それは遠くの住宅街から聞こえてくる子供の泣き声だった可能性もあった。

トイレから聞こえる女性の悲鳴と園内から聞こえる笑い声は、結局聞くことは出来なかった。

日が暮れ始め、薄暗くなった遊園地は、さらに不気味さを増していた。七不思議の最後の謎、夜になると現れる影の人形を探すために、私たちは園内の奥深くへと進んでいった。

すると、廃墟となった売店の前に、影のようなものが立っているのが見えた。最初は、遠くに立っている木か何かだと思っていた。しかし、近づいてみると、それは明らかに人型の影だった。

影は、ゆっくりとこちらに近づいてくる。その姿は、はっきりととは見えないが、背筋が凍るような恐怖を感じた。

「なんだあれ…?」

健太は、震える声で言った。

影は、私たちのすぐそばまで近づいてきた。その時、影は、突然、消えた。

残されたのは、不気味な静寂だけだった。

その後、私たちは何も言わずに、遊園地を後にした。その日の出来事は、今でも鮮明に覚えている。

それから数年後、俺は偶然、その遊園地の七不思議について、地元の古老から話を聞く機会があった。

古老によると、七不思議は、かつてこの遊園地で起きた悲惨な事故の亡霊たちの仕業だという。ジェットコースターの事故、メリーゴーラウンドでの転落事故、観覧車からの転落死、噴水に落ちた子供、トイレで殺された女性、園内で殺された子供、そして園長が殺された後、遺体が人形のように処理されたというのだ。

古老の話によると、七不思議を体験した者は、いずれ不幸に見舞われるという。

俺は、その話を聞いて、背筋が凍った。あの日、私たちは七不思議のいくつかに遭遇していた。そして、その後の数年間、俺と健太は、それぞれに、様々な不幸に見舞われた。

健太は交通事故で亡くなった。

俺は、今でもあの夏の出来事を思い出し、ゾッとする。蝉時雨の七不思議は、決して忘れられない、俺たちの夏の思い出であり、同時に、恐ろしい悪夢でもあるのだ。あの日、影の人形が私たちに何かを伝えようとしていたのかもしれない。だが、私たちは、そのメッセージを受け取る事が出来なかった。そして、その代償は、あまりにも大きかった。  あの廃墟の遊園地は、今もなお、静かに、その悲劇を語り継いでいる。
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