異世界ファンタジーまとめ【短編集】

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王冠と婚約指輪と、あと少しの我慢

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オルフィーナはため息をついた。目の前には、王冠をかぶり、顔は真っ赤になっているルーベン国王と、婚約指輪をぎゅっと握りしめ、唇を尖らせているロレンツォ王子がいた。二人の喧嘩の原因は、いつものことながら、オルフィーナ自身だった。

「オルフィーナは俺のものだ!」ルーベン国王は、王冠を少し傾けながら、威勢のいい声を張り上げた。王冠は、彼の怒りのあまり、少し斜めに傾いて、いかにも不器用な王様を象徴していた。

「父上!オルフィーナは、私の婚約者です!」ロレンツォ王子は、婚約指輪をまるで武器のように掲げ、反論した。その指輪は、明らかに大きすぎて、彼の指からはみ出していた。

オルフィーナは、二人の間で板挟みになっていた。彼女はウルリク王国の宮廷女医、27歳。国王と王子、どちらも彼女を溺愛している、というより、執拗に求愛している、というのが正確な表現だろう。

「陛下、殿下…お二人とも、少し落ち着いてくださいませんか?」オルフィーナは、穏やかな声で訴えた。しかし、二人の熱は冷めるどころか、ますますヒートアップしていく。

「落ち着く?オルフィーナが俺の治療を受けている間、殿下は一体何をしていたんだ!」国王は、胸を張って叫んだ。オルフィーナは、確かに最近、国王の持病である偏頭痛の治療で忙しかった。その間、ロレンツォ王子は、ほぼ毎日、オルフィーナの部屋を訪ねてきていた。

「父上は、オルフィーナを自分の偏頭痛の薬のようにしか見ていません!オルフィーナは、私と未来を築くのです!」王子は、婚約指輪をさらに強く握り締め、怒りを露わにした。彼の婚約指輪は、いかにも安っぽい輝きを放っていた。

「未来?殿下は、オルフィーナに何をしてあげられるというのですか?俺は王だ!王の権力と富で、オルフィーナを幸せにできる!」国王は、王座から降り、オルフィーナに近づこうとした。

「父上!それは、オルフィーナを物のように扱っているだけです!」王子は、国王の前に立ちふさがった。二人の間には、まるで見えない壁ができていた。

オルフィーナは、二人の間をすり抜けて、静かに部屋を後にした。二人の争いは、もはや彼女の想像を超えていた。彼女は、自分の優秀な眼鏡をかけた部下、ギルバートに相談することにした。

ギルバートは、いつも冷静沈着で、どんな問題にも的確な解決策を提示してくれる、頼もしい存在だった。「ギルバート、国王と王子が…また喧嘩しているの」オルフィーナは、ため息をつきながら、状況を説明した。

ギルバートは、オルフィーナの話を静かに聞いて、それからゆっくりと口を開いた。「陛下と殿下は、どちらもオルフィーナ様に真剣です。しかし、その表現方法が、少々…子供っぽいです」

「子供っぽい…?」オルフィーナは、首を傾げた。

「はい。陛下は、王としての権力に頼りすぎ、殿下は、婚約指輪という形だけの約束に執着しすぎているのです。お二人は、オルフィーナ様の気持ちよりも、自分の気持ち、自分のプライドを優先しているのです」ギルバートは、冷静に分析した。

「では、どうすればいいのでしょう?」オルフィーナは、ギルバートの言葉に、少し希望を感じた。

「まず、お二人に、オルフィーナ様の気持ち、そして、王室以外の、より広い世界を見せてあげる必要があると思います。例えば…」ギルバートは、にやりと笑った。「村の収穫祭に、お二人を連れて行くのはいかがでしょうか?」

オルフィーナは、ギルバートの提案に目を輝かせた。それは、確かに、二人の子供っぽい争いを収める、良い方法かもしれない。

次の日、オルフィーナは、国王と王子を連れて、村の収穫祭に出かけた。そこで、二人は、王室とは全く違う、活気あふれる村の生活を目の当たりにした。

国王は、子供たちの笑顔に、普段見せないような優しい表情を見せ、王子は、農民たちと親しく交流し、普段とは違う一面を見せた。

そして、その日の夜、二人の間には、不思議な静寂が訪れた。これまで、互いに敵対していた二人だが、収穫祭で体験したことを通して、初めてお互いを理解し始めたのだ。

「オルフィーナ…」国王は、少し照れくさそうに言った。「俺は、君を、自分の所有物だなんて思ってない…」

「父上…」王子は、国王の言葉に驚き、同時に少し安堵した表情を見せた。「私も、オルフィーナを、ただの婚約者だなんて思ってなかった…」

オルフィーナは、二人の言葉に、涙がこぼれそうになった。二人の争いは、彼女を苦しめたが、同時に、二人の愛の深さを知らしめた。

そして、その夜、王冠と婚約指輪は、まるで二人の和解の証のように、静かに輝いていた。オルフィーナは、二人の間で、幸せな日々を過ごしていくことになった。少しばかり、ざまぁみろな気持ちも抱きつつ、しかし、それはすぐに、幸せな気持ちに変わっていった。  全ては、優秀な眼鏡部下、ギルバートの作戦通りだった。
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