異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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巫女補佐の穏やかな日々

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深紅の絨毯が敷かれた長い廊下を、私は踵を鳴らして歩いていた。今日の仕事は、精霊の加護を受ける聖水の調合。まあ、正確には、聖水を作る巫女さんの手伝い、つまり補佐だけどね。

私はミモレ。精霊の巫女候補…のはずだった。正確には、候補に選ばれたけど、巫女になる気はサラサラない。だって、前世の記憶があるんだもの。

前世の私は、乙女ゲーム『精霊の巫女と風の王国』にどっぷりハマっていたヘビーユーザー。そして、そのゲームの世界に、なんと転生してしまったのだ。プレイヤーキャラクターとして。

ゲームのシナリオはだいたい把握している。王太子様との甘いロマンス、ライバルとのドロドロした争い、そして、最終的には最強の精霊の巫女になって国を救う…壮大な物語だ。

だけど、前世の私は、乙女ゲーに向いていなかった。何度プレイしても、王太子様どころか、誰とも恋人になれなかった。いつも、精霊の巫女補佐エンドで終わっていた。

だから、今世は違う。巫女にはならない。補佐として、のんびり暮らす。それが私の目標だ。聖水作りも、精霊の世話も、意外と楽しい。特に、図書館で過ごす時間は最高だ。

図書館は、魔法の書物や古文書がぎっしり詰まった、私にとっての楽園。魔法の研究に没頭する時間は、乙女ゲームの恋愛煩悩を忘れさせてくれる貴重な時間だった。

ある日、いつものように図書館で魔法の書物をめくっていると、見慣れない男性がいた。濃い茶色の髪に、切れ長の優しい目。ゲームのキャラクターにはいない、全く新しい顔だった。

「…何かお探しですか?」と、彼が声をかけた。

「あ、いえ…特に…」と、私は慌てて本を閉じた。

「珍しい本を探しているのですか?もしかしたら、私がお手伝いできるかもしれません」

彼はにこやかに微笑んだ。その笑顔に、私は妙な安心感を感じた。

彼は、ライオネルと名乗った。古文書の研究をしている学者だそうだ。

それからというもの、ライオネルと図書館で会うようになった。彼は、魔法や歴史に関する知識が豊富で、私の魔法の研究にも協力してくれる。

ライオネルは、ゲームには登場しないNPC(ノンプレイヤーキャラクター)だった。彼は、この世界の歴史や文化を深く理解していて、私にとって最高の相談相手になってくれた。

「ミモレさん、今日はこの巻物の翻訳を手伝ってくれませんか?」

「もちろんです!」

ライオネルと一緒に過ごす時間は、いつも穏やかで、楽しかった。彼といると、前世で何度もプレイした乙女ゲームのストレスなんて、全く感じない。

聖水作りも、精霊のお世話も、ライオネルとの図書館での研究も、全てが私の日常になっていた。

王太子様とのロマンス?ライバルとの争い?そんなものは、私にとって全く必要ないものだった。

ある日、ライオネルが言った。「ミモレさん、あなたは、この国の宝です」

私は、照れくさそうに笑った。

「そんな大げさな…」

「本当にそう思います。あなたの明るさと優しさは、この国を明るく照らしています」

彼の言葉は、まるで魔法の呪文のように、私の心を温かく満たしてくれた。

乙女ゲームのプレイヤーキャラクターとして転生した私は、ゲームのシナリオ通りに生きることなく、自分らしい幸せを見つけ出した。

巫女補佐として、そして、ライオネルという大切な友人と出会い、穏やかな日々を過ごす。それが、私にとってのハッピーエンドだった。

ゲームのエンディングにはない、私のオリジナルのハッピーエンド。それが、今の私の人生だ。そして、これからも、この穏やかな日々を大切に、ライオネルと一緒に、この世界で生きていきたい。  精霊たちも、きっと喜んでくれているだろう。
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