異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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双子の呪縛と魔術師協会

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ビリーヴは、埃っぽい書類の山に埋もれながらため息をついた。解雇通知書は、まるで嘲笑うかのように机の上に鎮座している。

「双子の片割れしか愛せないなんて、ありえない!」

ビリーヴは、かつて勤めていた「レディ・ローズ・ハウス」という、いかにも怪しげな名前の老舗洋菓子店を思い出していた。そこは、双子の姉妹、マリサとリサが経営する店だった。リサは店の看板娘として可愛がられ、華やかな衣装を身につけ、常連客から溺愛されていた。一方、マリサは厨房でこき使われ、いつもボロボロの制服を着ていた。ビリーヴは、その不公平さに耐えかねて、何度も経営陣に訴えた。だが、経営陣は聞く耳を持たず、最終的にビリーヴは解雇されたのだ。

「あのままじゃ、マリサお嬢様、本当にかわいそう…」

ビリーヴは、マリサのことを心配していた。彼女は、リサと違い、控えめで優しい性格だった。常にリサの影に隠れて、自分の存在感を消しているようだった。リサはマリサをまるで人形のように扱っていた。

そんなマリサを救いたい。そう思ったビリーヴは、思い切って「魔術師協会」を訪れた。

協会の受付は、予想以上に普通のオフィスビルだった。受付嬢は、淡々とビリーヴの来訪目的を聞いた後、奥の部屋に通してくれた。

部屋には、年齢不詳の老紳士が一人座っていた。彼は、落ち着いた声でビリーヴの話を聞いた。

「レディ・ローズ・ハウス…ですか。あの家は、少々変わった家系ですね。噂では、代々、双子の姉妹が経営しているそうですが…」

老紳士は、少し考え込むと、口を開いた。

「リサ嬢は、強力な魅了の魔術の才能を持っているようですね。マリサ嬢は、その才能は劣るものの、繊細な魔力を感じます。おそらく、リサ嬢は、マリサ嬢の魔力を利用しているのでしょう」

ビリーヴは驚いた。まさか、魔術が関係しているとは。

「では、どうすればマリサお嬢様を助けられるのですか?」

「簡単ではありません。リサ嬢の魅了は強力です。直接対抗するのは危険です。…しかし、方法がないわけではありません」

老紳士は、不思議な箱を取り出した。中には、小さな人形が二つ入っていた。

「これは、魂の入れ替え人形です。この人形に、それぞれマリサ嬢とリサ嬢の髪の毛を埋め込み、呪文を唱えます。そうすれば、二人は一時的に魂を入れ替えることができます。リサ嬢は、マリサ嬢の立場を経験することで、彼女の苦しみを理解するでしょう」

ビリーヴは、その提案に戸惑った。魂の入れ替えなんて、まるで魔法の話のようだった。だが、マリサを救うためには、何かしなければならない。

ビリーヴは、レディ・ローズ・ハウスに忍び込み、マリサとリサの髪の毛を手に入れた。老紳士の指示通り、人形に髪の毛を埋め込み、呪文を唱えた。

すると、二人の人形が光り輝き始め、同時にマリサとリサは意識を失った。

数時間後、マリサとリサは目を覚ました。しかし、何かが違っていた。リサは、今までとは違う、どこか寂しげな表情をしていた。一方、マリサは、普段とは違い、堂々とした態度で周囲を見渡していた。

魂の入れ替えは成功していた。リサは、マリサとしての人生を経験し、彼女の苦しみを身をもって知ったのだ。

魂の入れ替えの効果は、一週間ほどで消えた。しかし、その一週間で、リサは大きく変わっていた。彼女は、マリサを今まで以上に優しく扱い、共に店を経営するようになった。

ビリーヴは、マリサとリサの仲が良くなったことを確認し、安堵の息をついた。

それから数年後、ビリーヴは、マリサとリサから結婚式の招待状を受け取った。招待状には、リサと、ある裕福な紳士との結婚が記されていた。しかし、ビリーヴは、その紳士の顔写真を見て、衝撃を受けた。その紳士は、魔術師協会の老紳士だったのだ。

ビリーヴは、全てを理解した。老紳士は、マリサとリサの姉妹関係を修復するだけでなく、リサを幸せにするために、偽装結婚という作戦を立てていたのだ。

ビリーヴは、複雑な気持ちを抱えながら、結婚式に出席した。それは、双子の呪縛を解き放ち、それぞれの幸せを掴んだ、奇妙な物語の終わりだった。そして、ビリーヴ自身も、その物語の一部となっていたのだ。
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