異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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鉄血の聖女と破滅の宴

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牢獄の鉄格子は、埃をかぶって鈍く光った。その向こう側、薄暗い部屋の隅で、リリアは膝を抱えて座っていた。彼女の白い肌は、牢獄の薄暗い光の中で、より一層青白く見えた。かつては聖なる光を放つと謳われた金色の髪は、今は乱れて、埃まみれだった。

彼女は、アストリア王国を救った聖女だった。疫病を奇跡的に鎮め、豊作をもたらした彼女を、アストリアはあっさり裏切った。恩を仇で返すとは、まさにこのことだった。

「……寒い……」

リリアは震える声を漏らした。粗末な粗布の着物は、寒さを凌ぐには全く役立たず、彼女の体は冷え切っていた。隣国の皇帝、カイウスは彼女を救い出したが、その方法が、アストリア王国の滅亡だった。

カイウスは、リリアの純粋な心に惹かれた。アストリアの王族たちの冷酷な裏切りを目の当たりにし、彼は怒りに燃えた。そして、リリアのため、アストリアを灰燼に帰した。

牢獄の鉄の扉が軋む音がした。看守が、鉄の食器を投げ入れた。その中には、腐りかけたパンと、水が入った汚れた壺が入っていた。リリアは、それを無言で受け取った。食欲など、とうの昔に失っていた。

「……あの、すみません……」

かすかな声が聞こえた。リリアは顔を上げると、鉄格子の向こう側に、若い男が立っていた。彼はアストリアの官吏、アルフレッドだった。かつては、リリアを崇拝していた者の一人だ。

「……私、あなたに会いたかったんです」

アルフレッドは、震える手で鉄格子を握った。彼の顔は、憔悴しきっていて、かつての威厳はどこにも見当たらなかった。

「……何を?」

リリアは、低い声で尋ねた。彼女の目は、空虚で、何も感じていないようだった。

「……謝りたかったんです。あの時、私は……あなたを止められなかった……」

アルフレッドは、涙を流しながら言った。彼の言葉は、本心からの後悔に満ちていた。

リリアは、何も言わなかった。ただ、彼の言葉を静かに聞いていた。

「アストリアは……間違っていました。あなたは、聖女でした。本当に……」

アルフレッドの言葉は、途切れた。彼は、カイウスの兵士たちに捕らえられ、アストリアの崩壊を目の当たりにした。その光景は、彼の人生を永遠に変えてしまった。

「……カイウス陛下は、あなたを愛しているんでしょうか?」

アルフレッドは、言葉を絞り出すように尋ねた。彼の目は、恐怖と不安で揺れていた。

リリアは、ゆっくりと首を横に振った。

「愛……ですか? 彼は、私を、まるで人形のように扱っているだけです。アストリアを滅ぼし、私を救い出したのは、彼の私利私欲のためでしょう。私の純粋な心など、どうでもいいことなのです」

リリアの言葉は、冷たく、鋭かった。彼女の瞳は、深い闇に飲み込まれようとしていた。

「……そんな……」

アルフレッドは、言葉を失った。彼は、カイウスの冷酷さを知らなかった。カイウスの行為は、リリアへの愛ではなく、単なる征服欲の表れだったのだ。

「……あの、あの時、私があなたに献上した、あの青い宝石……」

アルフレッドは、突然、思い出したように言った。「あれは、王家から盗んだものだったんです。あなたに、少しでも良いものを……と……でも、結局……」

アルフレッドは、言葉を続けられなかった。その宝石は、カイウスの怒りを買った証拠となった。

「……だから、私はここにいる」

リリアは、静かに言った。彼女の言葉は、まるで凍えるような氷のように冷たかった。

その夜、牢獄で奇妙な音が響いた。それは、アルフレッドの悲鳴だった。翌日、看守が牢獄の鉄格子の前で発見したのは、アルフレッドの血まみれの死体だった。彼の喉は、綺麗に切り裂かれていた。

リリアは、その光景を無表情で眺めていた。彼女の心には、もはや何も残っていなかった。カイウスの支配下で、彼女は、ただの、生きた人形に過ぎなかった。  アストリアの滅亡は、彼女にとって、救済ではなく、新たな牢獄の始まりだったのだ。彼女の未来は、闇に閉ざされていた。そして、その闇は、永遠に続くであろう。
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