異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
85 / 753

白雪の逆襲

しおりを挟む
凍えるような風が、雪を舞い上げていた。辺り一面、銀世界。その中に、小さな小屋がひっそりと佇んでいた。煙突からは、白い煙がくねくねと空に昇っていく。この小屋こそ、悪名高き魔女、グレテルの住処だった。

白雪姫。そう、あの毒リンゴで意識不明の重体になった、あの白雪姫が、自らこの小屋にたどり着いたのだ。彼女は、凛とした表情で、凍りついた地面を踏みしめていた。手に握られているのは、小さな、しかし鋭いナイフ。その刃は、月の光を反射して、冷たく光っていた。

小屋の扉は、簡単な木の板で出来ていて、簡単に開いた。中は、想像以上に狭かった。壁には、乾いたハーブや奇妙な根っこが吊るされ、空気を重苦しくしていた。そして、中央には、大きな釜が置かれていた。その中では、何かがぐつぐつと煮込まれていた。

「グレテル!」白雪姫の声は、寒さで少し震えていたが、力強かった。

「あら、白雪姫じゃないの。まさか、こんな所に来るなんてね」

釜の傍らから、老婆が現れた。グレテルだ。彼女は、予想以上に若々しく、顔には、悪意というより、いたずらっぽい笑みが浮かんでいた。

「私の体に何がされたのか、説明しろ!」白雪姫は、ナイフをさらに強く握り締めた。

「あらあら、そんなに怒らないで。ただの、少し変わったリンゴだったのよ。眠るための、魔法のリンゴね」グレテルは、肩をすくめた。

「魔法のリンゴ?眠るため?私は、殺されかけたのよ!」白雪姫の怒りは、頂点に達していた。

「殺すつもりはなかったわよ。ただ、少し、計算ミスね。魔法の配合が、少しだけ、間違っていたの」グレテルは、悪びれる素振りもなく言った。

白雪姫は、グレテルの言葉に、一瞬、戸惑った。殺すつもりはなかった?本当に?しかし、あの時感じた、冷たさと、意識が遠のいていく感覚は、紛れもなく、死の淵だった。

「その魔法の配合を教えて。そして、解毒剤を作る方法も」白雪姫は、冷静さを保とうと努めた。怒りを抑え、冷静に、目的を達成するために。

グレテルは、くすくすと笑った。「ふふふ、そう簡単には教えられないわよ。あなた、私の魔法のリンゴのレシピを盗んで、世界中にばら撒こうってつもり?そんなことしたら、私の商売あがったりよ」

「私は、ただ、自分の命を取り戻したいだけだ」白雪姫は、ナイフをテーブルに置いた。「あなたに害は加えない。必要なのは、情報だけだ。」

グレテルは、しばらく白雪姫を見ていた。そして、ゆっくりと頷いた。「わかったわ。あなたの真剣さ、伝わったわ」

グレテルは、古い魔法の書を取り出した。その書には、様々な魔法のレシピが記されていた。そして、その中に、毒リンゴの作り方、そして、解毒剤の作り方が書かれていた。

「見ての通り、材料は、ごく普通のリンゴと、数種類のハーブと、そして、この特別な粉」グレテルは、小さな瓶を差し出した。「この粉が、眠りをもたらす、そして、間違えると死をもたらす魔法の粉よ。ほんの少しの分量の差で、結果は大きく変わるの」

白雪姫は、魔法の書と瓶を手に取った。それは、彼女の命をかけた戦いへの、新たな武器となるだろう。

「ありがとう」白雪姫は、そう言って、小屋を後にした。雪は、相変わらず激しく舞い落ちていたが、彼女の心には、希望の光が灯っていた。

しかし、白雪姫は、グレテルの言葉に隠された罠に気づいていなかった。グレテルは、解毒剤のレシピに、わずかな間違いを忍び込ませていたのだ。それは、白雪姫が解毒剤を作ったとしても、完全に解毒できない程度の、小さな間違い。

白雪姫は、解毒剤を作り、それを飲んだ。しかし、完全に回復することはなかった。彼女は、永遠に、少しだけ、眠りに落ちる体になったのだ。

グレテルは、遠くから、その様子を見ていた。そして、小さく笑った。「これで、あなたも、私の顧客よ」

雪は、静かに降り続いた。白雪姫の新たな物語は、これから始まる。それは、復讐ではなく、新たな呪縛の始まりだった。そして、その呪縛は、永遠に続くのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...