異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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鉄血の反逆者たち

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冷たい雨が、荒れ果てた戦場をさらに冷たく染めていた。血の匂いと土の匂いが混ざり合った、吐き気を催すような臭気が、海の鼻を突いた。彼女は、わずかに残った意識の中で、その光景を焼き付けようとしていた。

海は、紅夜と深白の妹だった。兄妹三人、反乱軍「鉄血の牙」で育ち、戦ってきた。紅夜は、燃えるような赤髪と、それに劣らず激しい気性を持つ、鉄血の牙の副長。深白は、銀髪が風になびく、冷静沈着な剣士。そして海は、二人が守る、影のような存在だった。

鉄血の牙は、巨大な王国、アストリアに対する反乱軍だった。アストリアは、民衆から搾取を重ね、重税によって国民を苦しめていた。しかし、王国軍は圧倒的な力を持っていた。誰もが、抵抗を諦めていた。そんな中で、わずかな希望を胸に立ち上がったのが、鉄血の牙だった。今では、王国で二番目に大きな勢力にまで成長していた。

海は、幼い頃から戦場を見てきた。兄妹の背中を追いかけるように、刀を握り、銃を撃ち、生き延びてきた。紅夜と深白の愛情は、海にとって、この残酷な世界で唯一の温もりだった。紅夜からは、兄としての愛情と、時に厳しさ。深白からは、静かな優しさと思いやり。その温もりは、海を支え、戦い続ける力を与えてくれた。

しかし、その温もりは、長くは続かなかった。

運命の日は、血染めの嵐となって訪れた。鉄血の牙と王国軍の、最後の決戦。

凄まじい殺戮の渦の中で、海は、紅夜と深白の姿を探した。しかし、どこを探しても見つからない。彼女は、必死に戦い続けた。仲間を守り、生き延びるためだけに。

その最中、彼女は、信じられない光景を目撃した。紅夜が、深白の胸に剣を突き立てている。深白の瞳は、驚きと悲しみに満ちていた。そして、ゆっくりと、閉じた。

紅夜は、海の方を向いた。彼の顔は、血で汚れ、涙で濡れていた。しかし、その瞳には、狂気が宿っていた。

「海…許してくれ…」

紅夜の声は、かすれていた。まるで、魂が抜けたかのような声だった。

海は、何も言えなかった。ただ、呆然と、紅夜を見つめた。

その瞬間、王国軍の兵士が、紅夜に襲いかかった。紅夜は、抵抗することもなく、兵士たちに切り刻まれた。

海の視界は、真っ赤に染まった。血の海に、紅夜と深白の死体が浮かんでいる。

彼女は、兄弟を失った。そして、反乱軍も壊滅した。

鉄血の牙は、散り散りになった。希望は、絶望へと変わった。

雨は、止む気配を見せなかった。冷たい雨が、海の頬を伝った。それは、涙なのか、雨なのか、分からなかった。

彼女は、一人、生き残った。しかし、その生き残りは、喜びではなく、絶望の始まりだった。

紅夜と深白の死の真相は、未だに謎のままである。裏切りがあったのか、それとも、別の理由があったのか。海は、その真相を知ることはなかった。

ただ、彼女は、紅夜と深白の墓の前に立ち、静かに祈るだけだった。

冷たい風の中で、彼女は、二人に誓った。

「必ず、復讐する…」と。


それから何年も後、海は、一人、影のように生きていた。彼女は、鉄血の牙の生き残りたちを探し出し、新たな反乱軍を組織した。それは、兄妹の仇を討つため、そして、アストリアの暴政を終わらせるためだった。

彼女は、紅夜と深白の遺志を継ぎ、暗闇の中で戦い続けた。復讐の炎は、彼女の心を焼き続け、彼女を、鉄血の女王へと変えていった。


しかし、その復讐は、彼女に何をもたらすのだろうか。幸せか、それとも、さらに深い絶望か。それは、まだ、誰も知らない。海の戦いは、まだ終わっていなかった。
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