異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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白き棘の聖痕

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雨は、まるで涙のように、容赦なくアスファルトを濡らしていた。  リリアは、教会の窓際に腰掛け、その冷たい雨粒をぼんやりと眺めていた。  彼女の白いローブは、雨の灰色の世界の中で、ひときわ目立っていた。

リリアは、聖女と呼ばれていた。  村人たちは、彼女の純粋な心と、病を癒す奇跡的な力に、深い信仰を抱いていた。  しかし、リリアの心は、今、深い闇に染まり始めていた。

その原因は、アルフレッドだった。  アルフレッドは、村の英雄、勇猛果敢な騎士。  リリアは、幼い頃から彼を愛していた。  彼の勇気、優しさ、そして、輝くような笑顔に、心を奪われていた。

しかし、アルフレッドは、リリアの気持ちには気づいていなかった。  いや、正確には、気づいていたのかもしれない。  けれど、彼は、リリアの純粋な愛情を、まるで空気のように、何も感じないままに過ごしていた。

アルフレッドは、人気者だった。  村の娘たちは、皆、彼に夢中だった。  その度に、リリアの胸は、鋭い棘で突き刺されるような痛みを感じた。  アルフレッドは、誰に対しても優しく、笑顔を向けていた。  それは、リリアだけに向けられたものではなかった。

ある日、村の祭りで、アルフレッドは、村一番の美少女、セリアと踊っていた。  セリアは、華やかなドレスを着て、アルフレッドに寄り添い、幸せそうに笑っていた。  その光景を、リリアは教会の鐘楼から見ていた。  雨の夜、教会の鐘楼からの景色は、普段とは違って、全てが歪んで見えた。

リリアの心は、氷のように冷え切った。  今まで温めていた、アルフレッドへの愛情は、憎しみに変わっていった。  純粋だった彼女の心は、歪み、黒ずんでいった。  聖女の白いローブは、まるで汚れた布きれのように、彼女の心を映し出していた。

それからというもの、リリアは変わってしまった。  彼女は、以前のように、村人たちを優しく癒すことはなくなった。  彼女の祈りは、もはや、神へのものではなかった。  それは、アルフレッドへの呪いの言葉、そして、セリアへの復讐の念で満たされていた。

リリアは、闇の魔法を学び始めた。  それは、危険で、禁断の力だった。  しかし、リリアには、もはや、失うものは何もなかった。  彼女は、アルフレッドの愛を手に入れるため、どんな犠牲も払う覚悟だった。

闇の力は、リリアを蝕んでいった。  彼女の目は、黒く光り、肌は、青白い色に変わっていった。  白いローブは、いつしか、黒く染まっていた。  聖女は、もはや、聖女ではなかった。

ある夜、リリアは、アルフレッドとセリアの前に現れた。  彼女の顔には、歪んだ笑顔が浮かんでいた。  闇の力は、彼女に、恐ろしい力を与えていた。  リリアは、アルフレッドとセリアを、闇の魔力に包み込んだ。

アルフレッドとセリアは、必死に抵抗したが、リリアの力は、あまりにも強大だった。  彼らの体は、黒く変色し、苦しみにもがいていた。  リリアは、彼らを操り、村を破壊し始めた。

村は、火の海と化した。  人々は、逃げ惑い、悲鳴を上げていた。  リリアは、その光景を、冷酷な目で眺めていた。  彼女の心には、もはや、何の感情もなかった。  ただ、闇だけが、彼女の心を満たしていた。

しかし、リリアの暴走は、長くは続かなかった。  村の古老、賢者エルドが、リリアの前に立ち塞がった。  エルドは、古の魔法で、リリアの闇の力を封じ込めた。

リリアは、力を失い、地面に倒れ込んだ。  彼女の体は、弱り果てていた。  彼女は、自分のしたことを、後悔していたのだろうか。  それとも、ただ、空虚な気持ちだったのだろうか。

雨は、まだ降り続いていた。  リリアの白いローブは、泥に染まり、黒く汚れていた。  彼女の聖痕は、白く、そして、冷たかった。  それは、失われた純粋さの象徴であり、永遠に消えることのない、彼女の罪の証だった。  雨は、彼女の罪を洗い流すことはなかった。
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