異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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王宮の棘と茨の令嬢

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エディスは、ボロボロの絹のドレスの裾を直しつつ、ため息をついた。水害で没落した子爵家の令嬢として、王子の誕生会に出席せねばならないのだ。母の形見のドレスは、何度か繕ってはいるものの、もはや限界だった。それでも、このパーティーは、王族の婚約者候補を選ぶ場だと噂されており、子爵家の再興の糸口になるかもしれない。

会場は華やかだった。きらびやかなドレスに身を包んだ令嬢たちが、王子たちを取り囲んでいた。エディスは隅でひっそりと佇み、賑やかな会話の波をかき分けるように、シャンパンを一口飲んだ。すると、噂どおり、すでに二人の王子には婚約者がいることが判明した。

がっかりしたエディスは、庭園へと逃げ出した。生い茂るバラの棘が、彼女の心を映すように鋭く突き刺さる。その時、バラの茂みから、小さな影が動いた。

「誰だ!」

エディスは声を上げた。影は、慌てて顔を上げた。それは、驚くほど美しい金色の髪を持つ少年だった。彼は、慌てふためきながら、何かを隠そうとしていた。

「……カーティス王子?」

エディスは、その少年が、今日の誕生会の主役の一人である、カーティス王子だと認識した。彼は、婚約者選びに全く乗り気ではない、生意気な王子として有名だった。

「一体何を隠しているんです?!」

エディスは、つい口うるさく彼を叱りつけた。「王子様とはいえ、こんなところで隠れていたら、不審者と間違われますよ!責任感の欠如は、王族として失格です!」

カーティス王子は、エディスの予想外の叱責に、言葉を失った。普段は誰にも逆らわない彼が、エディスの前にだけ、素直に弱音を吐いた。

「……婚約、したくないんだ」

カーティスは、小さく呟いた。エディスは、彼の言葉に驚きながらも、彼の苦悩が本物だと理解した。

その後、エディスの予想外の行動が起きた。彼女は、王宮の侍女の職を得て、なんとカーティス王子が住む第一王妃宮に配属されたのだ。これは、エディスの賢明な判断と、彼女の王室に対する鋭い観察眼、そして何より、カーティス王子自身の強い希望によるものだった。

王宮での生活は、想像以上に過酷だった。厳格な規則、陰湿な陰謀、そして、権力争いに巻き込まれる危険性。しかし、エディスは、自分の立場を理解した上で、毅然とした態度を崩さなかった。彼女は、カーティス王子に、時に厳しく、時に優しく接した。

「王子様、もう少し責任感を持ってください。あなたの行動は、国民に大きな影響を与えます」

「あのね、エディス。君が言うことは、いつも正論だけど、息が詰まるんだ」

二人は、時に衝突しながらも、次第に信頼関係を築いていった。エディスの鋭い言葉は、カーティスの甘さを戒め、彼の素直な心は、エディスの心を温かくした。

ある日、カーティスは、エディスに婚約破棄の計画を打ち明けた。それは、王族と貴族の思惑が絡み合った、複雑で危険な計画だった。エディスは、彼の計画に賛同する一方で、その危険性を指摘し、様々なアドバイスを送った。

計画実行当日、予期せぬ事態が発生した。王宮内部からの裏切り、そして、カーティスの婚約者からの激しい抵抗。エディスは、自分の知恵と勇気、そして、カーティスの意外な行動力で、困難を乗り越えていく。

激しい攻防の中、エディスは、カーティスを庇い、致命傷を負ってしまう。瀕死のエディスを前に、カーティスは初めて、彼女への本当の愛情を自覚した。

「エディス…君が…僕を…救ってくれた…」

カーティスは、エディスの頬に涙を流した。エディスの意識は、徐々に遠ざかっていく。

「…バカな王子様… もっと…賢くなって…」

エディスの最後の言葉は、カーティスの心に深く刻まれた。カーティスは、エディスの言葉通り、賢く、そして、強い王として成長していく。そして、エディスへの想いを胸に、王宮の棘と茨を乗り越えていくのだった。


数ヶ月後、王宮の庭園には、綺麗に手入れされたバラが咲き誇っていた。そのバラの苗は、エディスが最後に植えたものだった。カーティスは、そのバラを眺めながら、エディスのことを静かに偲んだ。彼の心には、エディスの鋭い言葉と、温かい笑顔が、永遠に生き続けていた。
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