異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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星影の消滅

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雨音だけが、薄暗い部屋に響いていた。窓の外は、まるで世界が終わるような、激しい雨だった。

私はベッドに横たわり、天井を見上げていた。天井のシミが、まるで宇宙の星雲のように見えた。綺麗だな、と思った。こんな綺麗なものを見ていると、少しだけ心が落ち着く。でも、すぐに不安が押し寄せてくる。

だって、私はもうすぐ死ぬんだ。

医者は言った。「手術をしなければ、あと3ヶ月です。」

3ヶ月後、私はこの世から消える。消え去る。跡形もなく。

手術代は、莫大な金額だった。私の両親は、そんなお金を出してくれるわけがない。むしろ、私が死んだ方が都合がいいだろう。

両親は、私を愛したことがない。少なくとも、私が感じる「愛」という感情とは、全く違うものだった。

彼らは私を、金づるとしてしか見ていなかった。婚約者の王子様との結婚。それが、彼らが私を育ててきた唯一の理由だった。

王子様……アルフレッド。彼は優しい人だった。私を優しく抱きしめてくれるし、私の好きな花をプレゼントしてくれる。でも、彼の優しさは、私にとって、まるで遠い星のように感じられた。届かない、手の届かない、そんな感覚。

だって、私は彼を愛していない。彼を愛する資格がない。私は、ただ、彼に利用されているだけだ。彼の王位継承に都合の良い、飾り物として。

私の存在価値なんて、ないに等しい。

だから、私は手術を受けないことに決めた。

3ヶ月後。私は死んで、この世界から消える。

でも、少しだけ、希望があった。

この世界には、魔法が存在する。

ある日、森の中で出会った老人は、私に魔法を教えた。それは、小さな、微弱な魔法だった。枯れた花を咲かせたり、小さな鳥を操ったり、そんな程度のもの。でも、私にとっては、大きな希望だった。

私は、その魔法を使って、少しでも多くの人に、私の存在を知ってもらおうと思った。

小さな魔法で、人々を笑顔にしたり、困っている人を助けたり。

それは、まるで、消えゆく星が、最後の力を振り絞って光を放つようなものだった。

私は、自分の存在を証明したかった。誰かに、必要とされたかった。愛されたかった。

たった一度でいい。誰かに、私の名前を呼んで欲しかった。

「レイラ……」

誰かが、私の名前を呼んでくれたら、どんなに幸せだろう。

でも、それは叶わなかった。

3ヶ月後、私は静かに息を引き取った。

誰も私の死を悲しまなかった。

両親は、すぐに次の金づるを探し始めた。アルフレッドは、悲しんでいるふりをしながら、新しい花嫁を探し始めた。

私の死は、まるで、小さな波紋のように、すぐに消えていった。

でも、私は後悔していない。

私は、最後の力を振り絞って、この世界に、私の存在を刻み込んだ。

たとえ、誰にも気づかれなくても。

たとえ、すぐに消えてしまっても。

私は、生きていた。

そして、私は、私の存在を証明した。

雨は、まだ降り続いていた。

窓の外には、星が見えなかった。

でも、私は知っていた。

私の魂は、星になったんだと。

小さな、微弱な光を放つ、星になったんだと。

いつか、誰かが、その光を見つけてくれるかもしれない。

そう願って、私は、静かに眠りについた。


数十年後、王国の図書館で、一冊の古ぼけた本が発見された。それは、レイラという少女が書き残した日記だった。

その日記には、レイラの苦悩、そして、彼女が人知れず行った小さな魔法の記録が残されていた。

日記を読んだ司書は、静かに涙を流した。

レイラの魂は、星になったのかもしれない。

小さな、微弱な光を放つ、星。

そして、その光は、いつの日か、誰かの心に届くかもしれない。
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