異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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悪魔と令嬢の婚約破棄騒動

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真夜中の森は、月の光を浴びて不気味に輝いていた。アイリーンは、心臓が胸から飛び出さんばかりにドキドキしながら、古びた教会の扉をそっと開けた。

十年。十年間、彼女は第3王子、レオンとの婚約者として、耐え忍んできた。レオンは、優しくて気さくで、まるで王子様そのものだった。少なくとも、そう見せかけていた。

実際は、遊び好きで、女性遍歴は凄まじく、婚約者であるアイリーンを完全に無視していた。そして、ついに、アイリーンの我慢の限界を超える事件が起こった。レオンは、留学先への同行者として、婚約者であるアイリーンではなく、最近できたばかりの浮気相手を選んだのだ。

「許せない!」

アイリーンは、怒りで震える手で、古教会の奥にある魔法陣に手を伸ばした。これは、彼女が子供の頃、好奇心から読んだ古文書に書かれていた、悪魔召喚の儀式だった。

「出でよ!悪魔!」

彼女の叫び声とともに、教会全体が揺れ、凄まじい風が吹き荒れた。そして、魔法陣の中央から、眩い光が放たれた。

光が収まると、そこに立っていたのは、想像をはるかに超える美しさの悪魔だった。漆黒の羽根、銀色の髪、そして、吸い込まれそうな赤い瞳。まるで絵画から飛び出してきたかのようだった。

「何を望む?」

悪魔は、低く、磁石のような声で尋ねた。アイリーンは、一瞬、言葉を失った。しかし、すぐに、怒りが込み上げてきた。

「あの女を…あの、レオンの浮気相手を、何とかしてください!」

アイリーンは、堰を切ったように、レオンの悪行を、浮気相手の嫌らしいところを、そして、十年間抱え込んできた不満を、全て悪魔に吐き出した。

彼女は、レオンの冷たさ、宮廷の陰湿な噂、そして、自分の無力さについて、泣きながら、まくし立てた。

全てを話し終えた時、アイリーンは、少し冷静になっていた。

「もしかして…これって、悪魔を呼び出すほどのことじゃなかった…?」

彼女は、自分の行動に、少し後悔し始めた。

「まずい…魂を取られてしまうわ!」

一方、悪魔の方も、かなり困惑していた。彼は、何千年も生きてきたが、こんなくだらない理由で召喚されたのは初めてだった。

「…まさか、婚約破棄の相談ですか?」

悪魔は、呆れたように尋ねた。

「ええ…でも、あの女は許せないんです!」

アイリーンは、再び泣き出した。

悪魔は、しばらくアイリーンを見ていた。そして、ふっと笑った。

「面白いですね。では、お嬢様の依頼、引き受けましょう」

悪魔は、予想外の提案をした。アイリーンは、驚いて目を丸くした。

「え?本当に…?」

「しかし、代償は必要です。私の言うことを、必ず聞いてください」

こうして、残念令嬢アイリーンと、気まぐれな悪魔の奇妙な契約が始まった。悪魔は、アイリーンの要求通り、レオンと浮気相手を別れさせ、さらには、宮廷の陰謀を暴き、アイリーンを窮地から救っていく。

その過程で、アイリーンは、悪魔の意外な優しさや、真面目な一面に触れ、彼に惹かれていく。

一方、悪魔もまた、アイリーンの純粋さや、強い意志に惹かれ、彼女を助けることに、真の喜びを見出すようになっていった。

最初は、婚約破棄という些細な理由で召喚された悪魔だったが、二人の関係は、予想もしないほどに深まっていった。そして、物語の終幕は、予想外のハッピーエンドで幕を閉じ、二人の幸せな未来が描かれた。


貴族社会の陰謀や、レオンの企みなど、シリアスな要素も含まれていたが、アイリーンと悪魔のコミカルなやり取りや、二人の間の芽生える恋心が、物語全体を明るく彩っていた。  彼らの恋物語は、魔法と陰謀、そして、ちょっぴり残念な令嬢と、ちょっと変わった悪魔の、予想外のラブコメディだったのだ。
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