異世界ファンタジーまとめ【短編集】

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魔物の晩餐と狂血公爵

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メルフィエラは、キラキラと輝くシャンデリアの下で、一人、ワインをチビチビと飲んでいた。周りの令嬢たちは、優雅に笑みを浮かべ、次々とやってくる男性たちと会話に花を咲かせている。しかし、メルフィエラには、そんな気力もなかった。

三年前の社交界デビュー以来、彼女は「魔物好き」という、少し変わった趣味のせいで、婚約者どころか、まともな会話相手にも恵まれていなかった。「魔物」といっても、ぬいぐるみや絵画を集めているだけなのに、噂はどんどん膨れ上がり、「血に飢えた怪物と交際している」なんて、とんでもない話まで飛び交っていた。

そんなメルフィエラに、追い打ちをかけるように、父親の後妻からの宣告が下った。「一年以内に婚約者を見つけなければ、修道院へ入れる」。修道院……想像するだけで、メルフィエラはゾッとした。

そのため、仕方なく、この秋の遊宴会にやってきたのだ。しかし、華やかな雰囲気とは裏腹に、メルフィエラの心は沈んでいた。

その時、悲鳴が上がった。

会場の入口付近で、何やら騒ぎが起こっている。恐る恐る近づいてみると、巨大な蜘蛛のような魔獣が、人々を襲っていた。その魔獣は、全身が毒々しい緑色に輝き、鋭い牙をむき出しにしている。メルフィエラは、恐怖で体が硬直した。

逃げようとしたその時、背後から鋭い風が吹き抜けた。振り返ると、血まみれの男が、魔獣に斬りかかっていた。その男は、驚くほど速く、そして正確に、魔獣の弱点に剣を突き立てた。あっという間に、魔獣は絶命した。

男は、血で染まった剣を地面に突き刺し、不敵な笑みを浮かべた。その顔は、どこか見覚えがあるような気がした。

「大丈夫か?」

男の声は、低く、磁石のように人を惹きつける魅力があった。メルフィエラは、言葉を失ったまま、男を見つめていた。

男は、ゆっくりと近づいてきて、メルフィエラの肩に手を置いた。その手は、冷たく、そして驚くほど強かった。

「ガルブレイス公爵……?」

メルフィエラの呟きに、男は大きく笑った。

「そうだよ。噂通り、俺は血まみれだ。だが、君も悪くないな。魔物に怯えていないなんて。」

ガルブレイス公爵。その名は、メルフィエラも知っていた。冷酷非情で、魔獣を次々と討伐する、伝説の公爵。しかし、こんなにも近くで見たのは初めてだった。

「あの、ありがとうございます……」。メルフィエラの言葉は、震えていた。

「礼はいい。だが、君に興味を持った。魔物に怯えないどころか……むしろ、楽しんでいるようだな?」

ガルブレイス公爵は、メルフィエラの趣味のことを知っていたらしい。そして、驚くべき発言をした。

「実はな、私も魔物が好きなんだ。特に、食することがね。」

メルフィエラの目は、大きく見開かれた。公爵は、魔物を食べるというのだ。

「まさか……そんな……」

「驚いたか?だが、本気だ。魔物は、栄養価が高く、美味いんだ。特に、この地方の魔獣は、珍しいスパイスの味がするぞ。」

公爵は、楽しそうに語り始めた。そして、メルフィエラがコレクションしている魔物の図鑑を見せ、それぞれの魔物の調理法について熱心に語り始めた。

メルフィエラは、最初は驚いていたが、徐々に公爵の話に引き込まれていった。公爵の知識は深く、その情熱は本物だった。

そして、公爵は、衝撃的な提案をした。「君と結婚しよう。領民のために、一緒に魔物を美味しく食べる方法を研究しよう。」

メルフィエラは、言葉を失った。まさか、こんな展開になるとは思ってもいなかった。

「……騙されているんでしょうか?」

「騙しじゃない。本気だ。君が、俺の婚約者になってくれれば、この領地の魔物問題は、解決できる。そして、一緒に美味しい料理を研究できる。」

公爵は、メルフィエラの頭を優しく撫でた。その温もりは、メルフィエラを安心させた。

「……わかりました。結婚します。」

メルフィエラは、静かに答えた。

それからというもの、メルフィエラの生活は一変した。公爵は、メルフィエラを溺愛し、彼女の趣味を理解し、サポートしてくれた。二人は、領地の魔物退治と、新しい魔物料理の開発に励んだ。

メルフィエラの「魔物好き」は、もはや恥ずかしいものではなかった。それは、公爵との愛を育み、領民を幸せにする、大切な趣味になったのだ。そして、メルフィエラは、修道院に行くどころか、想像をはるかに超える幸せを手に入れたのだった。
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