異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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婚約破棄は、私の手で。

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アンジェリカは、息を呑んだ。目の前にいるのは、婚約者であるレオン。伯爵家の御曹司で、噂では「完璧な貴公子」と謳われている人物だ。しかし、アンジェリカは彼の顔を見た瞬間、心臓が凍り付くような感覚に襲われた。

前世の記憶が、鮮やかに蘇ったのだ。

彼女は、乙女ゲーム『七色の誓約』のヘビーユーザーだった。そして今、この世界は、まさにそのゲームの世界。そしてレオンは……ゲーム内で、ヒロインを監禁し、狂気に染まる「ヤンデレ」攻略対象者だったのだ。

二次元ならまだしも、リアルでそんな目に遭うわけにはいかない。アンジェリカは、冷酷な笑みを浮かべた。

「レオン様、本日はお会いできて光栄です」

彼女は、完璧に演じきる。上品な笑顔の裏に隠されたのは、冷徹な計算だった。

「……しかし、婚約は破棄させていただきます」

レオンの瞳孔が、わずかに震えた。予想外の言葉に、彼は戸惑いを隠せない様子だ。

「何…だと?」

「ええ。レオン様は、完璧な方でしょう。しかし、私には、あなたにはない魅力を持つ、素晴らしい方がいるのです」

アンジェリカは、まるで演劇をするかのように、わざとらしく胸を痛める仕草を見せた。

「私、…実は、他の男性を愛しているのです…」

さらに、わざとらしく涙を浮かべ、ハンカチで目元を覆う。

「…許してください」

レオンは、完全に言葉を失っていた。完璧な貴公子は、予想外の展開に動揺を隠せない。アンジェリカの作戦は、完璧に進んでいるかに見えた。

しかし、レオンの反応は、ゲームとは全く違った。彼は、沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。

「…ふむ。ならば、その方と、幸せになってください」

あっさりとした返事に、アンジェリカは驚きを隠せない。

「…え?」

「貴女が幸せになるなら、それで良い。私は、貴女の幸せを願っているのだ」

レオンは、優しい笑顔を見せた。まるで、ゲームの中の冷酷なヤンデレとは別人だった。

アンジェリカは、混乱した。彼女の作戦は完全に失敗したのだ。

その後、レオンはアンジェリカに、領地改革の計画書を提出してきた。驚くほど現実的で、効率的な計画だった。彼は、ゲームの中の冷酷なヤンデレとは程遠く、有能な領主として振る舞っていた。

アンジェリカは、レオンの真の姿を知るにつれ、彼への感情が変化していくのを感じた。

彼の優しさ、誠実さ、そして驚くほどの知性。ゲームの中のレオンとは、全くの別人だった。

アンジェリカは、レオンの計画書を何度も読み返した。その緻密さ、そして人々の生活を真剣に考える彼の姿勢に、心打たれた。

「…もしかして、彼は、ゲームと違って…」

アンジェリカは、彼がゲームのキャラクターではない、一人の人間なのだと悟った。

彼女は、彼への誤解を深く反省した。そして、自分の傲慢さに気づいた。

レオンは、アンジェリカの婚約破棄の申し出を、あっさりと受け入れた。しかし、彼の態度は、決して冷淡ではなかった。

彼は、彼女を常に気遣い、優しく接してくれた。アンジェリカは、彼の優しさに触れ、自分の浅はかな考えを恥じた。

「レオン様…私は…」

アンジェリカは、レオンに改めて謝罪した。そして、彼の真の姿を知り、彼への恋心を自覚した。

レオンは、アンジェリカの言葉に優しく微笑んだ。

「貴女の気持ち、よく分かりました。…ならば、もう一度、最初からやり直しましょう」

レオンの言葉に、アンジェリカは涙を流した。婚約破棄は、彼女の手で。しかし、それは、新たな恋の始まりでもあったのだ。

ゲームの知識は、彼女を誤った方向へ導いた。しかし、その誤解は、真の愛を育むきっかけとなった。アンジェリカは、レオンと、真の幸せを掴むことを誓った。

そして、二人は領地改革に力を注ぎ、人々の生活を豊かにしようと努力した。アンジェリカは、レオンと共に、幸せな未来を築き上げていく。かつてのヤンデレ攻略対象者は、今では、彼女にとってかけがえのない存在となったのだ。
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