異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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運命のベール

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真白なウェディングドレスに憧れるどころか、むしろウェディングドレスの山に埋もれて暮らしているようなものだった。  私は、ブライダルプランナーの葵(あおい)だ。キラキラした世界とは程遠い、毎日書類と格闘し、花嫁の希望と予算の狭間で頭を悩ませている。私の結婚式?  そんなもの、想像もつかない。仕事が楽しくて、それだけで十分なんだ。と、自分に言い聞かせていた。

ある日、いつものようにデスクに山積みの資料とにらめっこしていると、新しい予約が入ったという連絡があった。担当者は、新郎の代理人だと名乗る、どこかミステリアスな雰囲気の男性。名前は、蓮(れん)さん。予約内容は、もちろん結婚式。しかし、その予約内容に、私の心臓はバクバクと音を立て始めた。

「新婦は、葵さん本人です」

蓮さんは、淡々と、しかし力強くそう告げた。

何が何だかわからない。私? 結婚?  冗談じゃない。私は、仕事に追われ、恋愛どころか、自分の爪を切る時間すら惜しんでいるのだ。

蓮さんは、謎めいた微笑みを浮かべながら、ゆっくりと説明を始めた。それは、まるで、私が忘れていた記憶を呼び覚ますかのような、不思議な話だった。

幼い頃、私は両親を事故で亡くし、親戚の家に引き取られていた。その親戚の家には、蓮さんという少年がいた。彼は私より少し年上で、いつも優しい笑顔で私を気遣ってくれた。一緒に遊んだこと、秘密の場所を作ったこと、彼の温かい手を感じたこと…断片的な記憶が、蓮さんの言葉と共に蘇ってきた。

しかし、その記憶は、まるで霧の中にいるように、はっきりとしない。思い出そうとすればするほど、頭が痛くなる。

「あの時、約束したよね。いつか、君と結婚するって」

蓮さんは、優しく、しかし切ない表情で言った。

幼い頃の約束?  そんなこと、全く覚えていない。しかし、彼の言葉には、嘘がないように感じた。彼の瞳には、私への深い愛情が、確かに宿っていた。

蓮さんは、さらに続けた。彼は、私をずっと探し続けていたのだという。あの事故の後、私は行方不明になり、彼は私を探し続ける中で、ブライダルプランナーをしている私を見つけたのだという。

彼の言葉は、私の心に深く突き刺さった。私は、彼のことを、忘れていたのだろうか?それとも、本当は、忘れていなかったのだろうか?

その夜、私は眠れなかった。幼い頃の記憶、蓮さんの言葉、そして、私の胸に秘めていた、ある感情。

実は、私は、高校時代、クラスメイトの翔(かける)という男の子に片思いをしていた。彼は、優しく、絵を描くのが得意で、いつも私を笑顔にしてくれた。しかし、私は、彼に自分の気持ちを伝えることが出来ずに卒業してしまった。

蓮さんの言葉と、翔への片思い。その二つの感情が、私の心の中で絡み合い、複雑な感情を引き起こした。

もしかしたら、蓮さんと翔は、同一人物なのかもしれない。それとも、全く別人なのか。

翌日、私は蓮さんに会うことにした。彼の言葉の真意を確かめるため、そして、私の心の迷いを解くため。

式場には、たくさんのウェディングドレスが飾られていた。まるで、私の心を映す鏡のように。

蓮さんは、私を待っていた。彼は、少し緊張した表情をしていた。

「葵さん…あの、実は…」

蓮さんは、言葉を詰まらせながら、一つのアルバムを取り出した。それは、私と彼の幼い頃のアルバムだった。写真には、笑顔の私と、優しい笑顔の蓮さんが写っていた。

そして、最後のページには、一通の手紙が挟まっていた。それは、翔から私に宛てた手紙だった。

「葵へ 君と結婚したい。いつか、必ず君と結婚する。」

手紙には、そう書かれていた。そして、その手紙には、蓮さんの名前が添えられていた。

蓮さんは、翔だったのだ。彼は、あの事故の後、記憶を失い、私を探し続けていた。そして、ブライダルプランナーとして働く私を見つけたのだ。

彼の言葉、彼の瞳、そして、この手紙。全てが、私の心に深く響いた。

私は、彼の腕に抱きしめられた。彼の温かい胸の中で、私は初めて、自分の気持ちに気づくことができた。

私は、仕事に追われ、自分の気持ちに蓋をして生きてきた。しかし、蓮さん、いや翔との再会によって、私は本当の自分を取り戻すことができた。

あの日の約束、そして、翔への片思い。全ては、運命の導きだったのかもしれない。

私たちの結婚式は、たくさんの愛情に包まれた、忘れられない一日になった。


そして、私は、ウェディングドレスを着て、初めて、本当に幸せを感じた。キラキラ輝く世界に、私は、やっとたどり着いたのだ。
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