異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
346 / 753

英雄魔術師の、割と穏やかな災難

しおりを挟む
夕焼けが、砂漠の砂を赤く染めていた。ジンは、黒猫のベルを肩に乗せ、ため息をついた。

「ベルさん、またこんなことになってるよ…」

ベルは、ジンのおでこを鼻で軽く突いた。「仕方ないじゃない、ジン。あんたが英雄魔術師だからさ」

数日前、彼らは反乱軍に追われる王子を助けた。王子は、実は男装したお姫様、リリアだった。当然、リリアの身分を巡って、王族と反乱軍、そして周辺諸国が巻き込まれる大騒動へと発展した。ジンは、その渦中にいる。

「あの時、王子様を助ける必要はなかったのに…」ジンは呟いた。彼は、のんびりとした生活を望んでいた。異世界に召喚されて、チートな魔法使いになって、世界を救う英雄になった。でも、彼は英雄になりたかったわけじゃない。ただ、ベルと静かに暮らしたかっただけだ。

ベルは、ジンの言葉を無視して、砂漠の夕日を眺めていた。「でも、助けたのはあんたでしょ?後悔してるなら、今更遅いよ」

ジンは、ベルの言葉に反論する気力もなかった。彼は、魔法と古代文明の技術を使って、リリアを守り、反乱軍を鎮圧し、王族の陰謀を暴き……と、てんやわんやの日々を送っていた。

その日も、巨大な砂嵐が襲ってきた。反乱軍の追撃だ。ジンは、魔法で砂嵐を操り、リリアと護衛の騎士たちを守った。しかし、敵の数は多く、魔法の消費も激しい。

「ベルさん、そろそろ限界だよ…」

「へいへい、わかってるって。あの古代遺跡の機械、そろそろ使ってみる?」ベルは、鋭い爪を研いだ。

ジンは、砂嵐の中、古代遺跡の入り口を発見した。それは、かつて栄えた高度な文明の遺産で、巨大な機械が眠っていた。ジンは、その機械を起動させた。

機械は、巨大なエネルギーを放ち、砂嵐を吹き飛ばした。同時に、強力な防御バリアを展開し、敵の攻撃を無効化した。ジンは、古代文明の技術の凄さを改めて実感した。

「すごい…ベルさん、これは…」

「ふふ、さすがは古代文明。ちょっと調整すれば、もっと凄いことできるかもね」ベルは、得意げに言った。

反乱軍は、機械の圧倒的な力に押され、撤退していった。リリアは、ジンに感謝の言葉を述べた。

「あなたのおかげで、助かりました。本当にありがとうございます」

ジンは、軽く頭を下げた。「どういたしまして。でも、これからは静かに暮らしたいですね」

リリアは、ジンに少しだけ不安そうな表情を見せた。「でも、あなたのような力を持つ人が、静かに暮らせると思いますか?」

ジンの言葉に、ベルが付け加えた。「まあ、そうね。あんたが英雄魔術師だってことは、もう世界中に知れ渡ってるしね」

ジンは、ベルの言葉にため息をついた。彼は、再び静かな生活を夢見た。しかし、現実には、彼は英雄魔術師であり、世界は彼を必要としていた。

数日後、ジンとベルは、王都へと向かっていた。リリアの即位式に招かれたのだ。王都では、大勢の人々がジンを歓迎した。花束が贈られ、祝福の声が上がった。ジンは、その熱狂に圧倒されながらも、ベルと静かに暮らしたいというささやかな願いを胸に秘めていた。

即位式の後、ジンは、リリアと二人きりになった。「殿下、本当にありがとうございました。これで、私の仕事は終わったはずです」

リリアは、ジンに微笑みかけた。「そうかもしれませんね。でも、もし何かあったら、いつでも私を頼ってください」

ジンは、リリアの言葉に、少しだけ希望を感じた。もしかしたら、英雄魔術師としての生活も、悪くないのかもしれない。少なくとも、ベルと、そして、リリアのような大切な仲間と一緒なら。

夕焼けが、王都の空を染めていた。ジンは、ベルを肩に乗せ、静かに夜空を見上げた。彼の英雄魔術師としての生活は、まだまだ続きそうだ。しかし、それは、彼にとって、決して悪いものばかりではない、とジンは確信していた。  静かな生活への願いは、まだ叶っていないけれど、少しずつ、少しずつ、彼の望む未来に近づいている気がしたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...