異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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極限射程

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廃墟と化した屋敷の窓から、埃っぽい陽射しが差し込んでいた。十年前、父に追放されたアルベルトは、このボロボロの屋敷で、ただ一つの魔術、マジックアローと向き合ってきた。

マジックアロー。初級魔術の中でも最も簡単な部類に入る、直線上に魔法の矢を飛ばすだけのもの。他の魔術は全く覚えられなかったアルベルトにとって、唯一の、そして全てだった。

父は貴族だった。体面を重んじる男だった。魔法の才能がない息子は、家にとって恥だった。だからアルベルトは、この廃墟に追いやられた。

十年の間、アルベルトは本を読み漁った。マジックアローに関するあらゆる文献を。最初はただ、時間をつぶすためだった。しかし、いつしかそれは、執念へと変わっていた。

彼はマジックアローの射程距離を伸ばすことに固執した。文献には「射程50メートル」と記されていた。しかし、アルベルトはそれを超えようとした。限界を超えようとした。

魔法の矢は、彼の執念を反映するように、少しずつ、だが確実に飛距離を伸ばしていった。

ある日、屋敷の門の前に、泣きじゃくる少女が立っていた。ローラ。彼女は魔法学校を受験するはずだったのに、嵐で道に迷い、受験に間に合わなくなってしまったのだという。

「もう、駄目だ…試験に間に合わない…」ローラは絶望していた。

アルベルトは、少女の涙を見て、初めて自分の魔術が、誰かの役に立つかもしれないと思った。

「俺が、連れていこう」

「え?」

ローラは、驚きを隠せない様子だった。

「マジックアローで」

「射程50メートルの攻撃魔術で、どうやって…?」ローラは言葉を失った。

アルベルトは、自信満々の表情で答えた。「俺のマジックアローは、人より少しだけ強いんだ」

アルベルトは、彼の限界突破したマジックアローを放った。それは、ただの矢ではなかった。光の軌跡を描き、空を裂くように飛んでいった。

その速度は、想像をはるかに超えていた。普通のマジックアローなら、数秒かかる距離を、一瞬で駆け抜けた。

ローラは、驚愕の表情で、アルベルトの背中に飛び乗った。

魔法学校の門は、彼らの目前に現れた。アルベルトは、最後の力を振り絞って、マジックアローを地面に突き刺した。その衝撃で、地面に深い穴が開いた。

試験監督官は、遅れてきたローラと、その異様な光景に驚きを隠せない様子だった。しかし、アルベルトの異常なマジックアローの威力を目の当たりにし、試験を受けさせることにした。

ローラは、アルベルトのおかげで試験を受け、見事合格した。

その出来事がきっかけで、アルベルトの名は魔法界に知れ渡ることになった。彼の「人より少しだけ強い」マジックアローは、規格外のパワーとして、人々を驚かせた。

アルベルトは、追放された過去を乗り越え、新たな道を歩み始めた。彼は、決して華麗な魔法使いではない。しかし、彼の執念と、限界を超えたマジックアローは、どんな困難をも乗り越える力を持っていた。

その後、アルベルトは様々な依頼を受けるようになった。山賊の討伐、魔物の退治、さらには王宮の危機を救うことまで。彼は、常にマジックアローだけで、不可能を可能にしていった。

彼の魔術は、もはや「初級魔術」とは言えなかった。それは、アルベルト自身の魂と、十年の執念が凝縮された、究極のマジックアローだった。

ある日、アルベルトは父と再会した。かつて自分を追放した父は、アルベルトの力を目の当たりにし、深い後悔の念を抱いていた。

アルベルトは、父に何も言わなかった。彼の心には、もはや怒りも恨みも残っていなかった。彼は、ただ、自分の道を進んでいくだけだった。

彼のマジックアローは、これからも、誰かのために、世界の平和のために、飛び続けるだろう。そして、その射程距離は、まだ、どこまでも伸び続けていく。
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