異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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血染めの記憶と葡萄酒の香り

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薄暗い洞窟の中で、私は目を覚ました。頭がガンガンと痛む。どこだ?ここは?

記憶が断片的に蘇る。深い眠り…長い年月…血…そして、何かを奪われたような、空虚な感覚。

ゆっくりと身体を起こすと、石造りの冷たい床が肌に触れた。自分の手を見てみると、驚くほど白く、細長い指先には鋭い爪が生えている。鏡はないが、きっと顔も蒼白で、いかにも吸血鬼らしい姿をしているのだろうと想像できた。

私は吸血鬼だった。それも、どうやら相当に古い、始祖級の吸血鬼らしい。だが、記憶は曖昧で、自分が何者なのか、なぜこんな場所にいたのか、さっぱりわからない。

とりあえず、外に出よう。

洞窟を出て、外の世界を初めて見た。緑豊かな森が広がり、鳥のさえずりが聞こえてくる。太陽の光は、肌を焼くように熱かった。何百年、何千年ぶりに浴びる太陽の光は、最初は眩しくて目を細めたが、次第に心地よくなってきた。

お腹が空いた。というか、ものすごく空腹だ。本能的に、血を欲している。

森の中を歩き回ると、運良く(?)鹿を見つけた。新鮮な血の匂いに、本能が騒ぎ立てる。私は、抵抗する気力もなく、鹿に飛びかかった。

鋭い牙で首筋を噛み砕き、温かい血を貪る。ああ、なんて美味いんだ!何千年ぶりだろう、この感覚は。

血を吸い終えると、眠気に襲われた。地面に横たわって、ぐっすりと眠りについた。

目を覚ますと、夕焼け空が広がっていた。空腹は満たされていたが、今度は寂しさを感じた。何千年も孤独に生きてきたのだろうか。

それからというもの、私は森の中を彷徨い歩くようになった。出会う人々は、私を恐れたり、驚いたり、中には殺そうとしたりもした。吸血鬼というだけで、悪者扱いされるのは、少々腹立たしかった。

ある日、小さな村にたどり着いた。村人たちは、私を警戒していたが、一人の老婆が、恐る恐る私に声をかけてきた。

「あなたは…一体…?」

老婆は、私の奇妙な姿に驚きながらも、奇妙なほどに冷静だった。私は、自分のことを何も覚えていないと説明した。

老婆は、私に温かいスープとパンをくれた。それは、私が何千年ぶりに口にする、温かい食事だった。

老婆は、私のことを「闇の王子」と呼んだ。彼女は、古文書に書かれた伝説の吸血鬼のことを知っていたらしい。その伝説によると、私は、かつて世界を支配しようとした魔王だったが、何者かによって封印されていたという。

老婆の話は、私の記憶の断片と繋がった。確かに、私はかつて、凄まじい力を持っていた。だが、その力は、私を孤独にし、破壊へと導いた。

私は、自分の過去を悔やみ、そして、未来への希望を覚えた。私は、もう世界を支配するつもりはない。ただ、自由に生きていきたい。

それからというもの、私は様々な場所を旅した。山々を越え、海を渡り、様々な人々と出会い、様々な経験をした。時には、危険な冒険に身を投じることもあった。

私は、自分の力を制御する方法を学び、人間と共存する方法を探った。もちろん、血を吸うことはやめられないが、なるべく人を傷つけないように、気を付けていた。

ある日、私は美しい葡萄酒に出会った。その味は、まるで新鮮な血液のようでありながら、より繊細で、複雑で、奥深い味わいだった。私は、血を吸うことへの依存を、少しずつワインに置き換えていった。

何千年もの時を経て、私は、自分らしい生き方を見つけ出した。

私は、もう孤独ではない。過去は消せないが、未来は変えられる。私は、これからも、自由気ままに旅を続け、世界を自分の目で見ていきたい。そして、いつか、自分の記憶の全てを取り戻す日が来ることを願っている。


血染めの記憶は、葡萄酒の香りに包まれ、少しずつ薄れていく。私の旅は、まだ終わらない。
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