異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
395 / 753

悪女の無才無能ライフ

しおりを挟む
ラビアンジェ=ロブール。その名前を聞けば、誰もがため息をついた。

「また、あの公女が…。」

「まったく、無能で。」

「お飾り公女ってところね。」

そう、私は稀代の悪女と呼ばれた、前前世の私とは正反対の、無才無能な公女だった。前前世では、婚約者を奪われ、嫉妬に狂って悪魔を召喚しようとした悪女。兄である王太子に阻止され、悪魔共々滅ぼされたらしい。…らしいって、だって私は覚えてないんだもの。

転生したこの世界では、穏やかな日々を送りたいと願っていた。優雅なドレスを着て、美味しいものを食べて、可愛い小動物と戯れて。できれば、誰にも邪魔されずに。

しかし、現実は甘くなかった。

生まれながらの貴族である私は、当然のように社交界に放り出された。絵画も音楽もダンスも、どれもこれもさっぱりダメ。社交辞令すらまともにこなせない。貴族社会では致命的欠陥だ。

「お見事な下手さね、ラビアンジェ公女。」

社交界の女王、ジルベール公爵令嬢の皮肉が耳に突き刺さる。彼女の完璧な振る舞いは、私の無能さを際立たせるだけだ。

でも、私は平気だ。

だって、無才無能の方が何かとお得なんだもの。

まず、期待されない。だから、失敗しても誰も責めない。むしろ、「あの子らしいわ」と笑って許される。責任ある仕事は回ってこない。つまらない会議にも参加しなくていい。

それに、みんな私に何かを期待しないから、放っておいてくれる。

暇を持て余すことはあるけれど、それはそれで良い。

庭で猫と遊んだり、美味しいケーキを一人で食べたり、本を読んだり。自由に使える時間がたくさんあるのは、私にとっては大きな幸せだ。

もちろん、完璧なジルベール公爵令嬢のように、誰からも憧れられるような存在にはなれない。でも、私はそれで良いと思っている。

ある日、王宮の庭園で珍しい鳥を見つけた。鮮やかな羽根、愛らしい鳴き声。その鳥は、私のことを全く怖がらず、私の指にとまった。

「綺麗な鳥ね…。」

鳥を優しく撫でながら、私はふと思った。

前前世の私は、常に争い、嫉妬し、人を傷つけていた。幸せとは程遠い人生だった。

今の私は、完璧ではないけれど、穏やかな日々を送っている。それは、前前世の私にとっては想像もつかない幸せだ。

もちろん、時々、前前世の記憶がフラッシュバックして苦しくなることもある。だが、そんな時は、庭で猫と遊んだり、美味しい紅茶を飲んだりする。

そして、私は思う。

「ふふふ、事実は小説より奇なりね。」

前前世の私は、悪魔を呼び出そうとした悪女だった。しかし、今世の私は、ただ穏やかに暮らしたいと願う、ごく普通の(?)公女だ。

王宮での生活は、相変わらず退屈だ。

つまらない舞踏会、意味不明な社交、そして、私をからかう貴族たち。

しかし、私はそれをすべて「経験」として受け止めている。

だって、私は無才無能だから。

誰も私に期待しない。だから、失敗しても誰も怒らない。

むしろ、私の無能さゆえに、面白い出来事がたくさん起こる。

例えば、先日、王太子殿下の大事な書類を間違えてゴミ箱に捨ててしまった。

当然、王太子殿下は激怒した。しかし、私はただ「ごめんなさい」と謝るだけで、特に罰はなかった。

だって、私は無才無能だから。

誰も私のことを本気で責めようとはしないのだ。

ある日、王宮の図書館で古い書物を見つけた。

その書物には、不思議な魔法の呪文が書かれていた。

好奇心から、その呪文を唱えてみた。

すると、私の目の前に、ふわふわの白い生き物が現れた。

それは、まるで雲のような、もふもふとした生き物だった。

「これは…何?」

私は驚きながらも、その生き物を優しく抱きしめた。

生き物は、私の手をすりすりして、甘えた声で鳴いた。

それからというもの、そのもふもふの生き物は、私の大切な友達になった。

名前は「モコ」。

モコと過ごす時間は、私にとって最高の幸せだ。

無才無能な私でも、幸せになれる。

そう、私は確信している。


前前世の悪女の記憶は、時折、私を苦しめる。しかし、モコと過ごす穏やかな日々が、その苦しみを癒してくれる。

私は、この世界で、心から幸せを感じている。

「だって、無才無能の方が何かとお得でしょ?」

私は、今日も淑女の微笑みを浮かべながら、そう呟く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...