異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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辺境伯夫人の幸福な誤算

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リーゼは、冷たくなった父の手を握りしめていた。辺境伯領の屋敷は、襲撃者の血と、父と兄たちの遺体で埋め尽くされていた。  わずか数時間前まで、賑やかだった宴の跡は、地獄絵図と化していた。

その中で、一人、放心状態になっているアレクシスがいた。幼い頃から一緒に育ち、リーゼが密かに想いを寄せていた、アレクシス。今は、辺境伯の爵位を継いだ、辺境伯アレクシスである。しかし、彼の目は虚ろで、顔には深い傷跡があった。彼の精神は、この悲劇によって深く傷つけられていた。

アレクシスは、婚約者候補の女性たちを次々に追い払った。リーゼには、その理由が理解できた。アレクシスは、愛する者たちを目の前で失ったというトラウマを抱え、誰にも近づけなくなっていたのだ。

そして、リーゼに白羽の矢が立った。身分は低いが、アレクシスを幼い頃から知っているリーゼは、彼にとって唯一の心の拠り所だったのかもしれない。

結婚式は、簡素なものだった。リーゼは、アレクシスに愛されていないことを悟っていた。彼は、常に冷淡で、リーゼの言葉にもほとんど反応を示さなかった。リーゼは、彼の傍に寄り添うことしかできなかった。

アレクシスは、戦闘狂と化していた。日中は領地の防衛に明け暮れ、夜は酒に溺れ、そして、リーゼを避けていた。リーゼは、そんな彼を心配し、止めようとした。しかし、ある日、アレクシスは、リーゼに向かって剣を振るった。

リーゼは、アレクシスの剣に倒れた。そして、目を覚ますと、彼女は、襲撃事件の起こる数日前、あの悲惨な宴の直前へと戻っていた。

やり直しの理由は分からなかった。しかし、リーゼは、二度とあの悲劇を繰り返したくないと強く思った。

彼女は、記憶を頼りに、襲撃犯たちの潜伏場所を突き止めた。そして、彼らの計画を事前に警察に知らせ、全員を逮捕させた。

アレクシスと彼の家族は、無事だった。リーゼは安堵した。これで、あの悲惨な未来は回避できた。後は、アレクシスが幸せな結婚をするのを見届けて、自分は静かにフェードアウトすれば良い。そう彼女は考えていた。

しかし、運命の歯車は、リーゼの予想を超えて動き始めた。アレクシスは、リーゼに求婚してきたのだ。

「リーゼ、君と結婚したい。」

アレクシスは、普段とは全く違う、真剣な表情で言った。そして、リーゼへの、深い愛情を告白した。なんと、アレクシスは、子どもの頃からずっと、リーゼに想いを寄せていたというのだ。

リーゼは驚きを隠せない。彼女は、アレクシスが自分を愛していないと思っていた。しかし、それは、彼の精神的な苦痛によるものだったのだ。

二度目の人生。リーゼは、予想だにしない展開に戸惑いつつも、幸せな気持ちでいっぱいだった。アレクシスからの溺愛は、想像をはるかに超えるもので、リーゼは、幸せの絶頂にいた。

アレクシスは、リーゼを大切に、優しく包み込んだ。リーゼは、彼の温もりを感じ、初めて本当に幸せな気持ちになった。

二人は、幸せな結婚生活を送った。辺境伯領は、アレクシスの優れた統治の下、繁栄した。リーゼは、アレクシスの傍で、彼の支えとなり、共に人生を歩んでいった。

リーゼは、二度目の人生で、本当の幸福を掴んだ。それは、彼女が、過去を変えようとした結果、思いがけず手に入れた、予想外の幸せだった。  あの日の襲撃がなければ、彼女はアレクシスの本当の気持ちを知ることもなく、幸せな未来を迎えることもなかっただろう。

リーゼは、あの日の襲撃に感謝するような、奇妙な気持ちを抱きながら、アレクシスの腕の中で、穏やかな眠りについた。二度目の人生は、彼女にとって、最高の贈り物となったのだ。
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