異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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ソナス神聖帝国

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エルティア・グランデ。空はいつも夕焼け色で、地面は赤黒い砂で覆われていた。まるで巨大な焼き菓子みたいな惑星だ、とリリアは思っていた。彼女は17歳。この異様な惑星に、10年前に流れ着いた。

記憶は断片的だ。地球での生活、両親の顔、それすらも曖昧だった。ただ、一つだけ鮮明に覚えているのは、空から落ちてくる時に感じた、耳をつんざくような音。そして、その音の中に混じっていた、優しく、力強い歌声。

リリアは特別な力を持っていた。それは「声」を操る力。歌えば、砂漠に花を咲かせ、嵐を鎮め、石を動かすことができた。最初は怖かった。自分の力が理解できず、制御できずに周囲を混乱させたこともあった。

ある日、砂漠をさまよっていたリリアは、瀕死の老人に助けを求められた。老人は、エルティア・グランデの古代文明について、そして、この惑星を支配する「神の声」の伝説を語り始めた。

「神の声……それは、この星の全てを創り、壊す力を持つ。選ばれた者だけが、その力を操ることができるのだ」

老人の言葉は、リリアの中に眠っていた何かを呼び覚ました。彼女は自分の力を、単なる力ではなく、運命だと感じ始めた。この惑星を救う、運命だと。

リリアは、老人の教えと、自分の力を使って、小さな村を築き上げた。砂漠にオアシスを作り、人々を導き、秩序を創り出した。最初は、彼女の力に畏怖と恐怖を抱く者もいたが、リリアの優しさと思いやりは、人々の心を徐々に掴んでいった。

やがて、村は街となり、街は国となった。リリアは、自ら「ソナス」と名乗り、神として崇められるようになった。ソナス神聖帝国の誕生だ。

しかし、帝国の繁栄は永遠ではなかった。リリアの力は、人々を魅了する一方で、狂信を生み出した。彼女の言葉は、絶対的なものとなり、異論は許されなくなった。反対意見を持つものは、容赦なく処刑された。リリア自身も、その狂信に飲み込まれ始めていた。

「私の声は、神の声。私の言葉は、絶対の真理だ」

彼女は、自分自身を神として信じ込み、異論を許さなくなった。帝国は、神の声によって統治される、恐ろしい独裁国家へと変貌していった。

ある日、リリアは、かつて自分を助けてくれた老人が、密かに反乱を企てていることを知った。老人は、リリアの力を恐れて、彼女の暴走を止めようとしていたのだ。

リリアは、老人を捕らえ、処刑しようとした。しかし、その直前、老人の言葉が、彼女の心に突き刺さった。

「リリア……あなたは、神になるために生まれたのではない。人々を救うために、生まれたのだ」

老人の言葉は、彼女の心の奥底に眠っていた、優しい記憶を呼び覚ました。地球での生活、両親の顔、そして、空から落ちてくる時に感じた、優しい歌声。

彼女は、自分の力を、人々を救うために使うべきだったのだ。神として君臨するのではなく、人々の導き手として生きていくべきだったのだ。

リリアは、処刑を中止した。そして、帝国の支配体制を改革し、人々の意見を尊重する、新しい国を築き始めた。

それは、神の声による支配から、人々の声による統治への転換だった。厳しい道のりだったが、リリアは、かつての過ちを償うために、人々のために戦い続けた。

エルティア・グランデの夕焼け空の下で、リリアは、新たな歌を歌い始めた。それは、神の声ではなく、人々の希望を込めた歌だった。  それは、彼女が、真の「神」になった瞬間だった。そして、エルティア・グランデに、平和な時代が訪れた。しかし、その平和は、いつまでも続くのだろうか? リリアの心の奥底には、まだ、何かが眠っていた。それは、彼女の過去、そして、未来への不安だった。
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