異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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王太子殿下の偽りの婚約者

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きらびやかな王宮の応接室。窓から差し込む陽光が、金色の装飾を輝かせ、埃一つない床には、私の足音だけが静かに響いていた。向かいには、エドワード王太子殿下。端正な顔立ちに、少し困ったような表情を浮かべている。

「……あの、殿下。紅茶が冷めてしまいますよ」

私は、震える手でカップを握り締めた。今日の私は、殿下に新しい薬草の効能を説明するために呼ばれたはずだった。なのに、この状況。

「いや、それがな、リリア…」

殿下は、ため息をついた。その視線は、私ではなく、応接室のドアの方に向けられていた。

ガチャリ。

重い扉が開き、鮮やかなピンクのドレスを着た令嬢が入ってきた。金色の髪は巻き髪で、大きなルビーのイヤリングが耳元で揺れる。まさに、絵に描いたようなお嬢様。

「エドワード様!お待たせいたしました!」

彼女は、殿下に駆け寄り、まるで恋人同士のような親密さで抱きついた。

「……え?」

私は、言葉を失った。殿下は、少し驚いた表情で、彼女から離れようとしたが、彼女はそれを許さなかった。

「もう、こんなにも待たせてしまって、ごめんなさいね!でも、あなたに会いたくて、どうしても我慢できなくて!」

彼女は、殿下に甘えるように言った。その言葉は、まるで、本当に恋人同士のような、親密なものであった。

「あの…失礼ですが、一体…」

私は、恐る恐る口を開いた。この状況が理解できない。一体、この女性は誰なのか?そして、殿下は、一体どういうつもりなのか?

「リリア、これは…私の婚約者、セシリアだ」

殿下は、苦しげな表情でそう言った。婚約者?まさか。私は、殿下と数回会ったことがあるだけで、全く個人的な関係などない。ましてや、婚約など、とんでもない話だ。

「婚…約者…?」

私の声は、震えていた。頭の中は、混乱の渦に巻き込まれていた。

セシリアは、私の方をちらりと見て、鼻を高くした。

「あら、あなた…誰?」

彼女の視線は、まるでゴミを見るかのような、軽蔑に満ちていた。

「私は、リリアです。殿下の…薬草の研究を…」

私は、自分の立場を説明しようとしたが、セシリアはそれを遮った。

「薬草の研究?ふーん。エドワード様のお相手をする資格なんて、あなたにはないわよ。」

彼女は、私を完全に無視し、殿下にすり寄った。

「エドワード様、この子は誰?あなた、私以外に、こんな子に話しかけてたの?!」

セシリアは、まるで嫉妬しているかのように、殿下を責めた。

殿下は、困ったように目を伏せた。

「セシリア…少し落ち着いてくれ…」

「落ち着く?あなたが、こんな子と密会していたのに?!許しません!」

セシリアは、ヒステリックになり始めた。

私は、この状況から逃げるべきだと感じた。しかし、私の足は、まるで鉛のように重かった。

一体、何が起きているのか。なぜ、私はこんな状況に巻き込まれたのか。

数日前、私はいつものように薬草の研究をしていた。すると、突然、激しい光に包まれ、意識を失った。そして、気がつくと、この異世界にいた。

転生したのかもしれない。そう思った。

しかし、なぜ、この王宮に、そして、この状況に?

「リリア、実は…少し事情があって…」

殿下は、やっと口を開いた。しかし、その言葉は、私の混乱をさらに深めるだけだった。

「セシリアは、私の婚約者…と、言われているんです。しかし、実際は、彼女は偽物の婚約者なのです。王族の陰謀に巻き込まれて…本当は、私と婚約しているのは、あなたなのです。」

殿下の言葉に、私は言葉を失った。偽物の婚約者?そして、私が本当の婚約者?

「…どういうことですか?」

「詳しい説明は、また後でします。今は、この場を離れましょう。セシリアを落ち着かせなければ…」

殿下は、私の手を引き、応接室を後にした。

廊下を歩く間も、私の頭は、様々な疑問でいっぱいだった。

なぜ、私はこの異世界に転生したのか?なぜ、王太子の婚約者になったのか?そして、セシリアの目的は何なのか?

全てが謎に包まれていた。しかし、一つだけ確かなことは、これから、私は、王太子殿下と共に、この謎を解き明かしていく必要があるということだった。そして、その先に、もしかしたら、予想もしていなかった、本当の恋が待っているのかもしれない。
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