異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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聖女様、ご期待に沿えず。

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ポーラは、自分が精霊と契約していることを、別に自慢しているわけじゃなかった。だって、別に珍しいことじゃないんだもの。この国では、貴族の娘が精霊と契約して、その力を借りて生きていくなんて、ごく普通のことだった。

ポーラの場合はちょっと特殊で、彼女は精霊を「擬人化」させたのだ。ふわふわした光の粒だった精霊を、自分の手で、まるで人間のように形作った。これは、この国で今まで誰も成し遂げたことのない偉業で、ポーラは「精霊の顕現者」として、大評判だった。

だけど、ポーラは内心、うんざりしていた。精霊、その名はルシエル。ルシエルは、確かに強かった。魔法の力も、予知能力も、ルシエルのおかげでポーラはいつも一歩先を読めた。でも、ルシエルは、ちょっと…いや、かなりめんどくさかった。

ルシエルは、ポーラにべったりだった。まるで、飼い犬のように。ポーラがどこに行こうと、何しようと、ルシエルは常にポーラのそばにいて、小さな声でポーラを褒めたり、時には叱ったりした。

「ポーラ様、今日は美しいですね!」

「ポーラ様、あのケーキ、ちょっと甘すぎますよ!」

うるさい!と、何度心の中で叫んだことか。

そして、ついにその日が来た。

「ポーラ様、聖女様になりたいのです。」

ルシエルは、そう言った。

ポーラは、少し驚いた。聖女?ルシエルが?

聖女は、この国で最も崇められる存在だ。神に選ばれた者だけがなれる、神聖な地位。ルシエルは、精霊でありながら、聖女になりたいなんて…一体どういうことだ?

「はいはい、わかったよ。縁切りしよう。」

ポーラは、あっさり同意した。前世の記憶があるポーラには、ルシエルの行動が予測できたのだ。

前世で、日本のアニメや漫画を山ほど見てきたポーラは、この展開を「主鞍替え」と呼んでいた。精霊という存在は、ある意味、ポーラにとって「主」のようなものだった。そして、ルシエルは、より偉大な「主」、つまり聖女という存在に鞍替えしようとしているのだ。

「でも、ポーラ様…」ルシエルは、ポーラの言葉に驚き、悲しそうな声を上げた。

「え?何か問題あるの?」

「聖女になるには、精霊との契約を解く必要があるのです。ポーラ様と離れるのは…寂しいです…」

ルシエルは、ポーラの腕に抱きつき、泣き出した。

ポーラは、少しだけ、罪悪感を感じた。でも、すぐに消えた。だって、ルシエルは、本当は聖女になることが目的だったのだ。ポーラは、単なる踏み台に過ぎなかったのだ。

「大丈夫だよ。別に寂しくないし。むしろ、少し楽になるかも。」

ポーラは、そう言ってルシエルを優しく撫でた。

縁切りは、簡単に済んだ。ルシエルは、ポーラと別れると、すぐに聖堂へ向かった。

ポーラは、一人になったことで、少し寂しいような、少し自由になったような、複雑な気持ちだった。

数日後、ポーラは、聖堂を訪れた。ルシエルに、最後の挨拶をするためだ。

聖堂では、盛大な式典が行われていた。ルシエルは、美しい聖女の衣装を身につけ、神々しい輝きを放っていた。

「ポーラ様…」ルシエルは、ポーラを見つけると、少しだけ戸惑った表情を見せた。

「おめでとう、ルシエル。聖女様。」

ポーラは、笑顔で祝福した。

ルシエルは、ポーラに感謝の言葉を述べた。そして、ポーラに、小さな、輝く石を贈った。

「これは…?」

「ポーラ様のおかげで、私は聖女になることができました。感謝の気持ちです。」

ポーラは、その石を手に取った。それは、ルシエルが擬人化された時に、最初に作った、小さな光の粒だった。

「ありがとう。またね。」

ポーラは、石を胸にしまい、聖堂を後にした。

二千年の擬人化文化を持つ日本人の魂を持つポーラは、ルシエルの行動を完全に理解していた。そして、この「ざまぁ?」という気持ちも、完全に理解していた。

ポーラは、ルシエルが聖女として幸せになることを願いつつ、次の冒険へと向かった。だって、ポーラには、まだまだやりたいことがたくさんあったのだ。精霊との契約は終わったけれど、ポーラの物語はまだ終わらない。新たな出会いと、新たな冒険が、ポーラを待っていた。
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