異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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戦場拾遺

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カナタは、埃っぽい戦場の地面を這いずり回っていた。十歳。痩せこけた体には、いつもより少しだけ重いリュックサックが負担だった。リュックの中には、錆び付いたボタンや、へこんだ銀貨、そして、カナタの宝物――魔術滓(まじゅつおり)がいくつか入っていた。

魔術滓とは、魔術が使われた後に残る、小さな石のようなものだ。魔力のかけら、といえば聞こえはいいが、実際には使い道のない、ただのゴミ。数日もすれば、ポッと消えてしまう。それでも、カナタは魔術滓を拾うのが好きだった。戦場には、血と泥と死臭しかない。唯一、美しく、儚く輝くものだったから。

カナタは傭兵団の下っ端、いや、下っ端のさらに下だ。正式な傭兵じゃない。戦場を漁って生き延びる、戦場漁りという名の、もっと汚い仕事をしている。大人たちは、カナタのような子供を「ゴミ」と呼ぶ。ゴミ拾いをしているからだ。

今日は収穫が少なかった。リュックは半分も埋まっていない。空腹が、胃を締め付ける。このままでは、夜を越せないかもしれない。カナタは、ため息をついた。

そんな時、カナタは今まで見たことのない魔術滓を見つけた。他のものより、少しだけ大きくて、光が強く、不思議な模様が刻まれていた。拾い上げると、掌に温かさを感じた。まるで、生きているみたいだった。

その日から、カナタは魔術滓を集めることに熱中するようになった。普通の魔術滓と、少し違うもの。特別な魔術滓を探し求めるようになったのだ。

最初は、違いを見つけるのが難しかった。しかし、カナタは諦めなかった。一つ一つ、魔術滓を丁寧に観察し、触れ、比較した。少しずつ、違いが分かるようになっていった。形、色、光り方、温度…微妙な違いを見つけることで、カナタは、自分の感覚を研ぎ澄ませていった。

何百、何千という魔術滓を拾い集めた。その中には、ほとんどが普通の魔術滓だったが、中には、カナタの感覚をくすぐる、特別な魔術滓もあった。それらは、普通の魔術滓とは明らかに違っていた。より強く輝き、不思議なエネルギーを感じさせた。

ある日、カナタは、今まで見たことのないほど大きな、そして美しく輝く魔術滓を発見した。それは、まるで宝石のように輝き、手に取った瞬間、カナタの体中を、不思議なエネルギーが駆け巡った。

その魔術滓を調べると、カナタは驚愕の事実を知ることになる。それは、ただの魔術滓ではなかった。それは、失われた魔術の、欠片だったのだ。

魔術の欠片から、カナタは魔術の痕跡、魔術の仕組みを少しずつ理解していく。最初は、何も分からなかった。しかし、一つずつ、魔術滓を分析し、比較していくうちに、魔術の原理が、ぼんやりと見えてきた。

カナタは、拾い集めた魔術滓を使って、小さな実験を始めた。最初は失敗ばかりだった。しかし、諦めなかった。魔術滓の性質を調べ、魔力の流れを分析し、試行錯誤を繰り返した。

そして、ついに、カナタは、自分だけの魔術を操れるようになった。それは、戦場で見つけた、無数の魔術滓から生まれた、彼だけの、特別な魔術だった。

カナタは、もう戦場漁りをしなくても良くなった。彼は、自分の魔術の力で、傭兵として生きていくことを決めた。

かつて、ゴミ拾いと呼ばれた少年は、今では、戦場で最も強力な魔術師の一人として、名を馳せていた。彼は、戦場で拾い集めた、無数の魔術滓、そして、決して諦めない強い意志によって、自分の道を切り開いたのだ。

カナタは、時々、戦場を歩いている。そして、美しい魔術滓を探し求めている。それは、もう、生きるためではない。ただ、美しいものを見つけるため、そして、自分の原点、自分の力、自分の道を思い出すためだ。かつて、ゴミだと言われたものが、彼の命を救い、そして、未来を築いたのだから。
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