異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
507 / 753

ヴァルデンの終焉時計

しおりを挟む
ゼノは、錆びついた懐中時計を掌で転がした。埃まみれの工房の窓から、ヴァルデンの首都は夕焼けに染まっていた。かつて機巧魔法で繁栄した王国は、今や廃墟と化した。ゼノは、そんなヴァルデンで、過去を捨て、静かに暮らしていた。機械仕掛けの鳥や、ゼンマイ仕掛けの人形を修理するのが彼の仕事。派手さはないが、彼にとっては大切な生計手段だった。

ある日、一人の男が工房を訪れた。男は、見慣れない金属製の義眼をつけ、古びた外套を羽織っていた。彼はゼノに、王家の紋章が刻まれた懐中時計を見せ、「これを修理してほしい」と頼んだ。その時計は、ゼノがこれまで見たことのない精巧さで、内部には複雑な歯車が組み込まれていた。

修理を終え、時計の針が動き出した時、工房に異変が起きた。壁に飾られた機械仕掛けの鳥が、けたたましく鳴き始めたのだ。そして、時計から、かすかな声が聞こえてきた。「ヴァルデン…救…出…」

男は、ゼノに自分の身分を明かした。彼は、かつてヴァルデンの王族だったという。帝国の侵攻により、王家は滅ぼされ、彼は生き残りの一人だった。懐中時計は、王家の秘密と、ヴァルデンの復興を願う最後の希望だった。

帝国は、ヴァルデンの機巧魔法の技術を奪おうと、残された遺物を探し回っていた。ゼノは、男の言葉に驚きながらも、懐中時計が示す場所へと向かうことを決意した。それは、ヴァルデンの地下深くに眠る、王家の秘密基地だった。

地下基地は、想像をはるかに超える規模だった。巨大な機械仕掛けの心臓が脈打ち、無数の歯車が複雑に絡み合っていた。そこには、かつてヴァルデンが誇った機巧魔法の技術が、眠っていた。しかし、同時に、帝国の兵士たちが待ち構えていた。

激しい戦闘が始まった。ゼノは、修理した機械仕掛けの鳥や人形を武器として使い、帝国兵と戦った。男は、王族としての気品を失わず、冷静に状況を判断し、ゼノをサポートした。しかし、帝国兵は数が多い。ゼノと男は、劣勢に立たされた。

そのとき、懐中時計が再び光り輝いた。時計から、強力な魔法が放たれ、帝国兵たちは吹き飛ばされた。それは、ヴァルデンの王家が代々受け継いできた禁断の魔法だった。

しかし、魔法の反動は大きかった。男は、力を使い果たし、息絶えた。ゼノは、男の死を悼みながらも、彼の遺志を継ぐことを誓った。彼は、懐中時計を胸に、ヴァルデンの再興、そして帝国への復讐を誓った。

ゼノは、地下基地に残された機巧魔法の技術を使い、新たな兵器を作り上げた。それは、男がかつて使用した、強力な魔法を制御できる、巨大な機械仕掛けの巨人だった。ゼノは、この巨人を使って、帝国軍に反撃を開始した。

戦いは長く、激しかった。ゼノは幾度となく死線をさまよったが、ヴァルデンの人々の記憶、そして男の遺志を胸に、戦い続けた。彼の戦いは、錆びついた世界の片隅で、失われた歯車を再び動かす、壮絶な戦いだった。

最終決戦は、帝国の首都で行われた。ゼノは、機械仕掛けの巨人を使って、帝国軍を圧倒した。帝国皇帝は、ゼノの圧倒的な力に恐れおののき、降伏した。

ヴァルデンは、ゼノの手によって再興された。しかし、ゼノは、王位にはつかなかった。彼は、静かに、そして誇りを持って、ヴァルデンの機巧技師として生き続けることを選んだ。かつての栄光を取り戻したヴァルデンは、ゼノの新たな時代を迎えた。彼の物語は、忘れられた王国の記憶と共に、未来へと受け継がれていく。  ゼノは、夕焼けに染まるヴァルデンの空を見上げ、静かに微笑んだ。彼の胸には、男から託された懐中時計が、今も時を刻んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...