異世界ファンタジーまとめ【短編集】

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夢喰い千早と鳳凰の帝

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夕焼けが、朱色のベールを宮殿にかけた。その中で、千早は小さく息を呑んだ。彼女は、他人の夢を見せることができる。不思議な力、いわば「夢喰い」の力だ。

今日、彼女を待っていたのは、後宮の女御たちだった。皆、ある日突然、夢を見ることができなくなってしまったのだという。帝からの命令だ。彼女に、その失われた夢を見させろ、と。

千早は緊張した。これまで、村の子供たちや旅の商人、時には、病気で苦しむ人たちの夢を覗いてきた。しかし、後宮の女御たちは、違う。華やかな衣装、精巧な化粧、そして、見えない壁のような高貴な雰囲気。彼女たちは、千早とは全く違う世界の人たちだった。

一人目の女御は、静かに座っていた。美しい顔には、わずかな悲しみが漂っていた。千早は、そっと女御の手を取った。そして、彼女の心に触れた。

最初は、何も感じなかった。しかし、ゆっくりと、かすかな映像が千早の脳裏に浮かび上がった。それは、故郷の田園風景。幼い頃、家族と過ごした温かい記憶。女御は、その夢を忘れていたわけではない。ただ、見ることを許されなくなっていただけだった。

千早は、その夢を鮮やかに彩り、女御に返した。女御の顔には、涙が流れた。それは、悲しみの涙ではなく、喜びの涙だった。

次々と、女御たちの夢を覗いていった。それぞれが、異なる夢を見ていた。華やかな舞踏会、忘れかけていた恋人の顔、故郷の海、そして、叶わなかった夢。千早は、それぞれの夢を丁寧に蘇らせ、女御たちに返した。

全ての女御たちの夢を蘇らせた時、千早は帝に呼ばれた。帝の部屋は、豪華絢爛で、まるで異世界のように輝いていた。しかし、帝の顔は、どこか疲れて見えた。

「よくやった、千早」

帝は、優しく言った。そして、驚くべき秘密を語り始めた。

「実は、私も夢を見ることができないのだ」

千早は、言葉を失った。帝が?この国の支配者が?夢を見ることができないなんて。

「ある出来事以来、夢を見ることができなくなった。それ以来、私は常に孤独を感じていた。君のおかげで、初めて、人々の心の温かさを感じることができた」

帝は、静かに続けた。

「実は、私は、ある女性を愛していた。しかし、身分違いの恋だった。彼女は、今ではこの世にはいない。私は、彼女との思い出を、夢の中でしか蘇らせることができなかった。しかし、夢を見ることができなくなってから、彼女の面影すら思い出せなくなってしまったのだ」

帝は、静かに涙を流した。千早は、その涙の意味を理解した。帝は、孤独だったのだ。愛する人を失った悲しみと、夢を見ることができない孤独に苦しんでいたのだ。

千早は、帝に近づき、そっと手を握った。そして、帝の心に触れた。

千早が見たのは、帝と一人の女性が寄り添い、笑い合う夢だった。それは、美しく、温かく、切ない夢だった。帝は、その夢を見て、静かに微笑んだ。

「ありがとう、千早。君の力のおかげで、私は、彼女との思い出を取り戻すことができた」

帝は、千早に感謝の言葉を述べた。そして、千早に、これまで以上に厚い信頼と、宮殿での地位を与えてくれた。

千早は、後宮の一室を与えられ、帝の側近として仕えることになった。夢を見ることができない人々に夢を届ける千早の物語は、こうして新たな章へと進んでいった。彼女の力は、人々の心を繋ぎ、孤独を癒す力となり、千早自身も、帝との温かい友情を通して、幸せな日々を送ることになった。ネトコン13、アイリスIF7大賞、そして、この物語は、千早と帝、そして後宮の人々にとって、忘れられない、幸せな記憶として、永遠に刻まれていった。
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