異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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偽りの英雄譚

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ギルバートは、勇者になるのが夢だった。いや、正確に言うと、勇者の証が欲しいだけだった。村長から「勇者になるための試練をクリアすれば、勇者の証を授ける」と言われた時、ギルバートの心は高鳴った。金ピカの盾と、勇ましい剣、そして何より、村一番の美女、エリザベスとの結婚を約束されていたからだ。

エリザベスは村一番の美女として有名だった。金色の髪に、エメラルドグリーンの瞳、そして、ふっくらとした頬。ギルバートは、彼女に一目惚れした時から、勇者の証を手に入れることを決意していた。

問題は、ギルバートが、勇気というものを全く持っていないことだった。むしろ、臆病で、虫さえ見たら悲鳴を上げるような男だった。だが、エリザベスのためなら、どんな危険も乗り越えることができる、と彼は自分に言い聞かせた。

村長から与えられた試練は、森の奥深くに住むという、巨大なゴブリン退治だった。ゴブリンは、村の周辺で家畜を襲ったり、畑を荒らしたりする厄介な存在だった。ギルバートは、その話を聞いただけで、全身の毛穴が開いてしまった。

「大丈夫だ、きっとうまくいく」

ギルバートは、震える声で自分に言い聞かせ、森へと向かった。森の中は、薄暗く、不気味な音が響いていた。ギルバートは、一歩一歩進む度に、心臓が胸から飛び出してきそうなほど緊張した。

数時間後、ギルバートは、ゴブリンの巣窟を発見した。しかし、その巣窟は、想像していたよりもはるかに大きく、恐ろしい雰囲気に満ちていた。巣窟の入り口には、無数のゴブリンの骨が散乱していた。ギルバートは、恐怖で体が硬直した。

このままでは、エリザベスと結婚できない。勇者の証が手に入らない。そう考えると、ギルバートは、ある作戦を思いついた。それは、ゴブリンを騙すことだった。

ギルバートは、持っていた古い布きれを、ゴブリンの王の旗に見立て、巣窟の入り口に立てた。そして、大きな声で叫んだ。

「私は、偉大なるゴブリンの王、グラーグの使者だ!この森は、グラーグ様の領地であることを、人間たちに伝えに来たのだ!」

ギルバートの声は、震えていたが、できるだけ威圧感を出そうと努力した。すると、巣窟の中から、ゴブリンたちがぞろぞろと出てきた。彼らは、ギルバートの言葉を理解したのか、それとも、ただ好奇心から出てきたのか、ギルバートには分からなかったが、ギルバートは、その隙に逃げることに成功した。

ギルバートは、森を駆け抜け、村に戻った。そして、村長に、ゴブリンを退治したと嘘をついた。村長は、ギルバートの話を信じた。なぜなら、ギルバートが、ゴブリンの巣窟から持ち帰った、ゴブリンの耳と、ゴブリンの王の旗(布きれ)を見たからだ。

ギルバートは、勇者の証である、金ピカの盾と、勇ましい剣を手に入れた。そして、エリザベスと結婚することができた。

しかし、ギルバートは、ずっと心に影を抱えていた。彼は、本当の勇者ではなかった。彼は、ただ、ゴブリンを騙しただけの詐欺師だったのだ。

ある夜、ギルバートは、エリザベスに真実を告白しようとした。しかし、その時、村にゴブリンの大群が襲ってきた。ギルバートは、勇者の証を手に、ゴブリンと戦わなければならなくなった。

彼は、これまでの人生で一度も経験したことのない恐怖と戦った。しかし、不思議なことに、彼は勇敢に戦った。もしかしたら、エリザベスを守るため、そして、自分の嘘を償うためだったのかもしれない。

激しい戦いの末、ギルバートは、多くのゴブリンを倒した。そして、彼は、本当の勇者になった。彼は、勇者の証を手に入れただけでなく、本当の勇気を手に入れたのだ。

その夜、エリザベスは、ギルバートの告白を聞いて、涙を流した。しかし、それは、悲しみの涙ではなかった。それは、ギルバートの勇気と誠実さに感動した涙だった。

ギルバートは、エリザベスと幸せに暮らした。彼は、勇者の証を誇り高く持ち、村の人々を守るために、これからも戦い続けることを誓った。そして、彼は、誰にも言わないが、心の中でいつもゴブリンに謝っていた。あの時、嘘をつかなければよかったのに、と。
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